呼吸の次にすることは






腕を切開してみた。
幼い、幼いと思い込んでいた腕は発達し、筋肉が生々しい。写実に写し取られた鉛筆のタッチだけで描かれた、それを見せると明は、ごめん、と謝罪を述べるように僕を抱き締めた。
謝って欲しかったわけではなく、謝罪されても、どうしようもない、ことなので、聞かなかったふりをする。だいたい、そういう意図があっての行動ではなかったのに、僕に対することに明は神経質になりすぎる傾向がある。仕方ないから、何も言えず口を閉ざす。夏目、と明は僕の首筋に手をやる。六時から、おパンツ少女の再放送なのにって、進む行為、そっちのけで考えていたけど、次第にどうでも良くなってきて、明を選択する。明を選択する癖は未だに消えない。僕のなかで一番優先される物事が誰に付随する出来事であるのかが、とっくの昔に結論が出されているからだ。震えながらも、結局、僕は明のすることを許す。明が安堵するから。明とのセックスは気持ち良いの半分と恐怖半分だ。愛されている、求められているって判るけど、身体に覚え込まされた感覚は未だに消えない。触れられた瞬間、記憶が開くことがある。もうありえないことだって、判っているのに、悲しい。
単純な快楽だけ求めるなら、オナニーした方が追求できる。けど、僕は明とのセックスを止めない。一番、必要とされている感覚が、僕が明の傍にいる理由になる。多分、明が僕以外に誰かを真剣に求めたりしたら、僕という人間はあっさり、明の傍を離れることができるだろう。別に愛していない、というわけではないのだ。寧ろ愛しているから、僕は明の傍を簡単に離れられる。愛しているの形は恋愛感情ではないのだけど。深く慈しむような形が、僕の中に存在していた。それは、僕が明の傍にいると決めた時から変わらないことだし、おそらく、ずっと変わらないことなのだろう。



セックスが終わるとベッドから起き上がって、録画してあった、おパンツ少女を見る。明はミネラルウォーターを飲みながら、呆れた眼差しで、俺とアニメどっちが大事なんだよ、という眼差しを向けていた。明は絶対にこういうこと、口には出さないけど。よく考えてみろよ。明の方が大事じゃなかったら、随分前に、僕は明を見捨てている。
言いはしないけれど。もう少し、僕が今、一緒にいることが並大抵の決意じゃないことや、同情とかで処理されてしまう感情じゃないって知って欲しい所だ。
こんなに愛しているのにさ。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -