性的なことはそんなに好きじゃなかった。
女の子は普通に好きだったけど、なにしろ母親が母親なので、平均的な男子高校生よりも性的なことに対する興味は少な目だったと思う。友人のチビが性的なこと大好きで、童貞丸出しのAV雑誌とか持ってくるんだけど俺は顔面真っ赤にして終わり。抜く為に利用するアダルトビデオも王道の展開ばかり。可愛めな女の子がベッドの上で脱いで恋人同士がセックスするっていう。そういうの。あえて言うなら、素人くさい方が好きだったかも知れない。

けど五十嵐くんと出会って変わった。
出会ってっていうと俺が初めから五十嵐くんを性的なことで見ていたと誤解を招きそうだから訂正するけど、五十嵐くんのことを好きになって変わった。五十嵐くんは始めから孤独でどうしようもない、友達も碌にいないような俺に平等な声をかけてきてくれた素晴らしい人なんだけど、始めから惚れたわけじゃない。五十嵐くんの普段、俺に対して接してくれる行動が積み重なって好きになったのだ。
好きだって判って、五十嵐くんにキスする夢を見て、起きたら勃起していた。勃起したチンコを見て「ウソ」と純情な五十嵐くんを自分が穢してしまったかのような錯覚が起きて、ごめんなさいって布団の中で座敷童みたいに丸まって懺悔した。俺は、とんでもない、ことを――と謝罪の連続だったが、初めて性に触れた子どもみたいに俺は初めてオナニーに狂った。
五十嵐くんがどんな風に喘ぐのか、ごめんなさい! って何回も呟いてから、チンコを持った。俺の中にいる五十嵐くんは普段のカッコよさを維持したまま可憐で可愛い姿も持っていて、俺に抱かれていた。
今でこそ、俺は抱かれる側の選択肢しか残っていないし、こんな体に負担がかかって初めては痛いものだと知らなかったので、五十嵐くんを抱きたいという気持ちはほんの少ししか残っていないのだが、初めはなぜか俺が抱くのだとばかり思い込んでいた。だって、俺も男なのだ。受け身の妄想をする方が珍しいと思う。
オナニーする時は今でも最終的にフィニッシュするのは俺が抱いている妄想であるし。ああ、五十嵐くん、こんな俺を許してください――と懺悔しながらも妄想の中にいる五十嵐くんはやっぱり現実のカッコよさを兼ね備えながら可愛く俺を誘惑してくる。
因みに専ら、オカズは五十嵐くんになってしまったので、持っていた僅かなアダルトビデオや雑誌は捨てた。五十嵐くんが俺の想像以上に嫉妬をして心を痛めるところがある人だと知ったからだ。捨てたっていう自己申告はしないけど、五十嵐くんを不安にさせる材料のようばものをわざわざ持っている必要はないのだ。ただ、今は、五十嵐くんを抱く妄想をして抜いていることがバレたら「心の浮気だ」と言われないか心配している。
妄想は自由だし、頭の中を直接覗かれることはないので、バレないと思うのだけど、やっぱり五十嵐くんが不安になるようなものなら、はじめから無かった方がいいのではと首を傾げて畝ってしまう。
毎日、五十嵐くんとセックスが出来ればいいのだが、俺から誘うなんて恐れ多いことは出来ないし発情期の猿だとバレてしまうのが怖くていない。それに、彼がしたいときにだけするっていうような関係がベストだと思っている。ヤりたくない時に、我慢してやってもらうとか、恐れ多い。五十嵐くんに無理に勃起してもらうとか。俺がもっと色気あれば別かも知れないけど。うん、やっぱり無理かな。
とにかく、セックスなんてどうでも良いという自分から、反動のように、五十嵐くんといやらしいことしたい! と考えるようになった発情期がはやく過ぎ去ってくれることを祈るばかりであるが、もう一年以上続いているので、俺の精液が枯れる方が近いかもしれない。



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