0036月、湿気に包まれて熱い。つーか、汗かく。うぜぇ。 外に出たくないと、繋がる。 だから、今、紀一に買い物に行かせている。外に出たくないけど、いきなり、マックフリーリーが食べたくなったから仕方ない。俺の家に来て、小難しい経済書をなんかを読んでいた罰だ。本読むなら俺の家に来るなよ。紀一のマンションの方が、こんな小汚いアパートより、涼しいだろうし。来る意味が理解出来ねぇ。ま、俺も、そのときテレビゲームしてたけど。相手しねぇのは何時ものことだし。けど、紀一が、俺が居るのに、俺以外を見ていると苛立つ。だから、罰。ここから、マックは三〇分以上歩かなきゃないけど。俺が風呂からあがる前に買ってこいって命令だ。走れ。 と、言うわけで、俺は今、風呂に入っているわけだ。少し早い時間帯だけど、気にしない。一人暮らしの気軽な大学生なんてそんなもんだ。いつ風呂入っても口煩いババァはいねぇし…… 紀一は俺の母親のあの口煩さが好きだというのだから、理解出来ない。 「あー癒される。風呂あがったらフルーリーだしなぁ」 「ふふ、ねぇ健太、紀一さんも癒してよ」 独り言に反応されて思わず後ずさる。浴槽に浸かった状態だったので。蛇口に後頭部をぶつけてしまい、痛い。マジ痛てぇ。くそ、おい、突然、声かけるなよ。 「紀一、入ってくるな。しかも、真ッ裸で」 「お風呂は裸で入るものだよ、健太」 「いや、そりゃ、そうだけど」 「でしょう」 「あ、え、う……それより! なんでお前、居るんだよ! フリーリーは!」 「安心してよ、紀一さんちゃんと買ってきたから。あのね、バイク使ったら直ぐだったよ」 「バ、バイクとか! 反則じゃねぇか」 「だって、紀一さん、歩いて買いに行けって聞いてないから、ね、健太」 上げ足とるように、紀一は淡々と喋ると、湯船に浸かる。男、二人でこの浴槽に入るのは無理があるだろうって言ってやりてぇ。お湯、溢れてるし。もったいない。あと、狭い。癒し所じゃない。苦痛でしかないだろ、この密着は。 「おい、紀一、離れろよ」 腕を使用して紀一の頬を押し、離れさせようとするが、逆に手首を強い力で握られてしまう。痛い。文句を言おうと顔をあげると、厭らしい発情した表情をした紀一がそこに居た。 伊達に長年、一緒にいたわけじゃない。この性欲が猿並の木野紀一という男が、セックスすると決めた表情だということが一目で判る。あ、てか、入ってきたときから、やる気だったんじゃね? 「き、紀一!」 「けーんた。紀一さんね、凄く、癒されたいんだぁ。健太に。それに、ね、紀一さんは思うんだけど、お風呂でのセックスも良いよね」 「したことねぇよ! 知るか! 滅びろ! 糞野郎が!」 「じゃあ、教えてあげる」 教えて貰わなくても結構だと首を振っていたのだが、紀一には通用せずに、強引に口づけされた。性的なこと以外では従順なのに、性的なことが絡むと、聞く耳すら持たない。 紀一からは、マックフルーリーを買いに行く最中、飴玉を舐めていたのだろう。化学物質特有の甘い、味がする。 「――んっ」 「健太、可愛い」 歯茎を舐められたかと思うと舌を甘噛された。深い口づけが終わると、次に待っていたのは軽い、キスの雨。あ、力、抜けてくる。 やる気になった方が楽しいし。意固地に成り過ぎて、強引に快楽を呼び起こされるより、やる気になった方が自我が保てるかも知れない。よし。 「紀一」 「なに、健太?」 「浴槽じゃ狭いから、外、でろ。洗い場……そこでだったら、してやってもいい」 俺にしては最高峰の譲歩を見せると、紀一は暫く悩んだ後、良いことを思いついたというような顔つきになり、俺をお姫様抱っこして、浴槽から洗い場へ場所を映した。 俺をタイルの上へ下ろすと「ちょっと待っててね、健太」と述べ、洗面所へと繋がる扉を開け、洗面台の下を探っていたかと思うと、何か手に取り、こちらへ戻ってきた。なんだ、あれ。 「ねぇ、健太。どうせだったら、これ使おうよ」 「なにそれ」 「健太っ! 知らないなんて、ピュアだねぇ。紀一さん、おもわず感動しちゃったよ」 「だから!」 「あのね、スケベ椅子って言うんだよ。これだと、おチンチンもしっかり洗えるね。椅子に座った状態で後ろから突いてあげるからね、紀一さんが」 「な、なに、使おうとしてんだ、てめぇ!」 全裸のままで紀一の頭を殴ろうとする姿は傍から見たら間抜けだが、気にしない。