ハイネと桜 | ナノ





桜の膣にペニスを入れていくと気持ちが良い。他の誰に挿入するより、桜の中に、ぐちゅぐちゅと埋め込んでいくと、ねっとりと纏わりついてきて、俺を離さない、あの感じが良い。俺と桜の間には、遠くて、遠くて、たまらない彼岸の川が流れていて、向こう側で桜は手を振っている。笑顔がきらきら、きらきら、輝いていて、俺はお前に笑っていて欲しいんだと思う。俺のいない所で、桜は笑っている。桜が悲しむと俺も悲しい。けど、それ以上に、最近は、桜が笑っていると俺も嬉しい。どちらが正解なのか、俺にはわからない。ただ、悲しんでいる桜は俺を責めるけど、笑っている桜は俺を責めはしない。穏やかな顔で、ここが唯一、安らげる場所であることを示すように、俺ににっこりと笑いかけていて、どうしてだか、泣きたくなった。
ペニスを桜のアナルに挿入する。膣と違った感触で、俺はどちらも好きだ。膣のねっとり俺を包み込む感じじゃなくて、俺を銜えこんで離さない一点集中の力が、必死さを物語っているようで。好き。桜の胸も好きだ。小さいけど、桜だったら別に小さくてよい。それを伝えると「嘘でしょう」という眼差しで見てくる。嘘じゃないのに、相変わらず面倒な奴だと俺は思う。面倒だけど、桜の面倒さは嫌いじゃない。面倒だけど、面倒でしょうがないけど、付き合ってやっても良い、桜だったら堪えてやっても良いという気分になるくせに、桜には、この気持ちはまったく届かない。桜の陰茎だって好きだ。俺より小さくて、掌に収まるサイズ。クリトリスがペニスへと変化したらしいのに、桜はクリトリスもペニスもどっちも持っている。身体にぼこぼこだらけで、色んな奴の身体を見てきたけど(それは、それは、多く殺したので、殺した奴は最終的に裸になるから)桜の様な身体をした奴は少なかった。
桜はそれを嫌がっている。自分だけ異質であることを嫌がる女なのだ。男なのだ。桜は。昔から周りに埋没することを好んで生きていた。遠い昔、俺が勘違いしてまだ初を好きだったころだ。桜は、俺の視界から消えるような生活を営んできた。ひっそりとしたものだった。俺にはわけがわからない存在で、しょうじき、言ってどうでも良かった。興味がいったのは、スオウと付き合い始めたと聞いたくらいからで。桜にこれをいうと確実に怒るけど、二人の中で、空白ともいえる青春時代はまるでなかったかのように、すっぽりと話題に上がらないので、たいして、重大じゃない。俺は今、桜が好きなんだから。勘違いしていなければ、ずっとずっと桜が好きだったんだから。しょうがないじゃないか。
俺は異質である桜の身体をこんなに愛しているというのに、桜は嫌だ、嫌だという。そんなことになると、俺の方まで悲しくなってくる。お前が悲しむ原因をいっぱい排除してきて、最近は、俺が一番、お前を苦しめているんじゃないかって気付き初めて、そうして、一番お前を苦しめているのは、お前の身体であるんじゃないかってことが判ってきた。お前の身体が原因ならお前を殺せば、俺が原因なら俺を殺せばいいと思ったけど、そうする前に、お前をすごく苦しめると判って、記憶を消すという方法に出た。記憶を全部、排除して、お前が幸せになれるかと思ったのに、そうじゃなくて。馬鹿な桜は、俺の所に戻ってきて、わ――わ――、昔と変わらない涙で泣いてしまったのだった。俺のために、こんな、涙を流すのは桜だけだ。昔から、桜だけがわ――わ――泣いて、俺の傍から離れなかった。ぎゅっと俺の手が幼い桜の手を握っていた。桜、さくら、さくら。どうすれば、お前は俺の前で泣かない。泣いているお前を見て、苦しいのに、とても幸せになる俺をどうすればいい。桜、さくら。

「桜の身体はすごくキレイだ」
「お世辞を言わなくて良いよハイネくん」
「お世辞じゃない、本当に、綺麗」

綺麗で、綺麗でたまらない。
こんな面倒な女、男、他にいないのに。桜の腰に顔を埋める。桜の臭いがする。他の臭い香りなんかじゃない。桜のきれいな香り。桜の白い肌。つるつるしている。昔、一緒に作った泥だんごみたいだ。

「うん、じゃあ、嬉しいな」
「ホントか?」
「本当、本当。ほら、なにかを評価するときって、自分の主観じゃまったくアテにならないでしょう。人から、なにか言って貰えた時の評価の方が正しいから。ハイネくんが綺麗って言ってくれるなら、本当かもね」
「ホントだ……」

本当だ。ほんとうに、桜は綺麗で。どうしようもない、俺なんかを好きで。自分が綺麗でいる自信でさえ、人のせいにしてしまうけれど、俺は、もう、お前が傷つかずに過してくれるなら、なんだって、良いのだ。
こうやって桜と話していると、もっと桜の為に上手な言葉を使えたら良いのにと思う。そのたびに、スオウが憎くなってくる。俺の言葉はアイツに奪われていったようなものだ。
桜はなにをすれば喜ぶ。
尋ねると、桜は困ったように眉をひそめて「ハイネくんが笑っていてくれること」と答えた。俺と一緒じゃん! けど、俺が笑うにはお前の笑顔が必要なんだけど、さてさて、どうすればいいの。さくら。



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