意識が朦朧としている。ふわふわして、今にも飛んじゃいそうになる。
身体はどことなく重くて、はじめてエッチした日から、もっと体力をつけることが私の目標。今思えば、その体一つで開心会の頂点まで上り詰めたアルコットは容姿の良さだけじゃなくて、体力もかなりあったのかも……と思う。
「あ――すまんなぁ、ジュリアちゃん」
 いつもより低くて渋い音がするメメさんの声が耳朶の近くで聞こえる。真上を見上げると裸のメメさんが私に覆いかぶさっていた。天井から漏れる淡い暖色の電気をつけたままにしておいてよかった。
自分が見られるのは恥ずかしいけど、明かりがないとメメさんの身体だって見れないもの。
息遣いが少し荒くて、余裕がないメメさんを見るのはとっても好き。額からじんわりと湧き出た汗が私の鎖骨に落ちてきて、思わず手を伸ばしてメメさんの体を抱き寄せてしまった。
さて、この後、どうすれば正解なのか分からないけど、私の行動を確認するかのようにメメさんは「もう一回してもええ」と尋ねてくれた。私は顔が見れないのを良いことに(顔が見えると恥ずかしくて、強請れないの)小さな声で「はい」と述べた。
 途端、メメさんは大きな口で私の口を塞いだ。初めてセックスをするときまで触れるだけのキスしかしたことなかったのに、二十歳になりエッチが解禁されてからというもの、こうした、かぶりつくようなキスをしてくれる時がある。メメさんと私の体格差のせいもあるだろうけど、メメさんの舌は大きくて長くて、口の中がいっぱいになる。
未だに上手に絡めることが出来なくて、けど、メメさんはそれでも良いと言うように、少しだけ強引に咥内で暴れる。
上あごのざらざらした部分を舌先で撫でられると体がぞわぞわして、背中に回した手を少しだけ強くしてしまう。
 強引に舌を絡めるようにしながら、私の舌の下に入り込んできて、軽く左右に揺れられる。これをされると上手く息が出来なくて、けど、苦しいと思うより前にメメさんは私の咥内からいなくなって、気持ちが良いだけが残るのだ。
「はぁっはぁっ」
「大丈夫か?」
 優しく私の頬をメメさんの手が撫でた。メメさんはキスもうまい。セックス中、余裕がない顔も見せてくれるけど、それでも寸前の所で理性を保っているというのを見せつけられる時もある。きっと、これはメメさんが大人だから、というよりは、メメさんが経験豊富だからだ、と言い換える方が正しいだろう。
 こういう時、少し悔しい。メメさんの何人もいる過去の彼女さんたちズルいって思っちゃう。どんな人か知らないけど、メメさんのたどたどしいキスを知っている人がいたり、メメさんが遠慮せずキスできる人だっていただろう。
う――ん、ズルい。ズルい! ズルい! って叫んじゃいたくなる。
けど、それを叫ぶのはあまりにも悔しいのでぐっと堪える。過去のことがどうしようもないことなんて分かってるし、今は私が彼女だし、多分、こんなに優しくしてもらった彼女はわたし、だけ、だもん。たぶんね。

「……うん」
 大丈夫と今度は私の方から軽くキスをする。一度、気絶させられるくらいキスして欲しいなぁって思わなくもないけど。
 メメさんは少しだけ安心したような朗らかな顔をして私にほほ笑むと、何度か軽いキスでお返事してくれた。
 多分、これが一回目だったら胸から軽く愛撫してくれる。私の胸は下品ってほど大きくもないし、貧相な印象を受けるほど小さくもない。程よく大きいと思っていたけれど、メメさんの手にかかれば小さく見えるの嫌いじゃない。
そういえば、メメさんは多分無意識にとっても興奮してると、挿入しながら胸を揉んでくるときがある。その時は私を気持ちよくさせようとしてるんじゃなくて、多分、自分の快楽を追い求める癖みたいなものが出てるんだろう。決まって左手で挿入のリズムに合わせながら少し痛いくらいの力で揉んでくる。初めてされたときはビックリしたけど、嫌じゃない。むしろ、とっても好きかも。
一回目じゃなくて、三回とか四回とか回数を重ねた時に出てくるときが多いので、もしかしたら今日は見れるかも知れないと期待してしまう。
あ、これね、別に激しく揉まれるのが好きなんじゃなくて、余裕がないメメさんが見れるのが好きっていうそういうのなの。今は私だけしか知らないメメさんの仕草だし、そういうのもっと見たいなって思う。
「あっ――!」
 メメさんの指先がクリトリスに触れた。途端に快楽が走って驚いた声が漏れた。
「上の空やったなぁ。止めとくか?」
「ち、違う、元気だよ」
