羽蟻が口から湧き出た少年は唾液と共に蜘蛛を漏らした。糸が咥内を緩やかに支配して、素足で僕に来駕する。ファルスを極めたような結末に口角をあげるが吐瀉物と共に僕は淫靡に腰を上げた。僕の肉厚を掻き分け、後孔に陰茎を押し付けてくるのは誰の影だ。正体を見極めることなど不可能に近い。ただ僕は矯声をあげる。白濁をばら蒔かれ、灰になる僕に少年は手を差し出した。少年は口から蝶々を出し、僕の唇に蝶々を移す。蝶々は僕のなかで暴れ、肛門から排出される。影を押し出して。誰かと誰を離間することなど少年には容易いことなのだ。
少年は僕を象っていく。僕は少年により構築される。少年は口から蝶々を放った。蝶々は輪糞を撒き散らし、死んでいく。


「どうして死ぬの」
「ああ、そんなの、もう、俺には必要なかったからに決まっているからだろう」


少年は命を同列に扱う。消化されたから問題ないと笑う少年の顔は恐ろしいこと。恐ろしいこと。僕は裸のまま立ち上がり少年に馬乗りする。少年は無知を絵に描いたように笑う。少年の首を締め上げる。骨が折れたが少年は気にせず笑う。死の概念を少年は知らない。目玉を抉る。四肢を切断する。髪の毛に火を放つ。少年は再生する。
ガタガタガタ
人形のように少年が動く。飛び散った血が一ヶ所に集まっていく。少年の傷は見事に消滅し、少年はけらけら笑う。僕は苛ついたので、彼の脳を引き裂いた。再生する前に脳髄を食べきってしまう。口のなかに含むと、蕩けて山葵醤油が味付けとして最適だった。咀嚼し、少年を体内に取り込む。少年は双眸をぎょろりと動かして、僕を睨み付けた。
陥穽を張られたようだ。僕は少年の暴れだす脳髄が忸怩を裁いていくのを感じる。少年は僕の頬にひんやりとした唇を押し付けた。頬に蛇のように長いものを植え付けられ、脳髄の変わりに、寄生虫が入っていく。僕は吐瀉物を吐き出す勢いで少年に返却する。


「馬鹿なのか」
「馬鹿、かもね」
「素直な桜を初は嫌いじゃない。醜さこそ、人間」




なるほど。彼には僕が醜く見えているのだろう。
胃液でいっぱいになった咥内を少年が舐める。舌から美しさが伝染する。僕にはない美しさだ。蜻蛉を彼は舌に乗せ、僕に差し出した。傷がみるみる癒えていく。
少年は首もとに噛みついた。僕の中に幸福が落ちてくる。少年は僕を愛した。少年は僕を許した。少年は僕に許された。
そして共に死んでいった。


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