ジョンと雄山 | ナノ




雄山はけして博愛主義者ではない。彼のなかにある正義に反する行動をとる人間を嫌うし、自分のなかにある見栄と闘いながら他人を簡単に嫌うことだってある。何処にでもいる平凡を絵に描いたような人間なのだが、他とは違うところは彼が一度嫌いになった人間を受け入れ愛することが出来るという所だとジョンは思っている。
あと、意外と視野が広い。広くなったという言い方が正しいが、中国での監禁生活を得て、自分の下につく人間を巧みな言葉で先導して従わせる技術を持っていた。タラシだとジョンが思うところである。
雄山の言葉に嘘はあまり存在しない。だから、雄山の下につく人間の心に響くのだ。頭も雄山が気にしているほど悪くない。努力家なので、経験を積めば立派な頭に成長するだろう。裏世界を牛耳るには多少、優しすぎるが、覚悟を決めればどこまでも非道になる一面を持っていることだって知っている。
親しくなればなるほど、彼は見栄を張るのを止め、下らない嘘をつかなくなる。だから親しい人間に対しての方が言葉が粗雑になり、態度も適当になっていくが、雄山のその態度を甘えだと気付いているのは、おそらく自分だけだろうとジョンは自負していた。なぜなら、雄山はジョンの横でしか、瞼を閉じて凭れかかりながら眠るということはしないし、あれ食べたくない、外に出たくない、勉強を今日はしたくねぇーーなんて弱りきった態度を見せないからだ。彼の山のように高いプライドが見栄と重なりあい邪魔をしており、ジョンの横にいる時だけ、疲れたから抱き締めてくれ、なんて甘く子どもらしい可愛いお願いをしてくるのだ。
甘えてくる雄山を抱き締めると、雄山は瞼を閉じてすぐに寝る。勉強は明日、倍するし、家事も担当変わるという言葉を言い残して。別に家事くらいやってやっても良いし、一日くらい勉強をサボった所で雄山の成績なら問題ないのだが、彼のこういった妥協を自己に許さない窮屈そうな性格も嫌いじゃない。
明日は早く起こしてやろうとジョンも雄山を抱き締めながら瞼を閉じると、ふと高峰の顔が過った。高峰の前で雄山のことを話したことなど、落ち着いてから滅多にないのだが「お前はその餓鬼のことを実の子どものように愛しているな」と言われ、驚いた。確かに子どもに向ける愛情と似ているような気がする。けど高峰との子どもも、また別の意味で欲しいのだという気持ちを打ち上げられずにいると、高峰は見抜いたように「子どもは三人は欲しいなぁ」と呑気な声を出した。
しかし、ジョンが世界で大切だと思っている人間は高峰と雄山だけなのだが、以前、高峰は「お前は俺に出会うために生きてきた」と言っていたが、では雄山とはどうなのだろうか? という疑問が生まれた。高峰は超能力でも持っているかのように、ジョンの疑問を察しとり、口角をあげた。

『人生には出会うべき人間が三人はいると言われていて、一人はもちろん俺でもう一人が雄山だったんだろ』

といわれた。生まれてきた意味ではないが、出会ったら幸せになれる相手なんでしょ? と高峰が補足をつけてきたので、なんだか泣きそうになって絶えた。

『ちょっと待てよ、じゃあもう一人いるってことになるんじゃ』

ジョンは、これ以上、出会うべき人間など、いらないのに、と吐き捨てると、高峰は溜め息を吐き出し呆れた顔でこちらを見た。

『三人目は俺たちの子どもに決まっているでしょう』

絵にかいたような幸せの形を邪魔するのかと、高峰は呟いて、立ち上がるとジョンの唇に口づけをした。ジョンは本当に俺はこいつに出会うために生まれてきて、神様が今までの境遇から与えてくれた幸福なのだと、高峰という神様に感謝をした。






ジョンは目を覚ます。雄山はまだ寝ていた。朝食を作ってから彼を起こそう。雄山は幸せそうに笑い、照れながら例を述べる。朝のジョギングに付き合って、シャワーを浴びて学校に着いていく。

「おはよう、ジョン。お前、なにか良いことでもあったのか?」


目覚めた雄山が告げる。
生きていることが良いことだとジョンは思ったが、なにも告げず「良い夢を見たんだ」と溢した。
日々が夢のなかにいるよう時間だ。


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