004「はっひゃぐっあうっ、やめろ、紀一!」 「えー嫌だよ。紀一さんは拒絶することを拒絶するよ。紀一さんは拒絶する、だよ」 「意味不明な言葉吐き出すなっ」 「健太判らないの? ヲタクみたいな見た目なのに」 「滅びろっ、はっあうっ!」 「けど、健太が悪いんだよ。紀一さんの頼みごと忘れて川上なんか見てるから」 「野球見ていたっっだけ、はぅ、だろっ」 「違うよ、川上を見てたんだよ。健太、野球よりサッカー、ついでにいうなら駅伝を見ながら野次飛ばすのが好きなくせに」 「だ、ま、れ!!!! っあっちょっやめっはぁっく」 紀一は俺の後孔に指を突っ込み、自由自在に動く。容赦ない攻めに、嬌声が漏れる。反論したいのに、紀一は反論させない。厭味なくらい長い筋張った美しい指は容赦や情けを微塵も感じさせない。こ、こいつ怒ってやがる。最悪だ。川上見てたって、偶々、俺が自室のベッドの上で暇だからってテレビかけてたら、川上に目がいったから、眺めてただけだろう。下らない事の発端だな。高校時代の一応、そう、一応友人がいたら反応もするつーの。お前、本当に川上のこと嫌いだな。お前が知らない俺の高校時代を知っているからって。しょうがないじゃねぇか。高校時代の事は。中学卒業間際に色々あって(いや、まぁ、俺が紀一に告白されて、振ったからなんだけど)進路、突然、お前が、お前が変えたんだろ! そこで、俺が友人作っても勝手だろう。大体、お前だって、友人作っただろ。黒沼帝っていう良い子ちゃんが。 お前にとっての高校時代からの友人が俺にとって川上だっただけだから。 偶々、高校時代から有望された野球選手(偶然とも言い難いけど。俺の高校、スポーツ進学校として野球無茶苦茶有名だったから)で今は、ドラフト一位指名されて、プロ野球選手として活躍しているから、テレビとかで見るけどさ。 「健太、考え事しないで。紀一さん、怒ってるんだよ」 「しるかっはっあっっひゃうっぐっっ」 端麗な顔がぐしゃりと気持ち悪いくらい不気味に歪む。収縮を繰り返す後孔の動きなど知ったことかと言うように乱雑に指は動く。粘膜にこびり付いた指先を抜くと、舐めてみせる。 両手が拘束されてなかったら殴ってやるのに。紀一が怒ったと察した時に逃げるんだった。本気になった紀一に俺みたいな矮小な人間が適うわけないのに。頭の上で交差するように組まれた腕。肉に食い込み縄がいたい。どこから取り出した。持ち歩いてるのか、変態さんよぉ。 「な、紀一もう良いだろ、止めろよ」 「馬鹿なことばかり言わないで。嫌だって紀一さんちゃんと拒絶したのに。いい、健太。紀一さんはね今からこのお尻の孔に意地悪して、健太に罰を与えなきゃいけないの。悲しいけどしょうがないことなんだよ、それは」 「や、だから、悲しいなら止めろよ、な。つーか、嫉妬深いもいい加減にしろよ。ウザイ」 「け、健太っっ 紀一さんにそれは言っちゃだめな言葉だよ、健太っ!!!」 子どもの癇癪のように紀一は声を張り上げ、俺の足首を掴むと赤ん坊がオムツを変えるような格好にさせ、叩く。 「ひゃっ! あぐっ、いたっ痛いって!」 「お仕置きだから我慢してよー紀一さをだって可哀想だと思ってるよ」 「嘘つけ! ひゃっっ、っーーいたっあぐぅ」 「あ、ちょっと腫れ上がってきたね」 パンパンと容赦ない手の動き。スナップを効かせた音がリズムよく尻たぶに打ち込まれる。 い、痛い。手加減はされているだろうけど、腫れ上がるくらいって、どれだけ強く殴ってんだよ。くそ! 