モスグリーンの眼球がビー玉のように掌で踊っている。こころは怜悧で白く長い指先で眼球を操る。人体から抉り出したものなので、生暖かい。 一度、抉り出してやりたかったのだ。付き合うことを決意した日から。こころだけと言ってきながら、他の人間に対し媚を売る姿を見てからというもの。 今日だって、他の人間に対し簡単に尻尾を振っていた。秘書課の女だが知らないが、甘い密に騙されて、自分だけだと言った眼差しには他者を写していて、帰宅してそうそう殴り付け、嫌がるメリーの顔を押さえて眼球を取り出した。後遺症がある、暴力をこころは最も嫌っていたが、止まらなかった。なぜか、メリーになら良いか、という気分になれた。一時の感情だけで、他者を傷つけるなど、屑以下の行為だと嫌なほど学んできた筈なのに。昂る。 舌の上で転がすと精液と同じ味がした。 「こころ、酷いよ」 両腕を背中に回し拘束され、縄が身体の関節に絡まるように縛られた、メリー・ルイスルピーが懇願する。 こころは眼球を吐き出して、透き通る英国紳士の色を片目から、だらだら血を流すメリーに見せた。 「酷いとか言いながら、勃起してんじゃねぇ」 言葉と相反するように、怒張する陰茎をこころは足で踏み潰す。平常時と違い、硬く聳え立つ陰茎を弄ぶように、爪先で刺激する。足での行為なのに、まるで舌が巻き付いたようだ。指の付け根で陰茎を挟むと、引き上げる。 「ひっぁ、こころぉん」 「キメェ」 「酷いよぉ、焦らしプレイはもう嫌だって言ったでしょう」 「俺がいつ頷いたよ」 緩く挟んでいた足に力をいれて、搾乳するように絞りあげる。ついでに睾丸を潰すように、踏みつける。 「ひぃぃんぁっ、ひぃっああぁ」 雌豚の嬌声に類似した声が響く。違うのはテノールの深みがある男の肉声であることだ。 こころはにやにやと口角をあげて笑う。剥き出しになった草食動物の歯が輝く。 メリーは一般的に、大多数の人間が気持ち悪いと称する笑みを見て、ぞくりと背筋を駆け巡る電流を感じとり射精した。 「あぁん、くっ――」 どぷり。 白濁が吐き出される。こころの痩けた足に模様を描く。 許可していない射精に苛立ったこころは恍惚にあつい吐息を吐き出すメリーの顔を蹴り飛ばした。 眼球を抉り出されたメリーは蹴り飛ばされた衝動で血液をフローリングの床に飛ばす。 「舐めろよ」 高圧的な物言いで命令するこころにメリーは大人しく従った。 服従するように、顔だけを突きだす。鼻血と眼球から流れ出る血液とかでぐちゃぐちゃになった顔が快楽に染め上げられる。 丁寧に真っ赤な舌で自身の白濁を舐めとる。口のなかで、一度、こころに触れたものを堪能するように、噛んだあと、口内を開き、白濁を見せる。 満足そうにメリーを見たこころはにやぁと笑う。メリーはそれをみて、口内に溜まった精液を溜飲した。 次はなにをしてくれるの? という顔色で見てくるメリーを眺めているとこころは自分の欲求が満たされていくのが判る。 眼球を再び自身の口内に運ぶと、そのままパブロフ犬のように舌を出すメリーに口付けした。 舌が絡まりあい、喉元にメリーの眼球押し込む。キスをしながら、鼻を摘まみ飲み込む以外の選択肢を除外する。メリーは諦めたように片目を動かし、自身の眼球を飲み込んだ。 「自分の目玉飲みやがって。ヘンタイ」 「変態かもね」 「はぁ、俺が飲ましたんだろうが」 理不尽極まりない言葉を投げ掛け、涙を流すメリーの髪の毛を乱雑に掴み、床に投げ飛ばす。両腕を縛っていた縄をカッターで切り刻み、拘束をとく。 メリーにしてみればご褒美で、こころにしてみれば身勝手な快楽を追い求めて、ズボンをこころは下ろす。メリーに見せ付けるように、ローションを取り出して、後孔に塗り付けていく。 「くっ――」 腰を突き上げ、メリーの顔に脣が当たるくらい迫った状態で指を入れる。 襞を伸ばすように、丁寧に指先で円を描き、肉壁を爪で引っ掻く。 「ひっぁ、も、こころ、俺、限界だよ」 涎を美しい顔から垂らし、体液でぐちゃぐちゃになったメリーが怒張した陰茎をこころの太股にあてる。使い込まれた陰茎は黒く楠んでおり、我慢汁が、湯銭のように沸いている。 「我慢しやがれ。クズ。変態」 自分の後孔に傷ひとつつけない、慣れた手つきで孔に突っ込む。ずちゅずちゅずちゅ、ローションと腸液が混じり、満足するまで解すとこころは後孔の襞を伸ばす。 メリーの形に拡げられた後孔に怒張した陰茎が埋め込まれていく。 「ひっはぁはぁ、こころ」 まるでメリーの陰茎を利用してこころがオナニーをしているようである。 根元まで埋め込まれたら、好き勝手上下して、愉悦に笑っている。にやにやと。 暫く自由に動いていたが、メリーは自分の両腕が外された意味を理解して、細く折れそうな腰を掴む。 「ひっぁっ、交代ね、こころ」 「ちっ――ぁ、くっ、しょうがねぇ、な」 許可を貰いメリーは巨漢を利用してこころを突き上げる。縄が身体にのめり込んできて、程好い痛みがメリーの興奮を刺激した。 「くっーくそったれ!」 なんて可愛くないあえぎ声なんだろう、と思うがこころが放つものだというだけで興奮してしまう自分がいるのだからしょうがないとメリーは諦めながら劈く。ぐちゅ、じゅぽ、ぱんっぱん、ぱんっ!! 「ひっぁっ、くっ、イイぜ」 下唇を噛みながら喘ぎ声に耐える姿はメリーの身体を脈打たせる。 「ぁっくっひっ、そこ、もっと突けよっ」 「はぁはぁはぁ、こころっこころっ」 下からの体制さえも煩わしくなり、メリーはこころを組み引いた。後頭部がフローリングに当たるが、気にすることなく、こころの長い太股を抱き抱えて、腰を振る。 血塗れだが快楽。 出来ることならずっと繋がっていた。そのためなら、目玉ひとつ軽いものだ。宝石より価値が高い、メリー・ルイスルピーの目玉といえ、捧げよう。いつか、倍返しにして、貢がせるように。正気に戻ったこころが罪悪感にまみれて足枷を嵌められたら良い。 とりあえず今は馬鹿になれ! と言わんばかりの勢いで、精液をこころの胎内に放出した。 |