いろんなこ | ナノ




小椋美琴の場合

え――卑屈にならん方法やって。俺、別に卑屈にならんわけやないんやけど。ああ、あの家庭環境と幼馴染たちで良く「黒沼充葉」みたく卑屈と僻み根性丸出しにならんかったって。誰やねんそれ。俺知らん人やねんけど黒沼、オーデルいうたら有名な企業やし、そこらへんの関係者なんかな。
まぁ、確かに俺の兄貴は世界で一番輝きを放ってるいうても過言やないほど魅力的な人物やし、母親はこの世の母親グランプリに出たら優勝できるくらい美しいし、親父は顔はそりゃぁ冴えへんけど、堅実な仕事っぷりと兄貴顔負けの頭脳でばりばり仕事して家庭にも気を配れる出来た父親やなぁ。幼馴染の輝彦も我儘でどうしようもない所あるけれど、自分に厳しいし、好きなことには一直線やし、あの頭脳と持ち前の能力で努力もしやはるさかい、かなわへんなぁって思う所も多々あるし、顔もええし、周囲にこんな優良物件がそろっておったら、卑屈になって自己評価が低くなるか勘違いして天狗になるかのどちらかやろうなぁ。
いやぁ、冒頭でもいうたけど、俺だってコンプレックスあったり(顔とか顔とか、あああもっとすっぴんで美しい顔になりたかったわ! 兄貴の「化粧は不細工がするもの。塗っても不細工なのは変わらないのにね」っていう台詞にどつきまわして土の中に埋めたろかい! って憤慨したことも多々ある)落ち込んだり、自分の行動に後悔したこともあるけど、まぁ世間一般的に見れば明るい方とちゃいますか。
せやなぁ、俺が気をつけてるいうたら、周囲の人間を嫌いにならへんことかなぁ。最低な人間なんておらんと思うねん。個性があるんやから。合う、あわへん、ってのは有るやろうけど。苦手やなぁと思うても、どこか一つでも良い所見つけたら卑屈にならへんなぁ。あ――それと、これはあんまオススメしおたらあかんと思うねんけど、俺、悩むの好きやないねん。悩んでて楽しい悩みやったら別やけど。自分が苦しむだけの悩みはまっぴら、ごめんや。悩んでおっても辛いだけで意味ないで。ほんま。人生、短いねんから損なだけや。
俺、どうせやったら最後、死ぬときに「楽しかった――」って思って死にたいねん。だから、才能の差とか感じても全力でやるし、逃げられるところは逃げるし、わりと快楽主義? なんとちゃうかな。せやから、これが俺の卑屈にならん方法やと思います。
これでええやろか?


春子・ポールの場合

なんだか未だに「ポール」って苗字慣れないのよね。ムズ痒いっていうか。オーデルの名前が捨てきれないってわけじゃなくてね。その、ティガと夫婦になったんだなぁって聞く度に実感して、その、照れるのよ!
あ、コホン。
ずれちゃった、ずれちゃった。なになに「卑屈にならないための方法」へ――それに答えれば良いんだ。うん、確かに卑屈にはならないかも私。卑屈って退屈よね。自分の良い所も、自分に接してくれている人の良いところも、全部、勝手に潰していっちゃうんだから。
別に意識してやっているわけじゃないから、そういわれると困るのよね。あ、ティガに聞いてくるわ。
なになに、え「お前は馬鹿正直に生きてるだろうが」だってさ。なんだか、言い方が気に食わないけど、ティガのいうことであっていると思うわ。
あとね、私が意識していない所で起こっていることだとすれば、それは育ててくれた環境や両親のお蔭だと思うの。私はいっぱい愛情を注いで貰ったので。お母さんやお父さん、おじいちゃんや、おばあちゃんに。正しい愛情を。育てたように子は育つっていうしね。それを知っているから、いつも素直に自分の意見も言えて、悩まないんじゃないかな。卑屈にならない。家族のお蔭かなって思う所も大きいのね。うん、ありがとう。
え、なに、あ――はいはい、今、素直で卑屈にならずにいれるのはティガくんのお蔭でもありますよ。これ言っておけばいいんでしょ。ちょ、ちょっと、首根っこ引っ張らないでよ! 痛いじゃない! ティガの馬鹿、馬鹿! なに、短足のデブ女って、それのどこが関係あるのよ――――!


飯沼透の場合

卑屈にならない方法?
はぁん。こんな質問を投げかけないことじゃない。てか、俺は卑屈だよ。卑屈、卑屈―――他人、嫌いだし、俺より優秀な奴とかねたむ時あるし、祐樹が俺の目の前で(まあ祐樹は紳士なのでこんなミス滅多にしないけどね)他の女を褒めたりしたら卑屈になるよ。死ね、死ね、殺す―――ってね。
え、なんだって。
それ卑屈じゃなくて、心が穢れているだけだって。なんて失礼な。俺の美しい心を見て、良くそんなことが言えるね。殺すぞ。
え、なにそれ、早く言ってよ!
祐樹これ読むの! も――そういうことは事前に言って貰わないと困るんですよ、わかっていますか。て、わけで、さっきの部分は削除ね。ホントに。削除しないと2ちゃんでお前の会社に悪口書きこむし、俺、著名人だから本の中とか雑誌とかで反論するからね。わかった。馬鹿じゃないから、判るだろう。
こほん、仕切り直し。
俺には夫がいるんだけど、その夫が俺を強くさせるの。夫はとっても優しい人でちょっとしたことで意外と傷ついちゃうんだけど俺以外はそんな夫の一面に中々気づかないの。俺はそれを気づいて、夫が胸の中に帰ってきて、ゆっくり愚痴を吐けるような人間でいたいわけ。
それに昔の俺だったら、本当に記者さんがいうような「卑屈」になっちゃっていた事もあったんです。人と関わるの面倒だったし。けど夫と関わって俺は変わったの。変わることが出来たの。まぁ夫周辺の人間に関わるくらいだったら良いかなぁと。俺は夫がいるから昔見たいな「卑屈」にはならないの。俺は夫がいるだけで幸せだから。自然と悩みなんかなくなるの。
俺の夫は不器用な人で、まぁ、そこがカッコいいんだけど、愚痴を言える相手でずっといたいわけ。今は卑屈になっている時間さえ惜しいわけ。いうでしょう。「私の観音様、あなたのおかげで愚痴がいえる」って。俺は夫にとってそういう存在でありたいの。夫が俺にとってそんな存在だからね。大切な人を思えば、卑屈になっている時間なんてないんだよ。

あ、ココまで使ってね。綺麗に編集して、感動的な台詞で書いておいてね。飯沼透さんはそこで一呼吸して、とかそういう表現使ってくれて良いから。お願いね。祐樹きっと感動して泣いて「透――」とか言ってくれるんだろうな。うふ


黒沼聡の場合

え―――インタビューっスか。サッカー関連でもないのに、珍しいスね。
俺が卑屈にならないわけスか? 失礼っスね。落ち込む時もあるんスよ! はは、まぁ冗談ですけど。
卑屈になる奴ってそもそも自分に自信がないんスよ。自分の能力を受け入れられてない証拠スね。お前の能力はこれだけなんだから諦めるか、違う作戦を練れよって感じスよね。あと、卑屈になる奴はたいした努力もしていない奴が多いんスよ。努力したって自分で思っていないからすぐ、卑屈になって、思い込んで、酷い奴は他人を責めるんスよ。愚図っスね。
その前に努力すればって感じス。
記者さんは俺が努力も何もなしにこの地位を手に入れたかと思っているかも知れないんスけど、これでも努力してきたんスよ。だから努力している人には才能がなくても敬意は払うスよ。一応、スポーツマンなんで。
俺が積み重ねてきた努力と比べてみれば、自分自身が卑屈になる必要なんかないスよね。だって、俺自身が自分を一番知っているんスから。恥じる生き方はしてないですスよ。


黒沼ネルの場合

え―――ネルなんて、良くもっと卑屈になりなよ、とか言われちゃう方だよ。
もう聡とかが言っているけど、ネルは自分の正義に恥じる生き方なんてしていないよ。誰かと比べることなんて無意味だし、心の持ちようなんて気合い一つでなんとかなる問題でもあるじゃない。
なに、爽ちゃん。今、仕事中だから口出ししてきちゃダメだよ。「ネル、相変わらずカッコいい、素敵。皆がネルの意見に従うべき。素晴らしい。ネルが卑屈にならないのは、さっきネルがいった通り彼の正義を貫きとおしているからだけど、ネルは昔それで他の人を傷つけるなんてこともしてきたと最近、自覚した(んなの傷つくヤツの方がクズなのに)ので、ネルは努力して歩み寄ろうとしている。ネルの素晴らしさはこの歩み寄る精神にある!」
ちょっと爽ちゃん! やめなさい。
すみません記者さん。うちの嫁が迷惑かけて(うちの嫁発言にときめいているけど、当たり前だけど今夜のセックスはなしだからね)
けど一理あると思います。ネルは今まで自分の正義だけを貫いてきましたけど、最近はもっと広い視野を持たなければいけないと考えています。卑屈になる人間を切り離して正義を押し付けるんじゃなく、なぜ卑屈になるのか、というのを知りたいですね。そういう意味で、この雑誌が発売されるのは参考にさせていただこうと思って、楽しみにしているんです。
何事も自身に恥じない正義と広い視野を持って、今後も前進していきたいと思います。

(ネルが卑屈におならないのは正義厨ってところもあるけど、直向きなまでに前向きに歩もうとするところや、それは悪い所でもあるんだけど、すべての人間を平等に見ている所にあるんだけど、これは俺だけが知っていればいいから言わないでおこう。ネル、好き)