「ほんまに?」
「……ほんまにっ!」
「……ふ、不意打ちの関西弁も可愛いなぁ」
「そうですか? 練習しようかな」
「その時は俺にだけ聞かせてなぁ」
 また、キスが下りてきた。私もわかった――という返事の変わりにキスで返した。ふふふ、と笑いあったあと「ほな、やろか続き」とメメさんが言うので私は静かに頷いた。
「っ――あぁ、メメさん」
「声はなんぼでも出しいやぁ」
 ぐっと肉芽を押される。押し付けながらぐるぐると指を回され、ダイレクトな快楽に声が漏れた。「ひゃっあぁ」
 クリトリスを押されながら、空いている指でまんこの割れ目を撫でられる。もう二回、メメさんのものが入ってきているで柔らかく濡れている。ぐちゅぐちちゅとした愛液をかき混ぜるかのような音が凄く卑猥で恥ずかしい。
「メメさんっあぁ、あ」
「ここ好きやなぁ」
「んっ――あぁあ、好き、好き」
 指を二本、膣の中に入れられた。第一関節を曲げてはいってすぐのところにある、クリトリスの裏側を撫でられる。
「気持ちいいか?」
「はぁ、あ、ぁきもちっい」
「せやろうな。クリの方も押したるで」
 中と外から同時に刺激されて、快楽で頭の中がくるくる回る。メメさんの背中に回す手を激しくさせる。爪をたてたくないのに、気持ちよいと思わずしがみ付いてしまう。
「メメさんっイっちゃうっ、あぁ、あぁ」
 一人でイっちゃう! って思って、必死にアピールしたら、メメさんは急に動くのを辞めて、私の中から出て行った。
「あかんで、そんな切なそうな顔して」
「っ――はぁ、はぁ、あ」
「三回目やからな。ジュリアちゃんイくのは軽いの入れて倍くらいはしとるやろ。だから、我慢、我慢」
「ふ、う、うん」
 一人でイきたくなかったような、もう早くイきたくてたまらないような、相反する気持ちが渦巻いている。
 早く欲しくて思わず視線をメメさんの股間に向けてしまった。メメさんはにっこり上機嫌な顔をして笑って、ベッドサイドの引き出しからコンドームを取り出した。何回するかわからないから、初めから全部出しておけばいいのに、律儀に毎回一個ずつコンドームを取り出す仕草、メメさんっぽくてすごく好き。慣れた手つきでコンドームを装着するのは妬いちゃうから少し嫌い。
「コンドームつけるとき、見るの好きやね」
「見るのは好きかも」
 なんだかメメさんがエッチで好き。長い指先で、いつも包丁を持って野菜とか切っている手で自分のペニスにコンドームつけていくの見るのは好き。
 いつか私もつけてみたい。一度、練習したことあるけど、ほむらに練習してるところ見られてしまって、それがメメさんにバレて「そんな練習してるところ、絶対にほむらに見られたらあかん」ときつく叱られてしまった。
以降、なんとなく練習するチャンスがなくて実行できてない。だって、私、自分の部屋で練習してたらほむらがタイミングよく入ってきただけだもん。普段は絶対に入ってこないのに。あれ、いじわるする目的で入ってきたんだ。
けど、自室がダメならじゃあどこで? トイレ、とか? って思ったけど、共有スペースでそういうことしてたら、本当に叱られそうな気がして練習できなくなっちゃった。
「あ、あのメメさん」
「どうしたん?」
「私もコンドーム、メメさんにつけたい。今度、練習させて?」
 これが正解な気がする。少し脅えながら尋ねるとメメさんは一瞬、どこか遠くを向いて瞼を閉じた後「え、えよ」と絞り出すような声で許可してくれた。
「一人で練習したらあかんで」
「うん、分かってる」
「ええ子やなぁ」
 メメさんはそう言って頭を撫でてくれて、そのまま、またキスしてくれた。キスが終わると太ももに手をかけ、自分ペニスを掴みながら私の中に入ってきた。三回目だし、しっかり気持ちよくしてくれた後での挿入だからメメさんの大きなペニスはするりと私の中に入ってきた。
「あぁーーーあぁんっ」
「三回目やとさすがにスムーズやわっ」
「ふーーん、は、はいっ」
「身体、固くしんときや。な、もう少し奥はいるで」
「っ――んぁ、あ」
 ぐっと腰を押し込まれる。私の身体は小さいからメメさんのペニスがまだ入ってないのに、途中で止まっちゃうことが多いんだけど、何回かエッチしてるとちゃんと根本まで無理なく入るようになってくる。
「子宮、おりてきてるなぁ」
「おりて?」
「まだわからんでええよ。気持ちよいってことや」
「そ、んぁ、なの?」
「そうそう。あ――あぁ、あかん、あかんのやけど」
「っ――ひゃぁ、あぁ」
