壱…その優しい嘘に肉がついたそのときから愛は腐り始める 弐…透けたまぶたから水を流しているあなたがとても憎らしくて憎らしくて 参…歩みを止めるすべさえ知らず、ただ耐えるばかりのこの世では、ひとりぶんの心臓ではたりない 肆…きみがいう愛とやらはそんなふやけてぐにゃぐにゃ歪んだ紙のようなものなのか 伍…そこに意味がなく成り立たない弱さならもういらない 陸…いつまでもきみはそのままでいて、そういったあなたは止まりました 漆…みずからのなかにあるきみの姿を模した恋心と呼ばれる感情をひとりひとり殺めた 捌…そろそろここいらで終わりにしやしょう 玖…日傘をさしたらきみの愛が見えなくなった 拾…愛していたよ、おいおい泣くんじゃあないああそうかきみは高性能だからきっとこの先がわかるんだろうね、けれど泣いてはいけないぼくがきみを愛していたのは事実なのだから 拾壱…ごめんねが口にはりついてとれそうにないんだ 拾弐…冬の日でさえあなたはずうっと泣いていた。凍てついた涙などもろともせず、ただ、体内の水分をまるで涸れさせるように涙を流していた。そんなとても弱いあなたであったけれど、わたしはたしかに幸せを感じていた。焦がれるような戀をし、まどろみのような愛に逢え、静かに眠る夜のすばらしさを知った。氷上の危うい幸せではあったけれども、どうかすこやかに、おやすみなさい。 拾参…いつだって生ぬるい許しがほしいくせに