美琴と高峰 | ナノ




寝てるから足で蹴飛ばすと、俺が怒られる。理不尽や! って怒ると「俺が寝てるのに避けない理由が判らない」と断言されて、溜息を吐き出す。しょうがない奴やなぁ、じゃあ今度からこのソファーで寝たらええやろう――と倉庫にあった埃塗れのソファーを持ち出して置いておいたら、いつの間にか新品のソファーに変えられていた。どうせ兄貴のお友達が置いていったものやろうけど、俺の埃落としたり雑巾で拭いたり一人じゃ持ち運べへんから、輝彦にお願いした時間返せちゅ――話やで。
兄貴は唯我独尊っていう言葉がよう似合っとる。輝彦といい、俺の周りは毒が強い奴らばかりで困ってしまうわ。なんや、この前、本を読んどって、あ――この台詞兄貴にピッタリやなぁと思ったのが「探し物は出てくると思ったら出てくる」っていう言葉で。俺はついつい「もう、ないやん、探してもみつからんわ」と諦めモードになる所を(あと俺は普通の人やから、探し物見つからんかったら焦るんやけど)兄貴は見つかるもんやっていう前提で探し始めよる。きっと兄貴は今まで生きてきて人生で「できひん」って思ったことが一度もないんやろうな。
高い障害にぶつかったこともなく、今まで幸せに生きてきたから、自分が欲しいもんが手に入らへんっていう考えも、自分が求めているものが、黙ってても腕の中に落ちてくるもんやあらへんってのが、理解できひんのやと思うは。なんで兄弟やのに、こんな違うねんってなるけど、俺はぐーたら寝取る兄貴の姿を見るのが嫌いやない。俺が勝手に動いて、振り回されるのは慣れとるし。
輝彦にも振り回されてきたし、俺の人生はきっと誰かに振り回され続けるんやろうなぁって感じやけど。いや、諦めてはないけど。
最近は、そういう奴が好きなんちゃうやろうか? と付き合うようになってから(と、いうか素の姿を見てから)振り回され続けている恋人に対しても思うねん。今も、首根っこ掴まれて、後ろから羽交い絞めにされて、ちょちょちょ、ギブギブギブ、俺はそんなに丈夫に出来てないで、え、なんやて? 料理作れ? デザートはムースがいいとか、面倒なこと言われて、心底嫌やねんけど、なんや作ってしまうし、きっと、逃れられへんよう、出来とるんちゃうかな。面倒見がよいのは、もう、自分でも認めるしかないと思うわ。


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