「あっあふ、いや、ひゃぁ、やめっっ」 「えーーじゃあ、これは止めてあげる。紀一さんS属性はないからな」 「どの口がそれを言う!」 「この口かなぁー」 にやっと紀一は歪めた表情を俺に見せる。あっさり止めてくれて、意表を突かれた。何考えてんだ、こいつ。 紀一は俺をベッドの上に放置して、台所へとむかった。冷蔵庫をあける鈍い音が俺の耳に入ってきて、嫌な予感しか既にしない。 爽やかな表情を醸し出し、両手に何かを抱えた紀一は戻ってきた。おい、それ、何だよ。 「苺だよ、季節外れだけど美味しいが手に入ったから健太に食べて貰おうと思って持ってきたんだ。まさか、買ったころは、後ろの口から食べて貰うことになるなんて思ってなかったけどね」 「じゃあ、普通に食おうぜ。な、紀一」 「駄目だよ。今は健太の後ろから食べて欲しい気分だから」 「冗談はそれくらいにしておけ」 「冗談、なんかじゃないんだよ。さ、御開帳」 尻を叩かれたり既に息絶え絶えだった俺の身体を簡単に操り、解され緩くなってしまった後孔に苺を入れられる。内壁の粘膜が絡みつき、苺の柔らかな形を感じてしまう。潰れるかと想像していたのに、意外と頑丈な苺はじゅぷじゅぷと音を立てながら、沈んでいく。 「ふっ! ひゃぁうあっあ、紀一っ」 「苺、するっと健太のいやらしい孔の中に入っていったねぇ。ふふ、健太の淫乱さん」 「誰のっ! せいだっと!」 「うんうん、紀一さんのせいだね。ごめん、ごめん」 微塵たりとも謝罪の念が籠っていない言葉を吐きだし、紀一は俺の頬にキスを落とす。同時進行で、苺、二個目を後孔へと入れていく。纏わりつく粘膜の感覚が、奥へ堕ちる苺を自覚させる。 「簡単に入っちゃうね」 「っ―! あっあふ、あぐっあ!」 「あ、健太はここ? ここが気持ち良いんだね? 苺、前立腺まで届いっちゃってる? 紀一さん、だとしたら楽しいな」 「ひゃぁああああ、あぐあっアぁっ俺はっあ、ぜんぜんっ楽しくねぇっよ!」 「あは、だろうねぇ。けど、健太、これだけじゃないよ。紀一さんのお仕置きはね。ほら、苺を健太の中でかき混ぜて潰してジュースにしなきゃ。紀一さんのミルクもたっぷりかけてあげるからね」 「なっ!」 ふざけたことを! 冗談、だよな、で済まされる展開じゃない。本当に怒っているみたいだし。俺が嫌がれば嫌がるほど、紀一は快楽の渦に飲まれ酔い耽る筈だ。 「おい、紀一! 止めろ! お願い、だって止めて、くれよ! 川上のことなら謝るから。もう迂闊に紀一の前であいつを見たりしないから、だから、な」 矜持も捨て懇願したというのに、紀一は聞く耳を持たないという態度をとり、愉快に野菜を取り出した。 長芋だ。 俺が摩り下ろして、刺身に混ぜ、醤油と山葵で味付けして食べようと思って冷蔵庫に保存しておいた、長芋が紀一の腕で光っている。皮も綺麗に剥かれていた。え、いつの間に。もはや、狂気に見えてきた。 「紀一さんは優しいからローションいっぱい垂らしてから挿れてあげるね」 「や、優しいなら、やめろよ」 「さ、健太の中途半端に勃っちゃっているここを楽にしてあげないと」 半分勃起したペニスを紀一は指で叩く。俺は蚊がなくような儚い抵抗を示すが通じるわけがなく、抵抗の証として揺すっていた、腕は捻じ伏せられる。拘束されているのに足掻くなんて愚かで可愛いね、と言われているようだった。 「ひゃぁ! あああ、っあっあがっあっあふぁっあ!」 長芋が人には恥ずかしくていえない器官に入ってくる。解したとはいえ、規格外のモノが後孔に入るのだ。収縮を繰り返す襞は拒絶するが、関係ない。