千代・トゥ・オーデルシュヴァングの場合

卑屈!
卑屈ってなんですか!
あ、な、なるほど、辞書によると「必要以上に自分を卑しめて、他にへつらうこと。おどおどしていじけていること。また、そのさま。 」らしいです。勉強になりました。
あのね、それだったら僕はすぐに卑屈になっちゃうよ。落ち込むし、反省もするし、自分ってどうしてこんなに出来ないんだ――ってなるよ。けど、数歩歩いたら忘れちゃうから、仕方ないんだ。どんなことで卑屈になってたっけ――?? と謎で首を傾げちゃうんだ。良くお父さんには「ははは、お前は馬鹿だな――」っていわれるよ。お父さんにはいわれたくないよね! 僕は、少し怒ったよ! 
あ、けど、この辞典に書かれているみたいに、僕はもっともっとこの卑屈さんを引きずることもあるよ。う――んとね、僕には好きな人がいるんだけど、その人とちょっと悲しいことがあった時かな。一日くらい、卑屈さんになってるの。けど、卑屈さんになっても、僕が気持ち良いだけでしょう。そういう気持ちになっている時はね、胸がきゅ――んって痛くて締め付けられるようになって、けど、けどね、ちょっと気持ち良いの。僕はこれ、自分が気持ち良い時間だなぁって思うんだ。
卑屈になる時って自分が可愛いんだ。自分をね、よしよしって可愛がっているだけだったら、誰だって出来ちゃうんだよ。僕だって出来る。あ、いまのも卑屈だね! ちょっと使い方わかったよ。
う――んとね、だから、卑屈さんになっても、自分だけだから、僕の好きな人は幸せになれないの。
僕の好きな人はね、僕にずっと笑っていて欲しいんだって。いつも、僕に悲しんで欲しくないんだって。そう目線がね、なんとなく、なんとなく、だけど、語っているの! 僕はそれを知っているし、僕を喜ばす為に、ゆかりが頑張ってくれているの知っているの。だから、ゆかりのことで卑屈になっている場合じゃ僕はないんだ。僕が卑屈でもゆかりは幸せじゃないんだよ。
いわゆる―――愛だ―――――!!!!


小椋高峰の場合

俺ほど完璧な人間がどうやったら卑屈になれるの?


ラン・トゥ・オーデルシュヴァングの場合

卑屈―――
ヤベーー草生やして会話したい感じだな。
俺ほど人生が成功している人間のどこに卑屈になる要素があるの! 逆に俺はききたい! 俺完璧じゃん!
料理上手で家事をすべてこなして、叱ってくれるときには叱ってくれるお母さん、仕事をこなしつつも定時にはかってきて子どもの意思を尊重してくれるお父さん、そしてなにより可愛い可愛い可愛い俺のおねえちゃん! おねえちゃん! 俺の奥さんだよ。今となtっては。やっべ――あ、写真見る? 絶対に見せてやらねぇけど。無理だけど。ダメだけど。ほんと可愛い。俺のおねえちゃん。
考えてみろよ―――
朝起きたら、この可愛い天使の顔が横にあるの。涎とか垂らしてる。俺、じっと見てる。朝から激しくなってきますね――! ま、させてくれねぇけど。いいの。オナニーでも最高に気持ちが良いから! もう、おねえちゃんと朝から触れ合えるってだけで、一日、数分くらいは耐えられる。
あ――あと、一応、家もお金持ち! 容姿端麗! 眉目秀麗! 運動神経抜群! コミュニケーション能力カンスト! 人間関係良好! どこの、卑屈になる要素があるのか教えて欲しいくらい。
え? 卑屈にならない方法を教えて欲しいって?
そりゃ、さっきいった、家が金持ちで、顔が良くて、頭が良くて、人間関係にも恵まれて、家族仲も良いってことでしょう。これを生まれ持って持っていたらなれるんじゃない。
あ――! おねえちゃん、おねえちゃん! おかえり――! 俺、今日はちゃんと働いたから――!



飯沼初の場合

卑屈にならない方法か。
自分の素直に生きることだな。少なくとも初はそうやって生きてきた。素直に行動して、素直に動く。欲求は通す。まぁ初はグレートマンモスフェアリー並に可愛いから大抵のことは通る。しかし、これは初じゃなくても自分自身に素直になる勇気さえあれば誰だって出来ることだ。お前たちは、自分を良く見せようと、嘘を塗り重ねて、自分自身ではなくなっていき、だから後悔というのをするのだろう。他者の眼を気にするのだから、卑屈になり、俺なんか、と思うのだろう。本当はそんなことないのにな。
初は卑屈にならない。
卑屈になる方法すら知らない。自己反省などアホらしい。
ただ、初はそうやって卑屈になりながら悩んで生きている人間の方が素晴らしいと感じる。まぁ、卑屈卑屈しているだけの人間はクズだがな。空気がもったいないぞ。
人間というのは悩むのを止めたとき、進化を止めるのだ。励む人間は嫌いではない。それが、他者から見てどれだけ滑稽に映ってもな。悩み、落ち込み、それでも前に進むということが出来る能力は初にはないことだ。前に進めるというのなら、卑屈であることを直す必要はない。素晴らしいと称賛を初は送るぞ。


 
ジル・トゥ・オーデルシュヴァングの場合

え、なになに。
オレに聞く? その質問。
えぇん、充葉ぁん、答えろっていうのぉん。そんなぁ。充葉ぁん。
卑屈にならない方法ねぇん、そんなのぉ、充葉がぁんいるからだよぉん。



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