人に自信をもってフォロー出来る人間は自分より他者が劣っていると自覚しているに違いない。そうでなければ納得出来ない。例えば俺が舌足らずな口調で喋っていると優しいお兄様は雄弁な口調でフォローして下さる。
「君は本当はこう言いたかったんだろう」なんて馬鹿じゃねぇか。誰がそんなことされて嬉しいんだよ。高みしか見ていない人間が稀にお情けを下さると検討違いのものばかり。こちらが唾を吐き出して拒絶してやりてぇなんて気付くことない。
中学生に上がりたての頃だった。あの頃の俺はまだ活発な男の子に入る部類の人間だった。中学生の男子なんて脳内エロいことが半分以上占めていて、俺は早く彼女が欲しくて堪らなかった。

「彼女とかマジ欲しい」

携帯越しに友達とふざけていたのが聞こえたのだろう。ハリーは自称女友達を俺に会わせた。強引に引き合わせて優越感。俺がどれだけ惨めだったか本当はわかってんだろう! ハリーしか興味がないのか、双子の弟があまりにも似ていないので白けてしまったのか、女の子の視線は俺を侮辱するようだった。撫でるだけの優しさっていうのが分かってしまう。
一日が終わってハリーは満足しただろう? という眼差しを俺に向ける。自己満足っていう気持ち悪い物体に浸るのはお前の方だろう。
そうやって俺の自我を崩壊していってお前はさぞかし楽しいだろう。俺にはまったくプライドがないって勘違いでもしているのか。
薄ら笑いを浮かべて、俺の欠点とか放っておいてくれよ。お前と双子ってだけで、俺がどれだけ自分を消してきたか。消したんじゃない、消されたんだ。俺はハリーに。
分かってる。
教師によく言われた。あれは中学生二年生の時だった。俺が中学校に通うのを止める少し前だ。
職員室の前に呼び出されてハリーとの差を逐一、報告された。なんでも彼はハリーの担任になりたかったらしい。それなのに引き受けたのは俺という出来損ないだった。テストの成績ですか、部活動の評価ですか、友人関係ですか。俺はすべて彼に劣っているんですが。そんなこと言われるまでもなく気がついてますよ。「今回はあんまり良くなかったんだ」というハリーの点数より俺の方が低かったりした時の彼の顔とか。遣りきれないものがありますよね。俺もです。「適当にやったから」とか言われても。俺はそれ、適当じゃ出来ませんでしたけど。別に無邪気に喜んでればどうせ俺が劣っているのが悪いんだろう。知ってるか。俺が苛められたのは生徒からじゃないんだ。先生だよ。担任から存在を消されたように。全員が俺より良くできた子どもだって。テストの成績を公開されたり、掃除当番を一人でやったり、クラスで問題が起これば全部、俺のせいだし。先生はそのたびに言ったよ。
「お兄ちゃんはできるのに」
ってね。

納得するしかねぇじゃん!!
逆に聞きたいくらいだぜ。俺が、俺ばかりが悪いのかって。

けど、知ってる。
俺が悪いんだ。
少なくともお前にこんな感情を向けるくらいには。俺は、お前が本当は俺のこと好きで俺を見下してなくて、家族だって。それくらいは知ってるんだよ。俺がお前に向ける感情が八つ当たりだってことも。
俺がお前のこと、嫌いだけど、大好きで、切っても切れないものが俺達の間にあるくらい。優しさを認められないのは、俺の愚かさなんだ。



だから嫌わないで、なんて。
我儘なやつ


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