祐樹の部屋。
陸上の強化合宿で一ヶ月離ればなれになり、久しぶりの再会だった。透は首元に手をまとわりつかせ、祐樹が帰宅したことを歓喜するように舌を注入した。唇を舐めるように、侵入させようとしたが、首根っこを捕まれ離されてしまう。


「まだ、ダメだよ。盛らないで」
「一ヶ月も離ればなれで、俺、捨てられたの、かって……」


震えながら双眼から涙をながし、透は告げる。合宿があるということは聞いていたが、高山トレーニングとは聞いていなかった。連絡が取れると分かった上での見送りだったので、通話口から無機質な声が聞こえてきた時、背筋がぞわりという音をたてた。付き合い初めてもう数年にもなるのに、離ればなれにされ、捨てられるかもしれないと感じる瞬間が一番、怖い。祐樹のような輝かしい人間は自分を捨てることなど簡単なのだ。透はそう思っていた。


「ちゃんと高山トレーニングって言ったけど」

聞いていない! と反論したかったが、夕飯時に聞いていたような気がしてくる。祐樹に公定されれば、すべて正しくなる現象だ。

「すみませんでし、たぁ……」

だから捨てないで、と縋るように透は手をのばした。袖を握ると、祐樹はにっこりと笑い、透の頭を撫でる。怒っていないよ、という合図で安堵の息を吐き出した。


「ねぇ、透」
「な、なに」
「舐めて。俺の。元気にさせてくれたら、透のココに挿入してあげる」


祐樹は衣服の上から透の窄まりを突く。
本当は挿入されることを好んでいないが、祐樹にされるんだったら、なんでも良い。祐樹に喜んで欲しい。俺が出来ることなら、なんでもしたい。そんな気持ちを抱きながら、透は祐樹を押し倒した。
ズボンを降ろしていない時は手を使わず口で奉仕しろという合図だ。金属の錆びた味が咥内に広がる。苦々しく刺激的な味は眉を歪ませた。
歯の力でジッパーをおろし、下着を歯でずり落とす。中から立派な陰茎が姿を表し、よだれを垂らす。一ヶ月間、欲しかった祐樹の陰茎が目の前にある。早くこれを気持ち良くさせてあげたい。


「…………んっ」


鈴口に唇を触れる。鼻腔を鼻に付く薫りが横切る。粘つく男の味は吐き気がするが、祐樹のものだと思うだけで涎がでる。ごくり、喉を鳴らす。

尿道口に舌を差し入れて、汚れを取り出す。ぐちゅり、と涎が絡み、ぎゅうっと喉仏が閉まる。


「はぁ……んっゆうきぃ」


縋るような声色を漏らすと祐樹は喜ぶ。悦に入った肉声は擦れていた。唾液を口に沢山貯えているせいだ。陰茎の隙間から出た粕を食べ、祐樹を味わう。
食べてるよぉとアピールするために舌をべろりと差し出した。


「良い子だね。うん、そこ気持ち良いよ」
「本当ぉ、祐樹」

誉められたので、うれしくなったが感情の起伏が表情に出ない透は僅かながらに眉が下がる程度だった。
しかし、祐樹はそれを素早く察し、頭を撫でる。

「んっ………ぁ……」

再び口付ける。鈴口から裏筋へ舌を這わせ、付け根のあたりまで下がっていく。睾丸を包み込むように舐めると、食べる。咥内の熱さを利用して溶かすように舐めると、再び、裏筋へ舌を這わしあがっていく。


「はぁっぁ……ふぁ」


息が生ぬるい。
手を使ってしまえば楽だが、今日の祐樹はそれを望まない。透が手を使えば、満足しないといい、焦らされるだろう。
上目遣いで祐樹を見つけると、余裕綽々な表情を浮かべていた。絶対的な経験値が違うのだ。適う筈がないが同じ男として屈辱感な気持ちになる。祐樹だから良いと納得出来るが、自分が出来ることが減っているような感覚が背中からきて、とても恐ろしい。


「んっ………」


鈴口に噛み付く。甘く、感じるように。
ゆるく勃起した陰茎があがってきた。きゅうと腹を締め付けられる。感じてくれている、嬉しい。


「もう良いよ」


張り詰めた自身の陰茎を見て、祐樹は透の頭を押さえた。この自分を盲目的に慕うようになった恋人はフェラの練習を自身がいない間していたのだろう。帰ってきてくれるのを願いながら。
勿論「高山トレーニング」とは告げていなかった。携帯の電源も落としていたし、連絡もわざと取らなかった。恋人が淋しがるのを期待して。
可哀想であるが、こうやって調節してやらないとバランスが崩れてきて、透は自分に優しくされたら簡単に跡を付いていく。今回だって、大学で二人一緒に歩いていた筈なのに、トイレから出てきたら、いなくなっていた。
待っているって約束したのに出てきた時に消えていた失望や焦りは、黙って立っているだけじゃ伝わらない。今は自分に盲目的であるが、気付けば透は簡単に他へ寄り添っていくだろう。そんなの許すわけがない。二年以上時間を費やしてようやく、この関係まで持ってきたのだ。他者は歪だというだろう。上等だ。構わない。俺の壊れるような痛みや依存心など誰にも理解されないだろう。唯一はとても眩しい。



「透、尻突き出して」

首を縦に振り透は祐樹に向かい、尻を突き出した。腕を布団に埋め、腰をくねらす。恥ずかしくて仕方ないが祐樹に命じられたのならば致し方ない。従うしかすべはない。
祐樹は小瓶からローションを取出し、滑りを利用し、指を窄まりへ突っ込んだ。
「ぁっあぁん、ぁ」

浅い場所にある、しこりを爪先で引っ掻いてやると喘ぎ声をあげる。
身体が痙攣し、透はシーツを握り締めて祐樹から与えられる行為に耐えた。
もどかしい。早く、祐樹のが欲しい。と懇願するが、祐樹はそうではないのだろう。
とろとろになるまで、指一本で弄られる。
意地悪なのは、指一本では透は達することが出来ないという所だ。
陰茎は立ち上がり、我慢汁が尿道口からたらりと落ちる。


「ぁっああっんぁ、ひっあっ……」

宙ぶらりんにされ、指を二本目に増やされた。

「どう、透。もうイきたいでしょう」
「イきたい、です。お願いイかせて、下さい」
「嫌かなぁ」


淡い期待を抱かせたあと、透の襞を撫でるように回す。腰が無意識に逃げてしまい、怒鳴る代わりに、シコリを二本の指で挟まれる。


「ひっあっあぁ、ぁぁん」

馬のような嬌声に祐樹は爽やかに笑う。
クネクネと指をスライドさせてやると、喉を突き出すように透は上を向き喘いだ。


「どうしてもイかせて欲しい? 欲しいなら強引にねじ込んで、透の切れちゃうかもね」
「ひっあっあぁっあ、良いから、祐樹がぁ、気持ち良いならぁ」



一ヶ月放置したのが余程効いているのか今日の透は随分、献身的だ。



「じゃあお邪魔しようかな」


後孔から指を引き抜き代わりに熱い肉棒が突き立てられる。勢い良く劈かれ、透は自身の筆圧が負けシーツにすがり付くように、握り締めた。


「アッあっひっあっひゃあぁ、祐樹のが胎にある、ひっあ、ね、気持ち良い」


気持ち良いよ。
透は頭の中が一ヶ月ぶり交じりあう性行為に脳内をやられた。
祐樹の肉棒で膣内を埋め尽くされ、自分が祐樹に快楽を与え、奉仕できている。

「いいよ、透の胎」


相変わらず余裕綽々な声色だが、熱を孕んだ息遣いが稀にきこえ、締め付けをます。


「イって、あっあっぁ、俺、いくぅぅ」
「うん、俺も」


達しながら、布団へ白濁を吐き出す。同時に祐樹の精液が胎内に入ってきた。ぐちゅぐちゅと一体化できたような素晴らしい感覚が湧き出る。胎内の熱を感じるたびに祐樹は俺のものでいてくれるのだ。俺は祐樹の所有物なのだと実感できる。犬にマーキングというものがあるが、自分も普段から祐樹の所有物だという鎖で縛り付けておいて欲しい。


「透」


一物をぬかれ、祐樹が透の傍にいくと、ぐったりと横たわっている透へ口付ける。


「大好きだよ。一ヶ月、連絡できなくてごめんね」
「や、聞いてなかった俺が悪いから」
「けど不安にさせたのは事実だからさ」


捨てられないなら、それで良いのだと袖を掴み、もう一度と透は祐樹にねだった。




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