アレックスとニキータ | ナノ




「アレックス、君はコンプレックスで潰されるようなことはないの」
「ないな。俺はアレックス・アレキサンダーだぞ」
「アレックス、君はどうして強くいられるの」
「俺がアレックスだからだ」
「アレックス、君はどうして他者を平気で踏みつぶせるの」
「俺がアレックスだからだ」
「アレックス、君はどうしていつも自信満々なの」
「俺がアレックスだからだ」
「アレックス、君はどうして僕たちに優しくしてくれるの」
「お前たちがアレックス・アレキサンダーに認められた人間だからだ」
「アレックス、僕は今でも天使だろうか」
「馬鹿か。お前がエンジェルでなかった時なんてねぇよ。それが他の男の手に渡ってもな」
「アレックス、僕は今、幸せそうだろうか」
「俺に雑談をしにくる余裕があるくらい幸せじゃねぇのか。昔のお前は悩みだって、自分のコンプレックスだって、弱さだって、自身の無さだって、人を傷つけることに嫌気がさしたって俺に相談さえしてこなかった。察して欲しそうな目を向けていたばかりじゃねぇか。口があって動いて、俺にこんなくだらねぇことを話せるんだったら、そりゃぁお前は幸せだろう」
「そうなんだろうか」
「そうだよ」
「だったらアレックス。僕がこんな風に話しに来るのは嫌じゃない? うざくない?」
「ウザい。けど、嫌じゃねぇ」
「どうして」
「さっき、答えた」
「さっきって何」
「お前がニキータだからだ」
「もう五大貴族じゃない。僕はただのニキータだ」
「五大貴族じゃなくても、お前はニキータだ。ニキータであることに変わりない。そもそも、お綺麗な血を重視するんだったらお前みてぇな出生の人間は捨てている」
「それは君が不正を許せない高貴な紳士階級だからだ」
「そうかもな。けど、血は気に入っている」
「君は女王が好きだからだ」
「そうかもな。けど、お前が結婚してからは、イギリス社会と関わり合いが無くなったテメェを捨てることも俺にはできた。国のことを思うのなら、アメリカのクソ野郎に尻尾振った阿呆は捨てるべきなんだろうが、お前は捨てられなかった意味が分かるか」
「察することは出来ないよ。言葉で教えて」
「甘えただな。いいか、お前は俺の所有物だ。結婚しようと、変わらない。わかるか、俺がお前を気に入っている。ただ、それだけだ。言葉にしないと不安だったら何度でも教えてやるよ」
「そう、ただそれだけで君はこんな意味不明な話をしに会社まで押しかける僕のことを許してくれるのか」
「そうだ。お前がニキータであるからだ。わかったか。わかったら本題に入れ」
「本題。どうしてわかったの」
「回りくどいのはお前の癖だ」
「うん。ねぇ、アレックス、喧嘩したんだ。オズと。酷い言葉を言われたから慰めてよ。彼は酷いんだ。君とは違う。例えば君はどんなに口が悪くて強引で好き放題やる所があっても、最終的に今のように僕を気遣って、言葉の裏側に優しさがあるんだけど。オズにはないんだ。オズのいうことはいつも平等で、僕に対する愛情なんてもの、これっぽっちもないのさ。酷いと思わない? ぼ、僕はこんなにも彼のことが好きなのに。彼は僕のことなんてどうでも良いっていう態度を簡単にとってくるんだよ。しかも、言い返すんだ。僕が癇癪を起した言葉に彼もムキになって。酷いじゃないか、ぼ、僕は」
「それでもお前はアイツが好きなんだろう」
「うん」
「けろっとした顔するなよ、テメェは。まぁ、吐き出してすっきりしたか」
「うん。ありがとうアレックス」
「良いって。気にすんな」
「また変わりにエアの話でも聞いておくよ」
「助かる。ほら、迎えがきたみたいだぜ」
「オズかな。オズだったら良いな。じゃあね、アレックス」
「お――世話がかかるな」







「なぁなぁ、アレックス」
「なんだよ、次はお前か。ティガ」
「え、なんだよ。お、茶が入ってるってことはニキータがきてたのか? だったらもっと早くくれば良かったぜ。それより春子がな」
「あと数分待て。書類を仕上げる」



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