強引に押し込まれる。反抗心と恐怖で意識するたびに、締め付けは強くなり、ダイレクトにそれが粘膜越しに感じる所を押し上げ、腰が砕けそうな快楽が走る。 「ひゃぁぁぁぁぁ、あぐ、あぁぁぁっあ、紀一っ 死ね、お前っ!」 「あ、苺が押し潰されている感覚、判る?」 「わかっあ、わかっちまうっ、から!」 長芋によって苺が、ぐちゅぐちゅ潰されていく音が脳髄の裏辺りから聞こえてきる。嫌でも耳に入ってしまって、羞恥が募る。内壁を苺の果実が伝い落ちていく。それを長芋が阻止することによって、判ってしまうのだ。異物が自分の内にあることが。 「ひゃぁっあぐあ、紀一っ! もう、いいだろ」 「駄目だよ。それに、もう暫くしたら紀一さんにとってもっと面白いことが起きるから。分からず屋の健太にはちょうど良いよ」 「ひっやだぁ、いやだっいってるのに!」 眼球の表面に薄い膜が貼る。追い付かない快楽と日常的ではない攻め苦に涙が湧いてきている。 不規則に乱れる呼吸を正したいのに、嬌声をあげることを静止できない。翻弄される自分の身体が悔しくてたまらない。下腹に熱がたまる。達したいのに、達せない不満も現れる。 「っあ、もうっいっそうのこと、イかせやがっれ! あふぁう、ひゃぁ!」 「うーん、だから面白いことが起こるまでそれも我慢だよ、健太」 「いやっあっひゃぁっあぐあ! え、いや、痒い、痒い、紀一っ!」 「あ、痒くなってきた? 良かった、良かった。紀一さんは大満足だよ」 「やっなに、なんだよ、これぁ、あっあっひゃぁ!」 急激に後孔が痒くて仕方なくなった。 媚薬を直接塗られた感覚と似ている。いや、けど、まさか、今日は塗られた覚えねぇぞ。紀一なら、俺に気付かず塗ることくらい容易そうだけど、紀一の反応を見る限り、媚薬なんかじゃない。 「長芋、だよ。健太。アナルってナイーブな所だから、被れちゃったんだね」 「え? あっあうひゃぁぁぁ、あぐあ、ながいっもって、お前! それ狙ってた、だろっ!!」 「当たり前でしょう、健太。言ったよね、紀一さん、今日、怒ってるんだよって」 女子が聞けば卒倒しそうな低いハニーヴォイスで囁かれる。普段、なんでも俺のいうことを効く、呑気な眸は笑っていなかった。双眸は俺を射抜き、息をするのを一瞬、忘れる。 本気で怒っているってことは知っていたけど、まさか、ここまで、紀一が怒っていることを想像していなかった俺は、背筋に悪寒が走る。 「本当に、分からず屋だねぇ。紀一さんは、その名前さえ、健太の口から聞きたくないっていうのに。お仕置きの最中にも、口にしたよねぇ」 「あぐっあぁぁぁアあ、っふあぁんあ、だって、そっれ、は」 「うん、言い訳するためだよね。けど、紀一さんは気に食わないの。それ、今日はしっかり理解してよ。別に紀一さんは紀一さんが知らない所で健太が他の人間と交流をするのは構わないし、仕方ないことだと思っているよ」 「ひゃぁあっあ、痒いっ痒いよぉぉx! なが、いも、やめって! いや、もっと掻いてよ、痒いっあ!」 「けど、紀一さんの前じゃだめ、あ! 紀一さんの友達は許してあげる、特例として。紀一さんの大切なエリアにいる人間だったら。けどね、それ以外は、駄目。紀一さんと一緒にいるときは、紀一さんとの時間を優先して」 「あっあ、わかった、わかったからっ! もう、許して、痒いっ痒いっよ!」 紀一の言葉なんて半分くらいしか頭の中に入ってこなかったけど、無我夢中で返事をした。両手を拘束されているのを、これほど苦と感じたことはない。