風呂場だ、風呂場。つーか、紀一の野郎が悪いだろ。間抜けな面して、スケベ椅子なんてもの両手に抱えているのに、美形だからか、誤魔化されている。イラつく。顔だけで上手くいく世の中だと勘違いするなよ。 「一回、承諾してくれたでしょう、健太」 「それとこれとは、話が違う」 「普通のセックスだと思ってたの? 甘いよ、健太。紀一さんがせっかくお風呂っていう素敵なスチュエーションで普通にセックスするわけがないじゃない」 「正論みたいに言うんじゃねぇ!」 怒鳴っていたら紀一は、にっこりと笑みを漏らして、俺の腕を掴み、身体を宙に浮かせるように、再びお姫様抱っこする。スケベ椅子は先ほど、俺が座らされていた場所に設置されていた。何時の間に……―― 足をばたつかせて暴れるが、効果はなく、無理矢理、スケベ椅子に座らされる。 「――んっ」 油断したらまた、キスされて、後ろからペニスを握られ揉まれた。プラスチックの椅子があたり、通常じゃ信じられない所から手が伸びてくる。先端を爪で弄られ、尿道から我慢汁が漏れる。湯船につかりリラックスした筈の身体が、硬くなった。 「っ、離しやがれっ」 「気持ちいい健太? 通常じゃ考えられないところから刺激されるからいいでしょ」 「くそっ」 儚い抗いを繰り返していると、乳輪を触られ、乳首を摘ままれる。爪で、ぎりっと引っ掻いたかと思うと、指の腹で押し潰されて、声が出た。 「ひゃっあ、ぐっ」 「乳首好きだよねー健太」 「誰のっせいだと!!」 「紀一さんのせいだよね。知ってるよ」 「だったら、黙ってろ!」 「はーい」 返事だけは本当に良いなお前! せっかくやる気になっていたのに、反抗心が芽生えてきて、嬌声が漏れるのを阻止するべき、両手で口を塞ぐ。 ざまぁ見ろ! と良い気になった俺だが、紀一は気にすることなく、指の責めは止まない。指の腹で擦ったかと思えば、がりっと爪で引っ掻きを繰り返す。 「っ――ぁっ」 「我慢している健太も可愛いなぁ」 「くそっ黙れっっ―――んっぁ」 乳首をトントンと叩いた後、敏感になっているのを狙い、中指と親指でぐいっと捻る。 「っ――あ、ひゃ!」 「思わず漏れちゃって、可愛い」 「可愛いとかっ、脳味噌腐ってんのか!」 「腐ってないよ。紀一さんは正常に動いているもの」 「動いてる、っあ!」 「あ、もう片方も触られて、反応しちゃったんだね」 「うるせっ――」 触られていないのに、ぷくりと膨らんだもう片方の乳首を捻る。乳輪をふわっと撫でたかと思うと、痛みに近い刺激を与えられ、身体が跳ねる。 座らされたスケベ椅子ががたんと揺れた。 「椅子が跳ねるくらいなんて、健太、本当に敏感だね」 「だからっ――あぁ、ひゃぁっぐっ」 「うん、判ってるよ。紀一さんのせい、なんでしょう」 「判ってるなら、やめっ」 「そのお願いは聞けないなぁ。それに、健太のここも、勃ってるしさ」 目ざとい野郎だ。 大体、敏感でしっかりと性感帯に成長させられた、乳首を触られて勃たないわけがない。あと、忘れんな。乳首弄る前は、ペニス弄くっていただろう、お前。 「ねぇ、健太」 「はっ――なんだよ」 「お風呂って言えば、鏡プレイと、シャワー責めだよね」 「は?」 性的な顔つきで笑みを浮かべると紀一はシャワーを持ち、俺へと近づけた。 ちょ、ふざけるなよ。しかも、鏡、とか。この曇って役に立たない鏡の結露をシャワーで取ろうとか、考えるなよ! 「お前、止めろ!」 「せっかくだから、ね」 何が、せっかくだ、せっかく、と言いたくなるが、紀一はシャワーの蛇口を捻り、水を俺へぶちまけた後、鏡に向かって、水をかけた。今まで、ぼやけて、曖昧な姿しか捉えていなかった鏡がクリアに俺たちを映す。 全裸で、スケベ椅子に座らされて、ペニスは完勃ちの自分の姿が見え、ペニスだけでも隠そうと、女子みたいに内またの体勢にさせようとするが、入り込んできた手が、スルりと阻止する。き、紀一、畜生がっ 「だーめ」 「いやっ、やだって、やめろよ」 「折角だから、健太も楽しもうよ」 「だから、俺は楽しくっひゃぁあ、あぁぐぁっっ!!」 ペニスに紀一の手が触れたかと思うと、太股を押しいるように、シャワーが入ってきて、俺のペニスに押し当てる。 「ひゃぁぁぁぁ」 シャワーから放出される細かい粒になった水は俺のペニスを責め立てる。