煌が痛めつけられているのを眺めているのは佩芳にとって気持ちよかった。


遠征の任務が入ると佩芳は煌と組まされることが多い。誰と組むことになっても、佩芳がやるべき仕事内容は変わらないのだが上の方は煌と組ませたがった。
おそらく、利害の一致。
佩芳と仕事をすると精神を病む人間も多かれ少なかれいる。特にマフィアという肩書だけに惹かれてやってきた、組に所属する末端のものなど、佩芳は仲間と見ていないので、彼らが死のうか泣こうか喚こうか関係なかった。
お世辞にも佩芳の殺し方は綺麗とは言い難い。肉を真っ二つに割る様に拳で殺されてしまう。新幹線に轢かれた人体が粉砕するように、佩芳が拳を放つとぱぁんという音も立たずに人肉が飛び散る。拳一つにすべてをかけているようなスポーツマン精神ではないので、好き勝手に武器も利用する。彼は効率が良い殺し方を行っているに過ぎない。
そんな光景を目の前で見せられて精神が崩壊してしまうものは多数いるので、一度遠征に行ったあとでも佩芳のことを脅えずに果敢に挑んでくる煌と組ませたがる。これが、佩芳側の理由。
煌側の理由として、彼は基本的に上層部から信頼を得ていない。煌がどうだとかいう問題ではなく、貰われっこというのは、ある程度の役職につき、血の盟約を結んだあとの人間しか信用してもらえないのだ。そして、煌の殺し方は雑だ。
未熟が目立つと言った方が良いのかも知れない。必死になって相手を殺しにかかるので、冷静に動けるはずの頭脳が機能しない場合が多い。殺すということを得意としていないのだということが一目でわかるし、消耗した体力で暴走しかねないので、自然と煌が暴走したり裏切ったりしても止められる人物が選ばれることになる。
一致した条件の中で、二人は良く組まされていた。

今回の作戦は組から出た裏切り者を処罰するという、殺しの任務において最も過酷でやりずらいものだった。組に忠誠を誓っている人間ならなおのこと。本来なら中間管理職が筆頭に立ち、虐殺をおこなうのだが、困ったことに中間管理職からも裏切り者が出てしまった。
そこで駆り出されたのが王家に所属する佩芳と中間管理職では下っ端に位置する煌だった。金のために煌がどんな任務でも行うことが有名であったし、佩芳は生きていることが組と共にある様な男であったからだ。また、皆はいわずとも知っていた。佩芳が元は仲間だとかいうことで、裏切者に情けをかけたり憐憫の情を抱くことがないような男だということを。

立案された作戦は下っ端である煌が鉄砲玉要員として切り込んでいって、そこを佩芳が仕留めるというものだった。口に出したとき、煌は嫌そうに眉を顰めたが金額を耳元で呟くと暗器を握りしめた。
真正面から挑んでいく煌を佩芳は向かい側のビルから目を細めながら見ていた。
大人数から攻められている煌の顔は必至を絵に描いたようで、凌辱されている女を見ているような気分になった。金を巻き上げる風俗店で、輪姦をメインとしている店が何個かある。女たちは複数の男に襲われてヴァギナを見せ淫らに善がり、痛い痛いと言いながら狂っていくのだが、このまま、ここで傍観していれば煌も同じような目に合うんじゃないかと思うと心が弾んだ。
もっと興奮したのは、煌の不法を聞いたギーゼルベルトが真っ白な実力を燻らせている眼差しを絶望の色に変えて、向き合えない現実を目にして泣き腫らす姿が脳裏に浮かんだ時だった。あのおままごとが終焉を迎え、わ――わ――泣きじゃくるギーゼルベルトを見られるのかと思うと、心の中がスカットした。まるで薬でも決めたような気分だ。

そうこう、観覧していると、本当に煌が体中を傷だらけにして、自分がくることを待っている様子が見えた。組の命令なので、失敗することは許されない。趣味の範囲なら、眺めている方がどうやら楽しそうだったので、みていたかも知れないが、私用で動いているわけではないのでしょうがない。
大事なのはどう効率よくやるかだ。自分が楽しめればもっと良い。

「さてと。しょうがないなぁ」

まだまだ煌は弱いなぁと佩芳は煌の肩を霞めるようにして、銃弾を敵対する人間へ放った。動いていようと適格に銃弾を撃ち込むスナイパーとしての腕に、おおやっぱり俺って凄いじゃん、なんて独り言をつぶやきながら、空になった銃をビルに置き、大方死体になった敵地へと乗り込む。
佩芳の顔を見た時に、裏切者の顔は青ざめた。楽に死ねるなんてことは始めから想定していなかったが、予想外に嫌な相手にあたってしまったのだろう。
しょうがない、しょうがない。
これもお前さんの人生だよ。組を裏切るなんて馬鹿な真似をするからと、今日来る前に聞いていた、Jennifer Lopezを陽気に歌いながら、肉体を破壊した。




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