自由だったなら、俺は、自分の指を我武者羅に動かし後孔を弄っていただろう。 「うん、健太はやっぱり良い子だね」 「ひゃぁぁああ、あうっあ! あ、痒いっいやだぁぁもう、くそっあう」 お約束のように紀一は俺のおでこに口づけをするが、正直、そんなものより、長芋をどうにかしてほしかった。煩わしいと振り払う。唾液と涙で崩れ落ちた顔を紀一は優しく撫でる。なんて、傲慢な手のひらだ。嫌いになってやりたい。無理だけど。 「紀一っあ、ひゃぁあああ、あぐあ、イきたい、イかせろっ!」 「判っているよ。紀一さんがちゃぁんとイかせてあげるから」 「はぁっあ、早くうぅぅあ、あっひゃぁあぐあっ」 咽喉が擦り切れそうな嬌声を上げる。紀一は滑らかな動作で俺の後孔から長芋をようやく抜く。それでも痒みは収まらない。寧ろ、刺激を与えていた長芋が無くなり、俺は子どものように駄々をこね、しゃくりを上げる。 「き、いちっぃぃぃあ、っあ、はやく、紀一ぃの、挿れやがっれ」 「可愛い、可愛いね」 すっかり機嫌を直した紀一は俺の後孔にぴたっと硬度なペニスを押し付けた。期待で身体が跳ねる。脳内を支配するのは、ペニスで無茶苦茶に犯された時に得る快楽。早く、欲しくて、無意識に腰を揺らす。 「ふふ、紀一さんをあげる。食べてよ」 「ひっふあぁひゃぁぁぁぁあぐあ、あっ熱いっあ、紀一っもっと、もっと!」 「いいよ、健太。健太が欲しいならもっと、もっと紀一さんをあげる」 長芋につけたローションのせいか、俺の我慢液が後孔に入ったのか、苺の果実か、わからないが滑りが良い後孔を紀一は犯した。ぐちゅと、淫液が溢れる音がする。紀一を飲み込んでいる肉襞の縁から、精液もローションも腸液も、果実も全部混ざったものが、わずかに溢れだし、卑猥な図だ。証拠のように、紀一の顔が緩んでいる。 「ふぁ、紀一、イく、イっちまう! ふあひゃぁ、なんで、手、離せよぉ」 「駄目、紀一さん一緒にイきたいから。だから、もうちょっと我慢ね」 「いやっふっもう、限界だって、さっきからひゃぁぁあぐ、言ってる、のっあっに」 決定的な刺激を与えられず、一度もイかされていない俺のペニスが痛々しく尿道をひくつかせながら律動に合わせて揺れた。 「健太、一緒にイこう、紀一さんと」 「あっあぐ、イくっイくって!」 「うん、ね」 「ふあぁぁぁぁぁぁあ、あぐひゃぁっあっ! イってる! イってる!」 「っ―――」 紀一の熱が俺の内側に染み込んでくる。射精し、飛び出た精液は壁を汚す。快楽に溺れるので、掃除のこととか考えられなくて、緩んだ口角筋は嬌声を発する。 覆いかぶさった紀一が耐えるように、声を吐き出す。はは、気持ち良かったのかよ。なら、良かったじゃねぇの。 どぷっと紀一のペニスが俺の後孔から抜ける。注ぎ込まれた精液が、シーツに付着する。つ、疲れたと、寝てしまえと企みながら瞼をゆっくり閉じる。許してくれるだろう、と考えてきたのだが、お仕置きから始まった行為だということを忘れ、慢心した。 「健太」 「なんだよ、もう……」 鈍い反応を返したというのに紀一は俺の両頬を掴み、口づけをする。 なにか、押し込まれ、苦いものを飲まされた。人が飲むような味じゃなかったから、体液か。 え、あ、体液? 「お前、なに、飲ませた」 「なにって苺ミルクだよ。言ったでしょう? 苺ミルク、作るって。美味しく出来ていた? 紀一さんと健太の合作だよ。美味しいよねぇ。ねぇ、健太、後処理も兼ねて飲ませてあげるね」 にっこりと笑う紀一を見て、思う。怒られると、面倒だ。 |