ひぎゃ

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛いいたぃいたい、いたいぁ、あいあいいいいいいい
頭を鈍器で殴られた。ベッドに押し倒されてから、どれだけの痛みを与えられたのか判らない。鈍器で殴られたことはずどんという衝撃がきたことから理解出来るが、いったい、何で殴られたのかを把握できるほど私の瞼は開いていなかった。うっすらと涙の膜が先ほどからずっと出来ていて、視界の先には見知らぬ天井と、美しい青年の顔だけが写った。青年は興奮しているのか、吐息は荒いし、眼球も充血している。涎も垂れていて私の皮膚に彼の唾と涎がだれだらと落ちてくるる。どうみても醜い姿の筈なのに、どうしてか暴力を奮っている姿まで美しかった。
私はこの顔を見たとき「御伽噺に出てくる王子様のような顔をしている」と思ったし、彼の顔があまりにも美しかったから、誘われてのこのこと後ろを着いてきたのだ。まさか、こんな目に合うなんて誰が想像しただろうか。
容姿のせいなのか男に誘われることは少なくはない。自分でいうのもなんだが、美人に分類される顔つきだ。吊り上った大きな目に、影が出来るほどの睫毛。口が少し大きいのがコンプレックスだが、派手な顔つきには寧ろ良くあっていると周りからは称賛される。身体も細くて胸も大きいので、どうやったらそんなスタイルを保てるの? と尋ねられることだってある。だから、街中を歩いているだけで誘われることは本当に多いけど、街中で誘ってくるような男に馬鹿丸出しな態度で着いていくことなど、数えるほどしかなく、二人きりになるような関係に至るまで相手の男を入念に観察する癖をつけているというのに。なぜ、どこで、どうして、私は間違ってしまったのか。
彼は無害そうな男だった。軟弱な口調で話しかけてきて、はじめは手を振り払ったというのに、女の私より整っているその造形を見て思わず見惚れてしまった。そうだ、やはり顔に油断させられた。次は声だ。男は本当に弱そうな口調で優しく私に話しかけた。始めにベッドへ行こうと誘うのではなく食事をしよう、寧ろ奢って欲しいとまで言ってきたのだ。ヒモ希望の子どもなのかと、内心、私はほくそ笑んでいたし、派手な容姿をして男から贈られてきたブランド品に身を包む私のことをさぞかしカモと思って誘ってきたのかと可愛く思ってしまった。ちょっと、捻って遊んでやるつもりで誘いにのった。「いいわよ」と大人っぽい声色を出すと、彼は頬を真っ赤に染めて微笑んだ。天使が笑ったみたいだわと思って、少し高い洋食のレストランへ連れて行ってあげたのだ。
喋れば、喋るほど、私が男に向けている警戒心は低くなっていった。なんだか、向こうがすべてを曝け出してきてくれているようで、私が虚勢を張る必要などないように見えたし、年上ぶって彼を甘やかすのが楽しいとさえ一緒に居た数時間で思うようになってしまった。だから、食事が終わった後、彼に手を握られた時、思わず首を縦に振ってしまったのだ。キスをするのでもなく、肩を抱き寄せるのでもなく、直接言葉を交わすわけでもなく、ただ、指の甲をぎゅっと握りしめてくる彼のことが一途に見えてしまった。犬のようだと。本当に可愛い子だと私より背が高い彼に対して覗き込むような気持ちで「なぁに」とその誘いに乗った。
思えば、それは彼の作戦だった。二人きりになると彼は豹変した。彼等とはいってられない。青年は私の首を絞めながらベッドに押し倒した。いや、なにをするのと叫ぼうとしたら持っていた紙袋を顔に被せられ、一瞬パニックで息が吸えなくなってしまった。その隙を狙って彼は私を裸にさせたし、いきなり濡れてもいない膣に彼の陰茎を突き刺してきた。悲鳴を上げると彼は紙袋を外して、その歪んだ顔を披露したのだ。
それからは、ひたすら痛みとの戦いだった。私は脚の爪を剥がされたし、乳首をピアノ線のようなもので締め上げられ半分千切れてしまった。どこかの骨を真逆に折られてしまったし、最終的に膣を割断されてしまい、意識を手放したのだが私が意識を手放している間も彼の猟奇的な行為は続いていた。目を覚ます度に痛みだけが持続的に与えられ、私の頭の中には痛い痛い痛い痛いとただ、その単語だけが呪文のように繰り返された。
私の目に映る男はどこまでも美しかったが、天使のようだとおもった姿はそこにはなく、被虐の限りをつくす彼は天使でもなければ悪魔でもなく、なんとも穢く美しい人間の姿だった。やっぱり、人間が一番穢いのかもしれないと、中学二年生のようなことを思っていると、彼の吐息が徐々に荒くなっていった。精液を私の身体にぶちまけて、ひひひぃぃぃぃ、と嘲笑うその姿さえ、美しいと思ってしまう自分が恥ずかしく、酷く惨めだった。







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