 ぐっと腰を掴まれて、持ち上げられる。多分入りやすいような体勢に調整されたんだと思う。さっきより奥深く、気持ち良いところにメメさんのペニスが当たっている。
 メメさんは少し悩んでいるようだった。悩んでいるっていうか、我慢の限界が近いって顔。優しい顔から鋭い顔に変わる。こういう顔を見るときに、佩芳とかほむらとか、メメさんはようするに、そういう人たちと同じ香りがする。
「な、ジュリアちゃん動いてもええ? ちょっと激しく」
「はぁ、あ、あ」
 奥に入ったきりメメさんは動こうとしない。私は膣の入り口をきゅうきゅう締め付けながら、メメさんの問いかけにもちろん、首を落とした。
「ふっ――あぁあっ!」
 大きな声が上がった。メメさんは打ち付けるかのように腰を振って、多分入ったらいけないところまで入っちゃった気がする。
「あ、ぁああっ――! ひゃぁあ」
「あ――ほんま、悪いなぁ」
「あ、ぁああ、ふあ、ぁ」
「気持ちいやろ? な、なぁ?」
「ふぁ、ああ、きもちっああぁ」
 肌と肌がぶつかる音が聞こえる。信じられないくらい早い動きで打ち付けられて私は喘ぐことしかできない。メメさんにしがみ付いたら、もっと深くまでペニスが入ってきそうで怖いから、ベッドシーツを握りしめようと、手を伸ばしたら、止められてしまった。
「あかんで、ちゃうやろ、そこやない」
「あぁ、あ、ひゃぁ、あ、ごめ、ごめんなさいっ」
「そや、そう。こっちな。ちゃんと背中に手、まわし」
 メメさんは私の手を自分の背中にもっていった。自然と距離は近くなったけど、シーツはダメって言われたから覚えないと。普段はこういうこと、言われないんだけど、今、興奮してるんだ。嬉しい。
多分これがメメさんの本音。成人してからというもの、少しずつ表に出るようになった。セックスしているときは、理性が緩まるのか本音が漏れることが多い。次から気をつけよう。私もメメさんの背中にしがみ付くのは好きだし。少し怖かったけど。
「ひゃぁ、ああぁ!」
「ちゃんと背中に手、回せてえらいなぁ」
「ふ、あ、あぁ、ほめて、くださいっ」
「えらい、えらい。あ――好き、ほんま、好きや」
「あ、あぁ私も好き、あぁ、あ」
 さらに動きが激しくなる。メメさんの背中は私の爪痕でいっぱいになっていることだろう。激しく腰を打ち付けながら、メメさんは胸も揉んできた。揉みながら指の間に乳首を挟まれて、快楽が生まれる。
「あ、ぁ、あメメさんっあぁ、二個同時は、やっぁあ」
「嫌やない。好きやろ」
「う、あぁ、好き、あぁひゅああ、ぁ好き、好き、好き」
 痛いくらい激しく胸を揉まれる。うん、優しすぎるのももちろん、好きだけど、やっぱり今みたいにメメさんの気持ちいが優先されてるエッチも大好き。
「あぁ、ぁあ」
「はぁ――ぁあ、あ」
「あぁあっあメメさんっあぁ」
「あ――ジュリアちゃん、出すで」
 メメさんはそう言いながら私の口を塞いだ。キスも好き。キスというよりはまれている感覚に近いけど。
 おかげで嬌声はメメさんの中に溶け込んでいく。
「んっ――――!!! ふ、あぁイくっ!」
コンドームのおかげで感触しかしないけれど、じゅぱっと出されて私も同時にイった。
あぁ、いつか、この精液をちゃんとなかに出してもらいたいなぁ、なんて思ってたら意識が飛んでしまった。






朝。
目が覚めた。カーテンの隙間からは木漏れ日が漏れている。体感として午前の三時くらいまでセックスをしていたにしては、随分早く起きてしまった。
どろどろだった身体は綺麗に拭かれている。体液でびしゃびしゃになったシーツも綺麗なものに取り換えられていた。私はまだ裸のままだけど、横で寝ているメメさんはパンツは履いてるから、最低限の後始末だけしてくれたみたいだった。
布団の中を覗き込むと、あんなにしたのに、朝だからメメさんのペニスは膨れ上がっていて、不思議、と思わず手を伸ばしてしまいそうになるが、以前、これで手を伸ばして触ってしまい、酷く𠮟られたことを思い出したのでとどまった。
「メメさん……寝顔はとってもかわいいのよね」
 エッチの朝。すっきりした顔で幸せそうに眠りにつくメメさんを見るのは結構好き。
 可愛いなぁって思いながら、この人のこと本当に好きだなぁって頭を撫でて、起きないの確認してからほっぺたにキスした。
 キスするもの好き。
「ふふ、もう少し寝ようかな」
 身体はセックスしたあと特有の倦怠感に包まれているけれど、やっぱりまたメメさんとエッチしたいなぁ、なんて思いつつ、その腕の中にもぐりこんだ。