高峰とジョン | ナノ




高峰は椅子に腰かけていた。黙々と金平糖を食べながら考え事をしていた。シズルとアクツが声を張り上げながら、高峰カンパニーの売上高について説明していた。高峰はそれに対して適当な指示を出した。適当だが、聞いているか聞いていないかさえ分からなかった態度からは想像できないほど的確な指示だった。
アクツが金平糖を追加しながら、シズルに「今日はなにを言っても高峰様の耳には届きませんね」と呆れた笑みと慈しみが籠った眼差しで告げた。シズルは「仕方ないさ、高峰くんだから」と呆れ気味にため息を吐き出したにも関わらず咎める声を出したりはしなかった。
高峰は黙々と金平糖を口に運びながら恋人であるジョンについて考えていた。ジョンは高峰が始めて好きになった相手で、童貞を奪われた相手でもあった。
一目惚れだとジョンには告げたが、正直な所、身体の相性が良かったので、後孔の肉壁を包み込むような快楽の虜になったと言った方が正しかった。顔も高峰が身体を差し出しても良いだろうと感じるほどには好みだった。しかしまぁ、始めのうちは「身体だけ」の関係だったのだ。

付き合って行くうちに好きになった、なんてのは綺麗事だ。高峰は今まで、第一印象とそれに連なる能力値で他人のことを評価してきたのだから、ジョンのこともはじめから好きだったのだ。
しかしまぁ、身体へ夢中になっていくうちに心が追い付くように好きになって行った。高峰はジョンのことを可愛らしい奴だと思っていた。
ジョンは高峰から見れば中々に間抜けな奴だった。付き合いだしてから暫くして「アンタ警戒心なさすぎ」とか「これだから日本人は」とか述べていたくせに、その日本人相手に簡単にほだされ、ボディーガードについた高校生(ようするに仕事相手)に心を許し、アクツやシズルと戯れている姿を見ると、間抜けで可愛いと思った。
相反するように惹かれたのは彼のヒストリックな嫉妬心だった。女の膣に自慰行為とも言えるセックスをしていたら、ジョンが扉を割って入ってきて、手持ちの銃で騎乗位をしていた女の脳味噌をぶち飛ばしたのだ。ばぁん、と弾けとぶ脳味噌を見ながら今まで感じたことのない興奮を得た。女の死体をどけて、高峰のチンポに奉仕を始めた。先ほど、女を殺した男が自分に焦がれ舐め出す様子は見ていて、それはそれは面白かった。今までヒストリックに怒鳴りこんで自殺した人間も何人かいたが、小椋高峰という至高の存在を前に所有欲を丸出しにして他者を蹴散らしてやろう、という欲望にまみれた人間を見るのは始めてで、可愛いと笑みを漏らした。
ああ、それに高峰はジョンの仕事にかけるプライドの高さも気にいっていた。彼の仕事は素人から見ても一流だった。殺しの現場をアクツに頼んで見せてもらったことがある。アクツの仕事も一流だと高峰が関心する所は無理難題を頼んでも、彼は身を削ってさらりとこなしてしまう所だ。シズルも文句をぐちぐち言いながらも結果を返してくる。彼らは出会ったころから変わらず、ようするに仕事が出来る人間を高峰は無条件で好きなのだろう。無能な人間といると喋るのが本当に面倒になるのだから。
殺し屋としてのジョンの腕は鋭利な刃物で苦痛を味あわさず悲鳴を叫ぶ暇もなく暗殺したものや、逆に拷問目的で甚振り殺した跡などが見れて、高峰は表紙を天井に放り投げながら、アハハハと面白そうに笑ったものだった。仕事の完璧ぶりを見ると、高峰の女を激情して殺す時は本当に余裕がないのだろうと思うといとしくて間抜けでならないと笑えた。だから仕事にはできるだけ口を挟まないと決めた。口を出すのが面倒であったというのもあるが、彼が本来持っている最低限ともいえるプライドを邪魔することなどないようにしようと決めた。
しかし、高峰は自分の所有物を傷つけられるのが元来、嫌な男だった。そして、この世で一番愛しているのは自分自身だという人間だった。

「俺は気に食わねぇことは嫌なんだよな」

独り言を述べる。
アクツが置いていった金平糖を高く積み上げながら独り言を述べた。ばらばらと人差し指でつつけば金平糖のタワーが雨のように落ちていく。


「自由にはさせてあげる。俺のもとに戻ってくるなら、腕が取れても気にしねぇけど」

けど、と言葉を止める。
戻ってこないのであれば、お前のプライドや自己を無視してでも、奪い取りに身体を動かすという意思を自身で再確認した。高峰はパソコンを開いて港の監視カメラの様子をジャックする。手で打ち込んでいけば簡単に侵入することができた。パソコンって本当に便利だよねぇと金平糖を噛み砕きながらほくそ笑んだ。
よく「愛していないだろう!」とジョンは喚いていたが、騒ぐだけが愛情ではないと高峰は思う。むしろ、食すということ以外に執着を示さない自分が初めて知った「愛情」と「性欲」で求めている相手なのだから簡単に手放す筈がなかった。まぁ、自分の愛情をわかっていないところも可愛いと思うので、あえて何も言わないが。自己愛の元にある愛情なんて薄れるはずがないだろう、と金平糖を噛み切って、ぎりぎりまでは我慢してあげようと長い睫毛で影ができる視界を瞬きした。


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