高峰とジョン | ナノ





吹き抜けの大きな寝室で高峰は目を覚ました。天窓から燦々としか光が入り込んでくる。部屋の角には巨大な大人5人以上が寝転べるベッドが設置されてある。太陽の光が自動的に浴びれる仕組みになる。天窓の開封はリモコンひとつで出来るが、書斎となっているロフトから、天窓を伝い屋上にまで登ることも出来る。
脱ぎ捨てていた皺くちゃの衣服に目を落としたが、どうせもう一度、服を脱ぐような行為をする予定なのだと服を足で蹴った。
毎朝、新鮮な水が補充されている、寝室に置かれた小さな冷蔵庫からペットボトルを取り出すと喉に水分を補給する。
冷えたペットボトルを持ちながら、ベッドに腰掛けると全裸でベッドに寝ているジョンの皮膚に指先を触れる。綺麗に割れた腹筋に指先を這わし、窪んでいるあばら骨に触る。自分ほど美しい人間を高峰は見たことないがジョンの鍛え上げられた身体は気に入っている。肌を観察するように眺め、鎖骨の皮を引っ張る。起きてしまっても構わない。どうせ高峰が一番始めに触れた時からベッドで狸寝入りを決め込んでいるだけだ。
ジョンの身体には傷跡がいくらも残されている。起きている時に観察すると、両想いでない時は「見ても綺麗なもんじゃねぇぞ」といって皮膚を明かさなかったし、両想いになってからは小さく「ヤメロ」と呟くので観察出来るのは狸寝入りを決め込んでいる時だけだ。
高峰はジョンの傷跡が嫌いではなかった。良く観察すれば模様のようであるし、銃弾が貫通した痕など、雫が乳液のなかで羽上がった瞬間を捉えた映像のようで好ましい。
それに、彼が今まで残してきた功績の証かと思うと微笑ましい。しょせん、自分以外の人間は生まれた時から何らの障害を抱えながら生きているが、ジョンが苦難の中を強い生きる意思と共に駆け抜いてきたのかと思うと愛しい。
皮膚を爪で引っ掻くようになぞると、痛かったのか狸寝入りを止め、声を出した。

「痛い、ヤメロ」
「ふふ、嫌だ」

天窓から差し込む光が手伝い高峰の身体がきらきら光なかで微笑む。天使のような美しさだ。

「なに笑ってんだ?」
「いや、ジョンは俺に出会えて幸せだねぇって。俺に出会うため、生きてきて、頑張った御褒美が与えられたんだろうなぁって」

さらさら、当然のことだと高峰は吐き出す。ジョンは瞬きをするのを止め、固まってしまった。高峰の行動はやはり読めない。ある程度の人間なら、ああ言えば激怒する、今はなにを考えているかが長年の知恵で読めるようになっていたが、高峰のような人間には生まれてこのかた出会ったことがない。

「普通、自分で言わなくない?」
「俺だから良いんだよ。知らなかったの?」

高峰はペットボトルの蓋をあけて口に含むと、そのままジョンに口付けをする。緩くなった唾液を孕んだ水分がジョンの咥内に注ぎ込まれた。
枕にジョンの後頭部を押し付けると、喉仏が動くのを確認して顔を離した。
惚けた顔はしていないが、伸びた下半身に手をだして掴むとすでに勃起していた。乗り気でない時、快楽が表情に出にくいのがジョンの可愛くない所だが、下半身は素直だ。


「勃起してる」
「生理現象だ」
「俺はやる気だから、ごめんね」

悪いと一ミリも思っていないのに、謝罪してみる。
高峰がやると宣言してからジョンが否定することは、殆どない。否定など無駄であるし、完璧とも言えるこの男の顔が歪むのを見ているのは幸福だ。
高峰が人差し指を伸ばす。コンドームを利用したセックスが嫌いな高峰はいつも中に精液を吐き出す。昨晩の後で精液はまだジョンのなかにあった。

「ぬるぬるしてるから、インするね」
「もうちょっと言い方なかったの」
「我が儘だなぁ。俺の言葉が聞けるんだったらなんでも良いだろう」

自信満々に吐き出されて、陰茎を入れられる。肉壁を割くように、形を覚えてしまった後孔はにゅるにゅる高峰の一物を受け入れた。ぴったりと無くしていた形を埋めるように収まると、見詰められるだけで達してしまいそうな、熱い眼差しをした高峰がジョンに微笑んだ。


「んっぁーっあ、高峰、そこいいぜぇ」
「うん知ってぜ。全部覚えてるからな」

恐ろしいことに高峰はどの角度でジョンを突けば達するか、どこをどう弄れば反応するかを全て覚えていた。だいたいここ辺りだったよな、という曖昧さではなく、数字のように記録されていた。

「ああ、ジョン。お前の傷跡にキスするから」
「はぁぁんっぁ、なんで、だよ、きたない」
「お前が俺に出会っちゃったからじゃない?」


ジョンの傷跡は美しい。彼が生きてきた証のようだ。それでも自分以外の人間が彼の身体に居座っているのは、放置出来ない。
つんざきながら、銃口で焼かれた皮膚に脣を伸ばし、果てた。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -