骨を折る音というのは脳髄に嫌という程、響き渡るものだ。まだ肥沃した幼く柔い掌で飯沼祐樹が人間の骨を折った相手は実母だった。秘密利に語り継がれている伝統行事で、子どもから脱出する証拠を父親に示すため、骨を折り曲げて殺してしまうのだ。そのため、大聖母は容姿と物欲が重視され、父親が特に感情を抱かぬ人間が選ばれることが殆どだった。
僅か七年ばかりの幸福と絢爛豪華な生活の為に、母親は美しい人形のまま、我が子に殺されるのだ。祐樹が実母を殺したのは褐色に輝く満月が異彩を放っていた夜のことだった。自分を玩具のようにしか扱わなかった女だが、柔らかな陽射しの臭いが彼女からだけは血にまみれた空間でしたというのに。祐樹は夜中に甘えるふりをして彼女に抱きつき、首の骨をへし折った。
ぼきり
実母は項垂れる。かくん。祐樹は呼吸を確認して、彼女を抱き締めた。震える指先を殺すように、隠し持っていたナイフを取り出し心臓を抉り出す。生暖かい鼓動。母親に似たあたたかさ。これは確かに母親がくれたものなのに、まったく幸福にはならない。
ただ、渇いた哄笑だけが響き渡った。
白い歯を天に向け、心臓を投げる。天涯に心臓が付着すると、べちゃりと飛び散り、祐樹は母親と共に砂糖菓子のように甘い弱さを投げ捨てた。



他者を殺すことに躊躇いがなくなり、必要とあれば身内であっても殺した。
顔色変えず引き金に指先をかけるのは簡単なことで、煙硝の香りだけが鼻孔を過った。次第に他人を殺すだけでは飽きてきた。
ストレス発散を目的とした便器に対しての加虐行為は増していき、何個か便器を殺してきたが、なぜかその玩具を殺すことが出来なかった。気紛れに過ぎない。祐樹は「透」と呼ばれた、便器に寵姫と名付け可愛がった。











始め出会ったのは祭壇の上。
異国の学生服を来て、醜い精気がない顔をこちらに向けていた。並べられた便器候補達の中で、一番、興味を引いた。
不細工な顔立ちだ。
一つ一つのパーツが悪いわけではないが、バランスが悪い。薄い覇気がない死人のような脣。魚のように虚ろなのに、挑発してくるような透けるような双眸。その魚類の眼差しに睫毛がついているから、気持ち悪い。鼻の筋は通っているのに、死んでいるように孔が小さすぎる。極めつけは黒子だ。瞳の下についている黒子が自棄に艶っぽく、殺してやりたくなる。
試しに、祐樹は透の首輪を掴み鎖を引っ張って殴り飛ばした。
ぐにゃり、実母を殺した時と同じく鍛えられてない、柔な肌が触れ、風船のように飛んでいく。自分がなにをされたのは理解していない痴呆な眼差しがこちらに向けられた。
祐樹はにやりと口角をあげ、透を連れてきた水色髪の部下へ「この玩具にする」と告げ、髪の毛を引っ張った。
床を引き釣り連れてきたのは、便器を可愛がる部屋だった。怯える透の陰茎は萎えきっていたが、便器が萎えていようと祐樹には関係ない。仕事をしない愚図に苛立ちは生じるが。
暴れぬよう、祐樹は透を柱に括りつけた。青白い陶器ねような皮膚が震える。祐樹は透の後孔に転がっていた酒の瓶を突っ込んだ。



「ひがぁぁぁぁ!! あがっ!!」



透は大声を叫んだ。今まで黙り恥辱に耐えるように漏らしていた声とは違う。絶望を孕んだ嬌声だった。祐樹は舌をぺろりと舐め、透の後孔に入った瓶をくるくる回転させる。処女であったのだろう。透の後孔からは鮮血が漏れている。空洞となった透明な瓶が赤く染まっていく。祐樹は、滑りが良くなった程度にしか感じることなく、瓶を回した。

「ひっぁがひぁぁがっっっ!」
「これくらいで、気絶はするなよ」
「ひゃぁ、ひっぁ!」

気絶されることを許さないというばかりに、飛び掛かっていた思考を強烈な痛みにより引き戻される。首根っこを掴まれ、頬っぺたを叩かれた。白く澄んでいた肌は、膨れ上がり惨たらしい奇怪な外見になっている。祐樹は満足したのか、瓶を覗き込んだ。

「直腸が見えている。赤く、畝って瓶を咥えこんでいるな」
「ひっぁあ、いやぁあがい、いたい、いた、も、殺しせ、ひっぁああがぁあ!」
「誰に指図しているの」

にっこり笑って祐樹は瓶を捻じ曲げ、透の腹へと捻じ込んでいく。固い瓶が腹を突き破ったのかと錯覚するほど、強く劈かれ、透は「おえっ!」と吐瀉物をベッドに吐き出した。祐樹は透の汚らしい姿に「今度の便器は耐久力がない」と呟いた。

「ほら、見えている?」
「あぐっ」

抵抗する意思など無くなったと判断した祐樹は透の枷を取り外し、自分が腕で抱えるようにして、胃液と血液に塗れた透の顔を掴み、下腹部を見せさせる。瓶がお腹の中からぷっくらと膨れ上がっており、血の気が引いた。

「しっかり、目を瞑っておくんだよ」
「ふっぁあ、あぐぁあ」

祐樹がゆっくりと指の腹で透の皮膚に触れ、押す。瓶を完璧に飲み込んでしまった後孔は、ずるりと腸をひっぱる感覚に慣れることが出来ず、全てが引き摺られていく。

「ほら、穴を上げないと瓶が出てこないよ。それとも、君は一生、この瓶を咥えこんでおきたい?」
「やっぁあぐぁひっ」


無理なことだと判りながら祐樹は透を囃す。痛みと快楽で腰を上げることができず、透はついに、陰茎から尿を垂れ流した。吹き出すのではなく、しんしんと、出てくる尿に祐樹は顔を顰めると、お仕置きとばかりに透の腹に鳩尾を食らわす。

「不潔だよ」
「ひっぁあ、あぐぁ、む、むりで」
「なにが? さっさと謝りなよ」
「ぁぁぐぁあああ、ごめんなさい、ごめ、ご、ごめんなさいぎぁああ」


身体ちゅうから汁という汁を垂れ流した透の姿を見て満足と感じたのか、祐樹は透の尻たぶを持ち上げ、排便するよう命じる。別に、言葉のまま飲み込めと命令しているわけではない。瓶を腹の中から出してやろうと彼は判りにくい姿で告げているだけなのだ。

「むっぁ」
「そう、せっかく、優しい方法を教えてあげたのに」
「ひっぁがががぁひゃぁああがぁぁああ!」

溜息と共に、祐樹の腕が透の腹を蹂躙する。瓶を咥えこまされたせいで広がったといえ、腕は襞を突き破って容赦なく直腸を弄る。指先が瓶にあたると、ぐちゅぐちゅとした音と共に瓶を突くこんっとした音が聞こえるものだから、透にとってこれ以上の恥辱と痛感はなかった。

「ひっつぁあぁぐあぁあ」
「どこだろうね、瓶……――あ、これだね」
「ひやぁがががががぁああぁあ!」

祐樹は瓶を鷲掴みにすると、回転させながら瓶を抜いた。すぽん、という音が聞こえ透の広がってしまった後孔はぷくぷくと腸液を垂れ流す。醜いなぁ、と祐樹は今まで殺してきた人間と凄惨な透の姿を重ね合わせ、死者を抱くように自身の陰茎を取り出した。いつの間にか、射精していた透の下半身は白濁で濁っており、容赦なく、祐樹の陰茎が透を打ち抜く。喘ぐ気力さえない身体は人形のように、がくがくと揺れた。
それからか。この人形に、ふざけて「寵姫」と名付けたのは。人形のように無様に揺られながら意識があるこの男を、自身の母親と重ね合わせたのだ。始め、水色髪の男は随分と祐樹の戯れに反対的だった。どうやら祐樹が選ばなければ、自身の人形にするか、解放しようと酔狂な遊びに浸るつもりだったのだ。今まで、こんな、廃棄物を祐樹が選ぶことなど有り得なかったからだ。
些細な
退屈に塗れ、人を殺すことに苛立ちを覚えていた男の戯れ。
始め、彼はママゴトの感覚で、透を愛でたのだ。

「おいで、透」
「うん」
「可愛いね」
「うん」
「可愛いよ」

そう言って、透に恐怖を植え付ける。首を絞めつけながら、透の陰茎に四肢を切断された女の膣が盛り込んでいる。祐樹は後ろから透の後孔に陰茎を突き刺しながら、首をしめ、愛でるのだ。
ママゴトでなくなった瞬間を、彼は今も鮮明に覚えている。嫌気が指すほど。







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