一緒に住み始めて五十嵐くんとセックスするのは週に三回。
決められているかのように週に三回。なんでだろ。もっとして良いのに――とか、今週は(五十嵐くんが)疲れているからしなくても良いのにと思う時もあるのに。決められたかのように週に三回。
決められたかのように――ではなく、実際決まっているのだろう。五十嵐くんが理想とする恋人同士のセックス回数なんだということに、気付いたのは実は最近であるので、俺は相当、鈍感な方なんだろう。
せめて五十嵐くん関係は察しが良い人間になりたいものだけど。友達のぷっちょとか見ていると、陽子ちゃん(ぷっちょの恋人で幼馴染でちょっとぷっちょが好き過ぎて頭の螺旋が飛んじゃっている子)の気持ちに八年間気付かなかったということなので、さらに上を行く鈍感が身近にいるので危機感はそれほどないんだけど。鈍感であることが可愛いなんて痛い勘違いはしないでおきたいと身に刻みたい。五十嵐くんはきっとそういう子は嫌いだと思うから。


「ん―――」

五十嵐くんはきちんとセックスするとき、キスから入ってくれる。キス以外から入るセックスがあるのだということも俺はちゃんと知っている。まぁAVだったり菊池くんあたりから聞かされる耳を塞いでしまいたくなるような下世話な話からだけど。因みに春也くん曰く、菊池くんがキスをしてセックスへ持ち込むことはあまりないらしい。理由を聞いたら「セフレ時代の名残だと思うけど、テメェには関係ないだろ、ソバカス」と言われた。悪口もだけどセフレとか俺が生きる日常において関係ない言葉過ぎて、ちょっと息が詰まった。もちろん、そういう会話は五十嵐くんがいない所で行われる。五十嵐くんがいれれば春也くんは俺に刃向かったり暴言を吐き捨てたりしないので、彼は中々に賢い。

キスをして首筋に手が触れる。五十嵐くんの冷え切った指先が俺のあたたかい肌に触れて、それだけで達してしまいそうになる。貧相な肉がまるでのっていないさわり心地最悪な身体を五十嵐くんは愛撫してくれる。
背骨とか鎖骨とか肋骨とか俺の身体は浮き上がっていて、自分でもなかなかに気持ち悪いと風呂場とかで鏡を見る度に思っていたので、はじめ五十嵐くんに身体を見せるとき、そうとう恥ずかしかったし、嫌われるかもしれないと思ったのだけど、気にすることなく五十嵐くんは触ってくれる。
肋骨を直接触られているのがわかる。皮膚の上から親指の腹が触る。胸を執拗には責められない。五十嵐くんの愛撫はなんでも俺を一番に気持ち良くすることを考えられた動きで攻めてきて、いや、もう少し止めて欲しいというぎりぎりのラインを持って限界まで高ぶっていく。きっと最終目標が挿入して達するということになっているので、前座はあくまで前座でしかないのだ。

「五十嵐くん」

吐息に零した息を漏らすと、五十嵐くんはこっちを向いてくる。顔をあげて俺に触れるだけのキスをしてくる。俺はそれに答えるよう、啄むだけのキスを必死に返す。もうここら辺までくると俺の羞恥心はどこかへ消えていく。指が下半身へと延びるともうだめだ。頭の中が真っ白になる。だって気持ちがずっとよい状態でキープされているんだから。俺としてはたまらない。頭の中がぼーっとして霧がかってくる。
俺の妄想のなかじゃ、五十嵐くんを上手にイかせてみえる俺がいたりとか、奉仕するのももっとうまく出来るんだけど、やっぱり現実になると経験値が段違いなので、こうして五十嵐君の腕の中で乱れることくらいしか出来ないので、少しもどかしい。もどかしいけど、五十嵐くんは自分の掌握できる中で俺が乱れている姿を見ていて、ご満悦に少しはなってくれているようで、いつも頬の口角があがっているので良いとしよう。

「はぁっぁ」
「天響くん」

嫌いな名前を呼ばれてるのに、良い気分になってくる。尻の筋肉がぎゅっと閉まる。もう堪らないと頭の中で熱が炸裂するように飛び散る。

「じゅ、順平、く、ん」

呼びなれない五十嵐くんの名前を呼ぶ。なんだかんだいって、五十嵐くんで定着してしまったので順平くんと呼ぶタイミングを失ってしまったので、本能丸出しのこういうタイミングでしか呼べなくなってしまった。けど、だからこそ、たまに俺が素で「順平くん」と呼ぶと五十嵐くんが喜んで(心も体も)反応をしめしていることが判る。さらに素で呼べなくなっていくけど、俺の言葉一つで喜んでくれるのかと思うと、なんだか、それだけで細かいことはどうでも良くなっていく。
挿入のときも五十嵐くんはたいていキスをしてくれる。尻穴の中に指が入ってきて、ぐちゅぐちゅと慣らされたあと、五十嵐くんの肉棒が俺の体内にはいってくる。熱を帯びて聳え立った肉棒が、陰毛が尻たぶにあたって、こしょばいくらい近づいてきて、俺の中を犯す。
動こうとすると五十嵐くんはあまり良い気分にならないんだけど、たまに動いてと言われると俺は喜んで腰を振るし、ああ、けど五十嵐くんが思うように、振り回されるのはたまらなく好きだ。
限界まで高められて、達することを目標としたセックスが続いて、もうダメだと、イかして欲しいと泣きながら懇願する。必死で五十嵐くんを求めているときの顔が中々に好きなのか、五十嵐くんの性欲が強い時ほど、良く焦らされてもう、欲しい、お願いとキスで訴えると腰の動きを早くしてくれる。

本当に体力がないのでたいてい、多くて三回で倒れてしまうんだけど、寝ていると労わってくれて、身体も拭いてくれて、後処理は俺が寝ている間にしてくれる。もう、はやいところ五十嵐くんの子どもが欲しいんだけど、こんなことをいったら引かれたらどうしようと危惧しているので中々いいだせない。あと、子どもに五十嵐くんとられるのは嫌だ。難しい問題であるけど。せめて、五十嵐くんが疲れている時は週に3回じゃなくていいよ、とか。別にもっといっぱいしたいときはしてくれても良いよとか言えるような関係になってからだと、そういうのを欲しがるのはやっぱり俺にはちょっと早いみたい。








「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -