相変わらず失礼な奴だ。溝内楓は恋人である黒目憂からかけられた言葉に憤慨した。慣れているけど、恋人同士の雰囲気たっぷりのところで、何もそんな風にいうことはない。


「溝内くんのお腹ってぷにぷにしているよね」


今からセックスに励もうという所で恋人の口から飛び出す言葉とは思えなかった。下腹を触りながら満面の笑みで告げられた瞬間は殺意が湧いた。ムカつきついでに、蹴り飛ばし、衣服を着た。
溝内のそのような行動は黒目にとっては予想外のことで、焦る声色が溝内の後頭部の方から聞こえてくる。


「み、溝内くん」
「今日はもう終わりだね」
「え、まだ何もしてないよ」
「もう嫌だ」
「そんな、どうして!」
「どうして、じゃないよ。僕は前から言っているじゃないか。太っていることを指摘されるねが嫌だって」
「そんな……褒めたつもりなのに」


溝内の指摘にうなだれるように黒目は頭を下げた。溝内はそんな黒目わ眺めながら深いため息をつく。注意しなければ、改善されないので仕方なく注意してきたが、たまに、こうして注意した後に衝撃が大きいといった行動をされると焦る。いつも打たれ強いだけに。厄介だ。


「分かったら、もう止めてね」
「うん、ごめんね、溝内くん。反省するよ。けど、今日はもう止めるっていうのは、無しにしてくれないかな」
「と、いうことは」
「今日は凄くセックスがしたい気分なんだ」


断言した黒目は溝内の肥沃した二の腕を掴むと、その丸い顔に口付けをする。動物的な噛み付くような口付けはいつも鍛練で不器用なキスをする黒目にとって珍しいもので、ああ、なるほど本当にセックスがしたいのか、と溝内を納得させた。拗ねられるのも面倒だし、苛立ちは小さく沈んでいったので、まぁ良いかという気分になり口付けに答える。


「ふっあ、溝内くん」
「黒目くん」


口付けが終わり、唾液が白銀の線をつくる。頬を赤らめた黒目は溝内の瞼に口付けを落とすと、ゆっくりと這うように手を乳首へと移動させた。


「溝内くんっ、ね、気持ちよい」
「っ……んっ……う、ん」
「良かったぁ」
「ぁ……んっ」


肥満体系であるがゆえに男の癖に膨れ上がった胸を揉む。


「も、揉み、す、ぎっ」
「あ、ごめん痛かった?」
「いや、大丈夫」
「本当? 良かった」

お世辞にもセックスがあまり上手いとは言い難い黒目のせいで、稀に痛みが走る。初めてセックスをした日は痛くて痛くて堪らなかったな、と一年ほど前のことを思い出した。


「あっ、溝内くんのおっぱいおいしいよ」
「そっ、そぅっ……ぁ」


いつの間にか降りてきた黒目の顔は乳首を甘噛みする。唾液を垂らして、溝内の身体から湧き出る汗を味わうように黒目は吸い付く。

「ふぁっんっ、溝内くんっ」
「はぁっ……ぁっ……んっ……も」
「あ、溝内くんのペニス勃起してきたね」
「なんで、そんなことっ、言うのっ」
「あ、可愛い」


羞恥に塗れる溝内を見つめながら黒目は乳首をいじくる。この行為も言葉もすべて天然だというところが始末が悪い。


「触るね」
「ふぁっあっ!」
「軽くイっちゃった?」
「んっ……ぁっ……」


達したばかりで敏感な身体を触る。溝内の太ももを持ち上げ、自身のズボンを下げた。
ズボンの中から現れた黒目のペニスは浅黒く光っており勃起している。今にもはち切れそうな勢いだ。


「溝内くん、今日は入れはしないからね」
「はっ?…――なにっ、それ」
「だって合意がないまま進めちゃったから」
「なに言ってっんの、ふぁ」

キスを返した時点で合意だし、今更、挿入されないのも辛い、と溝内は叫びたくなったが、堪える。
黒目は黙る溝内を納得したとみなし、慣れない手つきでローションを取り出すと手のひらに落とし温めた。

「溝内くん、お肌つるつるだから、気持ち良いよ」
「何する気」
「素股だよ」


さらっと答えられ毒気を抜かれる。素股とかお前どこで覚えてきたの、と尋ねてしまいそうだった。呆気をとられ、動けずにいる溝内を同意と勘違いしたのか、内股にローションを塗りたくる。


「ちょ、黒目くん」
「すべすべで気持ち良いよ」


にっこり笑いながら囁かれれば黒目の顔に弱い溝内は何も言えなくなり、黙り込む。
変わりに恥ずかしくてペニスを隠すよう足を寄せようとするが、黒目に阻止されてしまう。お仕置きだよ、という勢いで開脚され、ぷるんと震えるペニスが顔を出す。


「溝内くんのって小さくて可愛いよね」
「うるさっ、見るなよぉ」
「ごめんね。無理。あ、美味しそう」

「ひゃぁっ……!」

熱い舌が陰茎に触れる感触がして身を震わす。
レロー……――と見せつけるように裏筋を舐められ、熱を持った双眸から快楽のあまり涙が零れる。

「ふぁ……黒目くっ」
「声、我慢しないでね」
「ん……ぁっしてない、……よ」
「溝内くん、んぁ、美味しいよ」

微笑みまじりで囁き、黒目はビクリと跳ね上げた肉棒を銜えた。溝内はペニスをすっぽりと柔らかな粘膜に覆われ、背中が仰け反る。

「やっ……黒目くん、いっちゃ、う」
「ぁん……イくのは、駄目かなぁ」

舐めながら黒目は答える。言葉とは裏腹に愛撫が激しくなり、太腿を開かされたまま、立ち上がったものを黒目に舐められ、快楽が膨れ上がった。
限界だ、と溝内の身体が叫ぶ瞬間、見極めるように限界のところで、口を離される。

「一緒にイきたいから。ちょっと我慢してね」
「んっ……ふぁ……」


だったら一層のこと、挿入してくれたら良いのに、と溝内は思いながら、口付けに答えた。黒目からは自分の味がした。

唾液が離れていくと、赤ん坊がおしめを変えるような体勢にされる。
膝をくっつけた状態で睾丸を押しつけて、黒目のペニスが差し込まれる。慌てて下を向けば溝内の勃起したペニスの下から、黒目のペニスがにゅっにゅっと顔を出すのが見れる。それが卑猥に見え羞恥を掻き立てられ、顔を背けようとするが「駄目だよ」と柔らかく拒絶されてしまった。
熱くなる下半身が身体を支えていた肘の力を奪い、布団に頭を預ける。首をあげて、見つめなければいけない光景を眺めると、身体を激しく動かされた。


「ひっあっひっぁぁぁあっ、うぐ」
「気持ちよ溝内くん、ふぁ、んぁっひゃう」
「ぁあっ、ひゃぃっ、はぁんっぁあ」


嬌声をあげる溝内に気をよくした黒目は、溝内の身体を回転させる。後ろからは溝内の窄まりが見えていて、快楽に任せて無理矢理押し入ってやりたい気持ちになったが制止させるよう首を振る。


「ひゃぁぁっあふぃぁっ、ペニス擦れて気持ちぃ」
「ふぁっぁっぁん、俺もだよ」


後ろからの方が動きやすいらしく、激しく黒目は動いてくる。そのせいで、肌と肌がぶつかり合う音が大きく、擦れあうジュプッジュプッという音が溝内の聴覚を犯す。
快楽で力が籠もらずぐでんとした身体は布団に頭を押しつけ尻だけが突き上げるような淫らな体勢だ。それで止まっていたら良かったのだが、ついに腰が落ちてきて、胡坐をかくように、黒目の睾丸の上に座り込んでしまう。




「んぁ、仕方ないなぁ、溝内くんは」
「ひゃぁぁっあふぃぁっ、仕方なくっなんか、なっあっ」
「うん、大丈夫だから、このままイこうね」


足に力入れてよ、というように尻を叩かれ恥辱に塗れる。空気を求めるように、口付けを求めると、柔らかく包むような口付けが振ってきて、腰の動きが早くなる。


「イこう、溝内くん」
「ひっあっぁっあぁぁぁぁひゃぁぁぁっ!!」


はしたない声をあげならが、溝内は射精する。黒目も達したようで、二人分の精液で身体はどろどろだ。






「溝内くん、すごい可愛かった。溝内くんってぷにぷにしてるから、素股も絶対に気持ち良いと思ったんだ」


快楽で布団に倒れこむ溝内に向かい、立ち上がり室内に設置された小さな冷蔵庫から飲料水を取出しながら、黒目は言う。
口を洗うように水分を含む黒目の口は、倒れこんでいる溝内にも水を分け与えたあと、屈託のない柔らかな笑みで告げた。


「どこでもお肉ついてるもんね、溝内くんって」



だから、気持ち良いんだねと呑気に言われ、呆れ返った溝内がやっとの思いで、黒目を殴るまではあと数秒を要した






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