トリップ編
(占星術士の全国行脚)
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どんぶらこっこ。どんぶらこ。海を渡ってえんやこら。
先の港町で宿を取って一泊して。翌朝になりゃ乗せてくれる船を探して駆けずり回り。どうにか見つける事が出来おった。まぁざっとこんなもんよ。なんてね。ちょいと金子を手に握らしただけ。痛い出費。しかしそれで渡れるなら構いやせん。海を渡ったその先。四国にゃ別にお目当ての物はありはしないが。それでも立ち寄りたいと思わせるもんがあったもので。期限の決められた旅でもなし。少しばかり楽しんだり寄り道したりしても良かろう。

一日ばかり船に揺られておったからか腰が痛い。腰に手をあてて体を反らしてみりゃあ。何とも言えぬ声が出ちまった。普段は座り仕事なんだがな。やはり慣れぬ海上が負担を掛けさせたらしい。とんとん。腰を拳で叩けば気持ち楽になりよる。
この時代に来て大分生活改善されて、健康的になったと思ったんだが。どうやら思い上がっていたようだ。

『戻った時が怖いったらないね。』

自堕落な生活になってしまう気がして。注意する人間が傍に居らんから自分で気を付けんとな。

真上を通り過ぎる大きな鳥の影。津々四のもんだ。遂には海まで渡っちまって。連れてきちまうてめぇも大概だが、着いてきおる津々四も大概。同じ国内っちゃそうだけど。流石に外つ国は…。どうだかな、連れてっちまうかも。拾った責任は取りますよ。最期を迎えるその時まで。そりゃもちろん三ツ蜂だってそうさ。こんな主に長いこと付き合ってくれとるんだから感謝してもしきれねぇよ。
ぽん。着物の合わせ目に差し込んだ銀の細筒を叩くように撫でる。彼女にしか聞こえんくらいの小さな唸り声が応えた。

さてさて。こっからどちらへ向かおうか。右か左かの違いくらいだけども。立っとる所は丁度二又の別れ道。此方に行きゃあ海神へ。彼方へ行きゃあ海賊へ。真っ当に考えんなら海神だわな。好き好んで海賊など会いたがらんて。先日も山賊に痛い目見せられたばかり。危険なことは避けねばね。こちとら特殊な性癖ってんでも無し。
占えばいいって? 一理ある。されど残念ながらどちらにしたって遜色無しと出たもんだ。ああでも彼方からのほうが良いかな。随分参っとるみたいだし。僭越ながら助太刀いたそうか。此方のほうは問題無かろ。天恵を受けし御方だ。手前などがでしゃばらずとも。

さぁそうと決まりゃ話は早い。迷うこと無くさくさくと足を進めねばね。大きい町に着いたならば。まぁた路銀を稼がんと。占いなんつーもんに興味を持ってくれる者がどれ程居るか分からんが。船賃ぐらいは取り戻さにゃあ。

『美味い酒の一つでも、あんと嬉しいね。』

最早楽しみと言やそれだわな。




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