君の顔がぐちゃぐちゃになっても、僕は君のことが好きだろうというと、嘘をつくなと言う顔でジルは僕を見てきた。
人工的な睫毛が、ばさばさと僕だけを見てきている。ジルは僕が本を読んでいるというのに、膝上に顔を乗せているので、美しい顔だけが、僕を主張するかのように、見てきた。
疑ってかかる、瞳が腹立つので、鼻を引っ張てやる。ご自慢の高い鼻が歪んで痛そうだ。
お前は忘れたのかと、ジルを見る。事故にあい顔面の皮膚が焼け落ちたお前のことを、僕が愛していたことを。睨むと冗談だよぉと、蕩けた口調で媚びてきた。僕に媚びる才能の塊。
才能といえば、以前つぐみが「慈雨くんは、僕が凡人でも愛してくれただろうか。きっと愛してくれなかっただろう」と酷く卑屈なことを呟いていたな。僕からして見れば、考えても仕方ないことで不安になるなという所だが、まぁ、気持ちは分からなくもない。
ジルは僕が幼馴染ではなく、クラス委員のただの黒沼充葉なら、好きにならなかっただろうと確信していた時もあった。もし、を考え初めるとキリがない。不安の材料なんてものは、何処にでも転がっているのだから。
僕だって、ジルに才能がなければ好きになっていたかどうかなど、分からないのだ。今は好きだと言える。ジルがどういうやつで、僕にとってどんな立ち位置にいるのかを知っているからな。

だから、僕はこういうのさ。

例えお前の才能が無くなっても愛してい
るさと。今の僕はお前を愛してしまったから。一番愛しい顔がぐちゃぐちゃになったって、お前を愛していたんだから。と。三文映画のようにね。
するとジルは確実に泣きそうな顔をする。充葉と腰に手を伸ばして、顔を股間に埋めて正直な身体は僕を欲しがるだろう。
機嫌をとるかのように。

まあ、僕がこんな風にお前に恐ろしい話しをわざわざするなんて、甘えさせてくれと、言っているようなものなのだ。素直にセックスしようとも、誘えるのだが、甘やかされることと、肉欲を解消するだけのセックスは違うからね。
見抜かれているので、ジルはキスをしてくる。蕩けるような僕としかしないのに、無駄に上手いキスをしてくれる。
キスをするとあとは早い。正直だが、性根が腐り落ちている僕という恋人を相手にしながら、面倒だなぁというオーラを僅かに放つ。キスをしていると、僕の唾液を吸い取るように、ジルの耳朶さえ、紅くなっていく。
愛しているという、証明のように抱いてくれ。



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