ハイネと桜 | ナノ





青い真っ青なビニール袋には死体がくるまれている。僕は硝子玉のような眼球がハイネくんにより、抉りだされる瞬間を、じぃっとドラム缶に座りながら眺めていた。
ハイネくんが殺人を実行する時、決まって鉄が錆び付いた廃工場を選択する。様々な取捨選択があるのに、彼はなぜ廃工場を好むかなんて簡単な話で、殺人をするのに、これほど有効な場所はなく、漫画やアニメなどメディアの影響を受けているのは明らかだった。
ハイネくんは幼い子供や害虫のようなサラリーマンを拐っては縄で拘束して、ナイフを突き刺していく。水責め死体はぶくぶく太って気持ち悪いからダメらしい。ナイフで苦痛に歪む顔が素敵なんだって。変わってるね。そのくせ、僕の身体は傷付けてくれない。

ねぇ、刺して
いや、俺にはそんな趣味ないから
僕には刺してくれないの。他の人にはあげるのに!
刺されたいの
うん!
うわぁ、俺、そういうのちょっと、ひくわぁ


ハイネくんは青ざめた僕を拒絶する手のひらを見せた。眼球を放り投げて潰して遊んでいる子供のくせに。僕にはもう興味を失ってしまったようで、青いビニールシートを繰るんで死体の後片付けをしている。
今日はもう一体、お気に入りがいるようで、僕に良く似た顔のあどけない少女を牢屋から出した。干からびた骨と皮になった少女は「助けて」と震えながら僕に懇願した。止めて、助けてあげたいけど、僕にそんな権限はなく、代わりに刺されてあげることすら出来ない。
今のハイネくんの興味はあなたに集まっているから。僕がどれだけ滑稽に「気持ち悪い」と恋人に言われながら、叫んでも交代は出来ないらしい。


あ、ぎゃぁひっ、やっ、おかあさん、おかあさん、おかぁさんっあや、っ、たすけ、やぁ、ひっ、いだったあぁっぁおかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん、


処女膜を破るように、ハイネくんはナイフの先端を少女の皮膚に突き刺して破っていく。恐怖で混乱した頭はお母さん、お母さん、お母さん、と叫ぶ。僕は身が引き剥がされる思いだった。だめだ、こんなんじゃ。一緒に楽しまないと。一緒に楽しめるくらいにならないと、いらない、と言われてしまうかも知れない。

少女が叫ぶ

おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん、、ひぃっぁ、たすけ、ぁ、

僕は自分自身を透水するように少女の視点でハイネくんを眺める。僕だったら、いくらでも刺して汚してくれて良いのに。僕だったら、どれだけ汚してくれても、構わないのに。
あ、少女の声が止んだ。ぱたり、と。驚くほど容易く、少女は息絶えた。



さーくら
なに、ハイネくん
セックスする?
ここで?
うん、スゲェ興奮したから


良いよ、と首肯した。
ダッチワイフ代わりじゃないんだよねって信じながら、ドラム缶から飛び降りる。血塗れの少女が倒れている横に寝転びながら、股を開けた。

赤ん坊が欲しいな
可愛い、可愛い、赤ちゃんが欲しいな
ハイネくん


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