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開くと同時に押し込まれた肉棒は、生臭く異臭に塗れていた。先程から顔に押し付けられていたので悪臭に嗚咽が込み上げてきていたけど、それ以上にきつい匂いが僕の鼻腔を横切る。
また、嗅覚だけではなく、咥内に入れられたことにより、舌にあたり、味蕾が苦みを帯びた味を感じ取ることによって嫌悪感は更に募った。
尿を漏らしてしまったことへの衝撃が強すぎたけど、開けるんじゃなかったと、後悔しながらも、歯でジルの肉棒を噛み切れない自分がいることも知っていた。
噛み切ってやればいいのに。

「ねぇ、充葉ぁん。駄目だよぉ。なに考えているかねぇ、お見通しだけど許さないよぉ」

なんて、脅されるし。
顔は後頭部をジルの大きな手で固定されているので動かすことが出来ないから、視線だけを上にあげ、ジルを見つめると、愉快な子どもの顔がそこで笑みを作っていた。ジルお得意の、誰の意思も感情もスキャンしてしまう双眸は変わらないままで。

「歯、当てたら、叩くからねぇ、充葉ぁ」

ずぼずぼずぼ。
嫌な音がする。
先ほどの言葉が宣告だったのか、ジルは僕の後頭部を掴みながら僕の頭を前後させた。当然のように、肉棒を咥えている口も動き強制的に、フェラされる形になる。
屈辱的な行為に僕の双眸からはじんわり涙が溢れてきた。乳首を弄られている間も生理的な涙は流れていたが、感情が篭る涙というのは、この行為が始まってから初めてで、自分の中の何かが、ぽきりと一本、折れる音がする。

「泣いてるねぇ充葉ぁ。可愛いよぉ」

可愛いと言いながらも、手を動かすのを止めない。完勃ちだと言ったくせに、ジルの肉棒は大きさを増して、嘘吐き! と叫びたくなったけど、多分、嘘じゃなくて、勃起した経験がない、と言っていたジルは自分の限界を知らなかっただけなのだろう。と、いうかさ、さっきより大きいって……と、自分の口内を蹂躙する幼馴染のペニスに畏怖を覚える。
僕のとは大違いだ。僕のペニスは自分で言うのも、あれだけど、普通だ。もしかしたら少し小さめかも。他人と比べたことないから判らないけど。想像したくないけど、坂本みたいなジルの友達からすれば、僕のペニスは幼く見えるのだろう。自慰の回数も人に比べて少ないので、色は薄い。


「駄目だよぉ、充葉ぁ。意識、そらしちゃね」
「んっ!」

現実逃避のあまり可笑しな方向に思考を飛ばしていた僕のことを見抜いたジルは、緩急をつけて、ゆっくり僕の頭を引き抜いた後、扁桃腺にあたる勢いで肉棒を入れてきた。
声にならない音が漏れる。

「ねぇ、充葉ぁ、これも気持ちいいけどぉ、舌、使ってよぉ」
「ふざけっぁふぁ」
「ふざけてなんて、ないよぉ」

冗談じゃない! と一旦肉棒が出されたのを良いことに反論しようとしたら、間髪をいれずに否定されてしまった。こっちこそ、冗談じゃない。
こんな、意味のわからない行為を強制されて、自分から舐めるなんて真似が僕に出来る筈なかった。

今朝までは普通だったのに。
本当に、どうして、なんだろうか。突発的なジルの思い付きな行動は今に始まったことじゃないけど。どうして。
疑問が飽和状態に達し、止まっていた涙が溢れだす。ジルは先ほどと同じように可愛い、可愛い、と告げていた。
喉元まで溢れ返った疑問。同じくらい、淡い色に包まれた期待が膨らんで、ジルの言葉に振り回される。

「舐めて、充葉ぁ」

命令されるけど、無視を決め込む。肉棒の味にも、少し慣れた。慣れた、というか、麻痺しているんだろうけど。

「やらないのぉ、充葉ぁ。ふふ、なら、しょうがないよねぇ」

え? と言う権利すら与えられていない僕だが、ジルの言葉に反応してジルを見ると、にんまりと、楽しい玩具を壊すような子どもの表情をしたジルが見えた。嫌な予感しかしなくて素直に舐めていた方が良かったかも、知れない、と思いながらも、無理なことは無理だと首を振る。
ジルは僕を突き飛ばすと、馬乗りになり、下半身に手を伸ばす。尿を漏らしたお陰で、湿っている制服。ああ、嫌なことを思い出した。
かちゃかちゃ。
ベルトを外す音が聞こえて、思わず、声を上げる。
無意識に、声は、震えていた。

「ジル、止め、て」
「だーめ。ねぇ、充葉ぁ」
「嫌だ。もう、本当に、止めろよ。なぁ、ジル。おかしいよ」
「可笑しくないよぉ充葉ぁん。これも、実験の一つだよぉ」
「実験?」
「そう、実験だよぉ。初めに言ったでしょう。試させてねぇって。オレ、勃起するの初めてだからさぁ。ねぇ、充葉には勃つんだよぉ。ふふ、凄いよねぇ」
「じ、る」
「だからぁ、これも、已む負えないことんんだよぉ」

なんだそれ、全部、お前の都合じゃないか。と思ったのに、口からは出ることがなかった。已む負えない、仕方ない、しょうがない、そう並べられると、納得せざる負えない感覚が押し寄せるけど、違う、と首を振る。
あるのは恐怖だった。
ジルに対する恐怖だけじゃない。
この行為を仕方ないと受け入れてしまいかねない自分への恐怖や、胸の中で蟠る、溺れてしまうかもしれない感情への恐怖が全部一体化して、身体の震えも涙も壊れてしまったかのように止まらない。
抵抗を見せ、脚をバタつかせ、縛られた腕を揺するけど、意味のないことだった。

「いや、だ」
「嫌、ばっかりだねぇ、充葉ぁん。充葉らしいけどねぇ」
「本当に、嫌、だ」
「大丈夫だからねぇ。あんまり煩いとズボン破るよぉ。嫌でしょう、充葉。今日、体育もなかったから、ジャージもないから。下半身、下着だけで帰るのぉ」
「っ――」
「そう、静かにしていてねぇ」

ベルトは外され、ズボンのファスナーを下ろされる。ジジジと耳障りな音が聞こえ、目を閉じるけど、ちゃんと見ているよう命令口調で述べられた。













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