亀頭を責めていたのに、紀一が、面白いことを考え着いたというように、ペニスの根元を掴み、俺をイけないようにしてから、尿道にシャワーを押し当てた。 「んあ、な、ぁああああっあっあっん!!」 「シャワー、当たって良いでしょう?」 「あぁっああひふっあぁぁっあっあっ!」 「詮って所かなぁ。健太、これでイけないね」 「ひっあ、もう、やめっ、白くなる、イっちまうから」 「うーん、健太、限界?」 シャワーや紀一の手から逃れようにも、椅子に座らせられているために、腰が動かない。乳首を弄られていた時みたいに、椅子ごと動けばいいのに、それを拒絶するように、紀一が俺の太股に肘を乗せている。 「げっげんかいっだって」 「本当に?」 「もっ駄目っみずっみず入ってきてる、だろっがぁ!」 「えーじゃあ、アナルにシャワー入れちゃう? 紀一さん、それも楽しいと思うよ」 「たっ楽しくないっやだ、嫌だ、それだけは、いやっ」 「えー」 「ひゃぁぁぁああ、あぐ! あっあっあっ!」 アナルにシャワーが入る所を想定して、首を奮う。快感と、恐怖で身体が震える。嫌だ、絶対にそれだけは。そ、そんなこと、したら、許さねぇからっな! 「いやっひゃぁぁっあっやっやめて」 「真剣に嫌?」 「嫌って言ってんだろっ 紀一っ!」 思いっきり叫ぶ。今更ながら、風呂場は反響して、自分の喘ぎ声がいつもより大きく感じる。体温が高騰して、シャワーの冷たさが余計な刺激を与える。 「しょうがないなぁ、健太が嫌なら辞めてあげる」 「あっひゃっあ! あぁぁぁん! あっあぁぁぁっあ!」 言い放つと紀一はペニスを握っていた手を離し、尿道にシャワーを押し当てる。堰きとめるモノが水だけになり、射精してしまう。 「いやっシャワーとめろっ」 「それは、聞けないなぁ。ねぇ、健太、鏡に注目して見てよ。ね、感じている可愛い健太の姿、丸わかりだから」 「ひっいやっだっ見たくねっっあっひゃぁぁぁっあ!」 達したばかりの敏感な身体にシャワーを変わらず押し付けられ、陰嚢と竿の当たりを今度は責められる。 半分目を閉じていたのに、鏡に注目させるように、一言加え、俺が目を閉じることを否定した。きっと、見なければ、シャワーをアナルに突っ込まれる。それだけは嫌で、目を開けると、鏡に映る、自分の痴態。 「ひっあ、あぐ、あっあっあっひゃぁっあぐ、あ、いやっ、自分が気持ち悪いっ!」 「可愛いのに。紀一さん大興奮なんだよ。健太、の乱れている姿みて、紀一さんのペニスが大反応しているの判るでしょ?」 「ひゃっ! あっあっ! 押し付けてんじゃっね!」 巨大で細長い紀一のペニスが俺の背中に当たる。スケベ椅子の効果を発揮するときと言わんばかりに、椅子に座りながらにして丸出しなアナルの穴を、シャワーを握っていない手で弄くってくる。 「あっ! ひゃぁっ あっあああぁんあぐっあ!」 「二本するっと入っちゃったね。我慢汁かシャワーか判らないけど、濡れてくれて良かったね、健太」 「よくっねっぁっ!!」 「けど、ね。これで、紀一さんの入るよ」 陰嚢にシャワーを押し当てたまま、ぐるぐると回る精巣を無視して、紀一は、俺のアナルにペニスを押し当て、一気にずるっと入り込む。 「あっ! あぐっ あっあああぁんあぐっあっひゃぁっああ゛あ゛ぁぁぁ!」 「合体だね」 ☆マークが語尾につきそうな台詞を吐く。どこで、知った。俗物的なその台詞! いつもだったら、怒ってやるけど、入れられただけで達してしまった身体には、口に出す気力はなく、喘ぎ声だけが、反響する。 どびゅっと精液が飛び出し、鏡に付着する。 「えろえろだね、健太」 「はぁっ、うるせぇっ」 肩で息をする。熱い。意識が朦朧となる。これは、やばい。完全にのぼせた。 ぐっとペニスを抜かれ、喜々とした紀一のイラつく顔を見て、視界が真っ白になった。 目が覚める。 紀一が俺の顔を団扇で煽り風を送っている。 「のぼせちゃったね、健太」 「てめぇのせいだろうが」 まだ気だるい身体で紀一を打ん殴る。衣服が着せられているだけで、今日はもうセックスする気が無いとわかり安堵の息を落す。 「フルーリー」 「あ、ここにあるよ」 「もう一つ、俺がこれ、食べ終わるまでに買ってこい」 反論は許さないとばかりに、睨むと、紀一は俺の頬っぺたにキスをすると立ち上がり、真っすぐフルーリーを買いに行った。 あーやっぱり、美味しい。フルーリー。 |