スオウと翼 | ナノ



翼の後孔をスオウの肉棒が押し上げる。みちみちと、翼の体内にスオウの熱が差し込まれていった。陸上と格闘技で鍛え上げられた筋肉は西洋の血と混じって芸術品のように美しかった。本来なら、こんなことの為に使われる予定がなかった割れた腹筋が、下から押し込まれるスオウの肉棒を銜えようと必死に動く。

「もうちょっとだよ、翼」

爽やかな果実のような肉声は陰湿な空間には恐ろしく不釣り合いだった。二人が住んでいた世界が元々、真逆の位置にある場所だったことを彷彿させるような声だ。薄っぺらい甘言の先に隠れている本心を暴けば、錆鼠のような色が存在を主張するのが判る。
既に三回、射精させられ精神的にぼろぼろの翼は上に跨り、必死になりスオウのものを受け入れようとする。大勢のスオウを上辺しか知らない人間が「良い人」と評価する彼の本心が、真実「良い人」であるのなら、疲弊した恋人に、ここまで無茶な行為は求めないだろう。
泣き晴らして顔を真っ赤に染めた翼は、今更、なにを恥ずかしがっているのかと言ってしまいたくなるが下唇を噛み締め、声が漏れないよう堪えていた。

「ん――」

それでも隙間から男の掠れた性欲に塗れた声が聞こえてしまうのだが。
折り重なった襞を伸ばしていくように、スオウの肉棒が進んでいく。亀頭を抜ければ後が楽になるということは翼とて知っているが、中々、銜えこめない。
焦らされたスオウが「しょうがないな」といわんばかりの溜息を吐きだして、腰骨を掴む。

「ひっ――」

とジェットコースターで落下する時のような、日常生活とは切り離された浮遊感が翼を襲ったのも、束の間。余韻に浸る暇もなく、スオウの亀頭が翼の壁を打ち破って、ずんずん奥に進んでいった。
拒絶を示す肉壁だが、すっかりスオウに調教され、彼の形に変形されてしまった体内は喜んでスオウを受け入れ始めた。締め付けはするが柔らかくスオウの肉棒と癒着するかの如く、ひっつき、包み込む。

「ごめん、焦らし過ぎ」
「ひっぁ、−−この、馬鹿、やろっ――」
「だから、ごめんね。ほら、馬鹿って思うんだったら一生懸命、動いてよ」

にっこりと不釣り合いである柔和な笑みを浮かべてスオウは要求する。
受け止め可能な容量を既にオーバーしている翼は、喉を鳴らしたが恋人の命令に従おうと必死に息を整えた。今日で既に四回目となる慣れ親しんだスオウの形を再確認するかのように、深呼吸する。
だから、それが焦らしプレイなんだって――とスオウが真っ赤な顔で今から羞恥に塗れたことを自分の為に実行しようとしている翼に対して思う。
準備が整ったのか翼はゆっくり動き始めた。「よしっ」という律儀な掛け声が翼らしく、彼が表の世界で日常の様々なことが浸透してしまうほどスポーツの世界に身を置いていたことが判る。自分ルールとでも言うのだろうか。自分が決める命令は絶対で自分の中に区切られた時間がある。休憩が終われば、動く、ノルマをこなせば新たな課題を求める。スオウは翼のそんな愚直でいつまでも陽の光が当たる所が好きだった。

「んっ―――はぁ、っーー」

経験が豊富だと豪語していたわりに翼は初だ。羞恥を忘れず、それゆえに煽られるが「動いて」と頼んでいるわりには、物足りない。彼の話では女の子に騎乗位の一つや二つ、してもらったことがあるのだ。それなのに怯えながら積極性に欠ける。
動きには不満だが、概ね心境的には満足だった。
下から眺めると、ギリシャの彫刻、翡翠の宝石、様々な美しいものに例えようとも足りない美貌が歪んでいく。今まで、翼の相手をしてきた女どもはこんな気持ちを味わったことがないだろう。彼が羞恥にまみれ快楽に顔を歪め、あえぎ声を耐える光景はこれから先、一生、自分だけのものだ。女の話を聞くたびに、ああ良かった、翼が本気で好きになった相手がいなくて、と安堵する。喜ぶから言ってやらないが翼が女に抱く感情は「同情」のようなものだ。優しい、優しい翼は同情を嘘だと自分では否定するように、遊びと言いはる。なんと自分を護るのに長けた術だ。
遊びと同情であったから許している。今まで翼の身体を味わってきた女たちの存在を。で、なければ熱した鉄を膣に埋め込み、油を顔にかけてやらなければ気が済まない。翼はスオウがそんなことする筈がないと思っているので、疑いもしない。まぁ日本の情報を入手することが彼には不可能だが。女たちに軽いお仕置きを与えたあとに翼へ対してプレイと称して、泣き叫び「スオウ、スオウ」と呂律が回らなくなり快楽に浸った表情を拝まなくては。




「スオウっ、ぁ、き、気持ちいい?」

不安そうに顔を曇らせ、良い部分にあたってしまったのか矯声をあげる翼を弄るように無意識と装って腰を動かす。
唾液を飲み込めなくなっていく翼は涎をだらだら垂らし、返事がない不安と快楽に戸惑っている。
「良い人」と絶賛される笑みを浮かべて「もちろん」と返すと、とろん、表情を崩して幸福を感じる翼がいた。


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