袖に金木犀(仮)の時系列無視話(仮)
2015/04/11 10:32

現パロー書いたんだからこっちも出来ねぇかとコラさん逆トリを書いてみた。冒頭部分は長くなるし纏まんねーしで止めました!なんか一緒に生活し始めてちょっと経った頃を唐突に書くよ!





ガチャン!パリーン!と何かが割れる音がする。トイレを済ませ、手を洗っていればの出来事である。
先日縁あって同居人となった異界の男。女の一人暮らしにと何だかんだと話し合いはあったが今では大分馴染んできた。幸い家は広く成人男性1人転がりこもうとも心配はないし、養えるだけの収入も蓄えもある。見境なく女に手出しするタイプでもないと彼女は視っていた。故に最終的には迎え入れたのだ。これがとんでもない悪人だったなら話は変わっていた。

しかし視て、知っていたから覚悟はしていたが同居人となったコラソンことロシナンテは相当なドジっ子属性らしく。ただ歩いてるだけなのに転ぶ、煙草を吸えば100%自身に引火等々数えきれないドジをここ数日で見事に披露してくれた。この音もきっと何か割ったのだろう。二次災害を防ぐべく足早に音のした方向… 台所へと向かった。手遅れでなければいいが。

『ロシーくん』
「!!!!」
『あぁ、ぐい呑み割ったんか』

食器棚の前で踞る人影に話し掛ければ面白いぐらいに驚き狼狽え。こちらへ振り向くコラソンの脇から床に散らばる欠片を見た。それは日頃自分が酒を飲む際好んで使用していた酒器で。見る影もなく粉々になっていた。

素直に残念だなと思う。白い縁取りに青い塗りが富士のようで気に入っていたのに。それでもそれだけだ。意気消沈するほどのことではない。まずは自分よりも落ち込んでしまっているこの大男を慰めよう。彼はその体躯に似合わず繊細だから。まったく、自分より十は年上なくせになぁ。

「すっ、すまない六月一日!洗った食器を仕舞おうとしただけなんだ…!!」
『分かっとるよ、そんな慌てんでも大丈夫。わざと割るような野郎とは思ってねーよ』
「…でも、これはお前が気に入ってたやつだろう…。」
『まぁね。けど物はいつか壊れっし。気にしとらんさ』

そう。物はいつか壊れる。それがたまたま今回コラソンの手によってなだけでいずれ来る結末は同じだ。残念だという気持ちは本物だが大体の物事に対して執着しない性質。こういう時そうで良かったなと考える。
その言葉にコラソンは殊更に申し訳なさそうな顔をする。こうして彼が物を壊すのは何もこれが初めてではない。花瓶に茶碗に掛け軸に… こないだは庭の木もダメにしかけたか。その度に彼女は怒ることもせずただただしょうがないと笑って済ませる。いっそ怒鳴り付けてくれたら楽なのにとコラソンは思うが言わない。

割れてしまったぐい呑み。破片を踏んで怪我してしまわないようにすぐに片付けようとコラソンは見るも無惨なぐい呑みに手を伸ばす。もう少しで欠片に触れるというところでその男らしくも長い指を細く女らしい指が掬う。
青いマニキュアに目が留まった。

『ロシーくんは怪我しとらん?』
「あっ、あぁ」
『そう。なら良かった。人は物みたいにいかんからね。怪我をしたら治るのに時間がかかる。君に、怪我がないほうがうんと大事だよ』
「…!!!」
『さぁ、これは一緒に片付けよう。二人でやったほうが速いっしょ?』

彼女が回答を待っている。
けれどコラソンは答えられなかった。顔の熱と沸き上がる感情に揺さぶられていたから。

こんな風にときめかされるならいっそ。怒鳴ってくれたほうが何倍もいい。




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