アレキサンドラー | ナノ






オセロ・アレキサンドラーについて君はどれだけ御存知だろう。
彼はアレキサンドラー家の嫡男として生を受ける。家の方針によりイギリスの寄宿舎学校に幼少期は入れられた。アレキサンドラー家が日本を拠点に事業を展開してイギリス社会に貢献しているため、彼の両親は日本におり、小学校に入学する前に日本へ呼び戻された。
彼と両親の間に温かい愛情など微塵もなく、オセロが両親に懐いている感情はアレキサンドラー家の当主に向ける、尊大な畏敬の念だけだ。
向かい合ってナイフとフォークを動かす食卓には数十人分の距離が存在した。家族の馴れ合いのような会話ではなく、定期的な報告会のみが行われる。会議に出席した社長のように、父親は欠伸をしながら、息子が喋る内容に頷き指摘をする。欠点ばかりを塗り潰していく。母親は秘書のように父親に付き従い、頷くばかり。オセロ・アレキサンドラーは喉元を嚥下しない固形物を咥内で噛み続けた。家族の愛情に満たされたことがない子どもが如何に成長したかは説明せずとも、脳内で貧相な創造力で補うことができるだろう。
如何にも彼はまともな人間に育たなかった。持ち前の器用さで父親が突き立てる無理難題なアレキサンドラー家の嫡男として行わなければならない業務はこなし、仮面を被り続けたが、いつの間にか、家と外で二つの顔を持つようになった。
彼の人生にそのような転機を与えた要因の一つとして、父親。二つに忌まわしい事故が彼が持つ、外でのオセロ・アレキサンドラーとしての顔を誕生させた。
あれは彼がまだ幼く、中学校に進学する寸前の話だ。庶民の生活を知らない人間は愚者になるという父親の教えに従って、電車に乗った。駅のホームで呆然と移り行く景色の怠慢さに舌打ちをしていると、眼前を真っ赤な血液が飛び散った。噴射した液体が眼球に付着して、視点を汚していく。掌に掴んだ肉塊は死体の破片だということを示しており、彼は自然と口角が上がった。人身事故による電車の遅延が良くあるように、オセロ・アレキサンドラーが遭遇したのは飛び込み自殺に過ぎない。騒然とした背景に巻き込まれながら駅員に保護されるなかで、オセロ・アレキサンドラーは今まで味わったことがない恍惚な感情に包まれていた。
これが彼の人生に転機をもたらした、もう一つのこと。彼はその日から駅に通うようになった。飛び降り自殺が起きないか観察した。しかし残念なことに偶然で巻き込まれる機会は頻繁になど訪れない。退屈で仕方なかったオセロ・アレキサンドラーは父親の教えに従って「チャンスは自分自身の手で掴むこと」を実行することにした。
突き落とす。
指先に全神経を集中させて、通り過ぎるふりをしながら携帯電話を無防備に弄くっていた女を。小学生の小柄な容姿は都合がよく、疑われることもなく、ホームの下で破裂する女を鑑賞した。やはり、他のことより、心地よい。人体を壊すというのは。
彼はホームに人を突き落とすことを繰り返した。一番気持ち良かったのは、赤ん坊だけを母親と父親の前で突き落としてやったことだ。悲壮に加工されていく、表情とベビーカーとゴムの塊のような身体が破裂していくのは、どんな高尚な芸術品を見るより美しかった。
人間が壊れていく様子に身体を浸らせた彼だったが中学に入学するとホームに突き落とすという行為は止める。飽きたと表現するのが正しく、適当に女や男を引っ掻けて壊すことにした。人間を壊すことに意味があるのであって殺人をしたいわけではなかったので、彼の行動は多岐に渡った。
連れ去った女を椅子に拘束する。
金槌とアイスピックを片手に持ち、太股に突き刺した。
泣き喚く女の矯声に股間は反応する。身体に穴を無数に開けていく。肉が裂け、血が湧き出し、骨が披露された。息を吹き掛けると女は失禁だけではなく脱糞した。
下半身から垂れ流す汚れた臭いにオセロ・アレキサンドラーは手袋をして、拘束された女の口に糞を詰めていく。
糞にまみれた咥内に自身の陰茎を押し込む。舐めるように指示すると女は自身の大便を食べながら、フェラチオをした。下手くそと頭を叩く。咳き込む女の髪の毛をつかみ腰を前後すると射精をした精液を御褒美とばかりに飲み込ませた。
足の腱をついでに切ってやり片足を再生不可能にした。意識を失うことを許さず、定期的に刺激を与え精神を崩壊させていく。最後には華でも飾ってやろうかと思ったが面倒なので取り止め、恍惚の記念として携帯電話で写真を撮った。密室での行為は彼に自由を与え、行為の後に写真を撮り記録するようになった。携帯電話は念単位で借りているロッカーに大切に保管された。対象が捕まり難い時は写真を見て自慰をした。
家では完璧の仮面をはめ、両親と接した。学校では暴虐に振る舞い、異常性癖すら隠さなかったが、オセロ・アレキサンドラーの我が儘はたいてい、両親には許された。若気の過ち。一言で両親にしてみれば済む話だったし、彼らはすべてを真剣に受け止めているわけではなかった。誇張表現された噂に過ぎない。そもそも両親にとって、親に見せる顔と学校で見せる顔など極端に違って当たり前なのだ。



オセロ・アレキサンドラーは二つの顔を持つ男だ。お分かりいただけただろうか。
君もオセロ・アレキサンドラーが如何に狂った人間か良く知ることができただろう。
けれど、オセロ・アレキサンドラーにはもう一つの隠された顔があるのさ。
彼には恋人がいてね。人を壊すことが趣味の少年が傷付けることも出来ず、大切にそれはもう清らかに扱う人間が。恋人の前では素顔で笑っている。ある意味、一番、素に近い顔なのかも知れない。
なに、その話が聞きたいなんて我が儘を言うのですか。残念ながら、ここからは有料ですので、指定した金額を受け付けで再度支払って下さい。高額なので貴方に払えるかわかりませんが。
ほんの指を十本ほどいただく程度ですよ。

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