ナリと美貴 | ナノ



琥珀の中にいる化石を殺すような感覚だった。ゆっくりと肉棒を突きすすめていく。ぐちゅと、音がして私の中で美貴様の音がパリンと硝子を破壊するように、砕けていった。私は美貴様の骨に塗れた肩を掴んだ。ぎゅっと美貴様は瞼を閉じた。
引き寄せると、警戒心を緩く解き(いいや、本当は警戒心を丸出しにして跋扈する私に欲望を様子見していることなど存じていた)瞼を瞬きしながら、私に向かい、長く、赤い、血の色をした舌を差し出す。
ご褒美を授かる犬のように私は舌先を出し、美貴様の舌と絡める。今までキスしたことがないとは言わない。卵巣の香りがする女共と数度、交わしたことがある。すべての穢れが美貴様の唾液により浄化されていくような、至福と快楽の海に私は浸っていく。
味蕾のつぶつぶを摺り切らして、殺していくように私は美貴様の味を堪能する。美貴様は執拗に追い続けると、とろんと、瞳を潤わせ美貴様の中で堅牢に作り上げた抵抗力が薄まる。私が隙を見て、隙間から、するりと入り込むと美貴様は再び殻に閉じ籠もってしまうのだから、困ったものだ。
私は美貴様の骨のような身体を抱いていると、ふと、このように誰かに執着する自分自身が酷く滑稽でならなくなる。
幼い頃にもなかった。両親は私が可愛がっていたと勘違いしている兎が死んだ時「可哀想に可哀想に」と頭を撫でたが、私には無くなった存在を「可哀想」と憐れむ執着が一点たりとも理解出来なかったのだ。
しかし、おそらく、コレが居なくなると私は今まで味わったことのない、感情に支配され、残像を追い続けるのだろう。肉声をあげ、喉を枯らすのだろう。歪にも私はその終焉を眺めるのを楽しみに待っている。私の腕の中で、美貴様が、終わりを告げ、私は叫び、私だけの存在になる、可愛らしい彼の姿をずっと求めて止まないのだ。

とろとろな幸せを私から捧げたい。徘徊するように、脅え、自身の穢れを嫌うように、両腕を回し握り締めている美貴様へ。私から甘い櫁を捧げたい。
そうして私は櫁に群がる美貴様から、分泌された餌をいただく。唾液を絡め、私の世界に色をつけていく。効果が持続するのは美貴様が生きていらっしゃる間。私は美貴様からいただいた櫁を味わいつくしながら、彼がいなくなった世界を祝福し、呪い、笑うのだ。
その時を迎えるために。唸る間接に手を回り、私は背中を優しく撫で回し、策略を秘かに練るのだ。


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