四季折々序盤(仮)
2015/04/08 09:11

ネタメモで書いた占星術士とローの現パロ。その冒頭部分が降りてきたのでやるだけやってみた。↓





紫陽花の咲く季節のことだった。
しとしとと雨が降り草木を濡らす。水分を含んだ土からは独特の匂い。アスファルトは雨を受け入れずただそこに横たわっていた。
出来た水溜まりに街灯が反射して明かりを増やしている。水鏡とまでは呼べないが、少なからずそうなっていた。流れずただそこにあるだけの水はどこか恐ろしい。淀んだ水は良いものを連れてこない。そう教えてくれたのは誰であったか。今ではもう思い出せない。自ら得た知識のような気もする。家には飽くほど書物があるから。

いつだったか。所持する本の蔵書量を見て友人が図書館が開けると言っていた。開けなくもないが草書体が殆どだ。それが読めなければ意味はない。彼女も勿論読めるが、習って覚えたのではなく自然と身に付いたもの。読み物がそれぐらいしか無ければそうなろう。
考えながら歩いていたからか、随分と足取りが緩やかになってしまっていた。はたと気付いて歩を速める。もう少しで家だというのにこれでは帰るのがいつになるか。幸い帰宅が遅いと叱る者はなし。寂しくもあるがまぁ今となっちゃあ気楽。親不孝者めとお怒りの声が聞こえてきそうな。

お怒りの声のほうが何百倍もマシだったかなぁ。

『わぁ… マジか』

家の近くのゴミ捨て場。もう20mも行けば家だ。そこに何があるというのか。
端的に言えば人。人がゴミ捨て場に落ちている。それも恐らくは成人男性。やたらと背が高そうで顔も整っている。だがそれ以上に目を惹くのが殴られた痕や刃物で切られたような痕。リンチにでもあったような様子に彼女でなくとも面倒事の匂いを感じ取れる。ボコボコにされてここに捨てられたか命からがら逃げ仰せたか。どちらにせよこのままここに居れば風邪を引くだろうし見つかればただではすまない。

常識であれば救急車や警察を呼ぶもの。しかしそうしてしまえば彼の人生は終わったも同然。そうなると分かってて警察なんぞ呼べやしない。正しく今。彼の人生は彼女に委ねられている。己がどう行動するかで1人の人間の生涯が決まる。そんな重苦しい決断など軽はずみに出来るものか。普通の人間であるならば。

けれど彼女はこの瞬間にこの決断に直面したのではない。彼女は有能な占い師。この日この時間この場所で。選ばなければならない事などとうの昔に視っていた。
どうするかなどとっくに決めてあるし腹も括ってある。それが遂に目前にやって来ただけのこと。それでも嫌だな面倒だなと思うぐらいは許しとくれ。

『濡れんのはやだったんだけどねぇ…。やむ無しやむ無し』

傘を開いたまま、ゴミ捨て場に置いて傷だらけの青年をおぶる。傷を悪化させないよう注意を払って。成人男性にしては軽め。だが女にゃ重たいもんに変わりなし。ふらつき倒れそうになるのを踏ん張って堪える。傘を拾って肩に駆けるようにして、また家へと歩き出す。

あぁ、家に帰ったらお風呂入りたい。


end.



ロー喋ってないww

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