両目を閉鎖され、手首を拘束された状態で充葉は目を覚ました。腕に力を入れると金属のぶつかる音が鼓膜へ届き、自分の状態を悟った。充葉は冷静な声色で自身にこのような仕打ちを行ったであろう人物の名前を呼んだ。

「ジル」

名前を呼ばれ嬉々としたのか、軽い足取りでハイヒールを蹴る音が近づいてくる。床はタイルが敷き詰められているのか、随分と鋭い音だ。

「はぁん、充葉ぁんお目覚めぇ?」
「目覚めたけど。これはなんの冗談?」
「別にぃ、冗談なんかじゃないよぉ。監禁ごっこ、オレがしたかっただけなのぉ」

ふふとグロスを塗りたくった唇を優雅に動かしながらジルは笑った。充葉の頬に長い爪が食い込み、切り傷が出来る。たらりと流れ落ちた血液を舌で舐めとり、恍惚の表情を
浮かべた。
目隠しされている充葉からは見えるはずがないが、濃厚な息遣いにより、察知できる。背筋がぞわりと囁いた。


「大丈夫ぅ。遊ぼうねぇ、充葉ぁん。ホテルの部屋借りてるから綺麗だよ。安心してねぇん」
「そう、けど時間が……今は何時? あんまり遅いと怒られる」
「はぁん大丈夫ぅ。充葉の携帯でオレがメールを打ってあげたから。充葉が打つより充葉らしい口調でねぇん」
「なら、いいけど」
「ふふふふ、素直だねぇ。最近、素直で、とってもいいよぉん、充葉ぁん。ねぇ、素直ついでに今日はちょっと寂しいけど許してねぇん」

宣言するや否やジルは充葉の応答を待たず、下腹部が露出し、生まれたままの肌を披露している充葉の陰茎に触れた。

「ひっ……」

乾燥したジルの手が裏筋に触れると、驚きのあまり充葉は声をあげる。

「くっ……」

下唇を噛み締め耐える姿は扇情的であるからか、ジルの行動を加速させた。
鋭利な刃物のように伸びた爪を尿道口へ引っ掛ける。裏筋をたっぷり撫でられ、ゆるく勃起した陰茎は、だらしなく、ぱくぱくと解放を望んでいたようだ。

「……うぐっ……ぁ」

防いでいたはずの嬌声が歯茎の隙間から漏れる。

「充葉はぁん、ここがすごく好きだよねぇ」

尿道口に爪を食い込ませながら、中の肉を抉り出すように、指を捻る。本来ならば、痛さで失神してしまうがジルによって痛みの耐性をつけられた充葉にとって快楽以外の何物でもなかった。

「くっ……はぁっん、ぁぁっ……」

どくんと熱を放出する。精液はジルの手のひらに飛び散り、あっさり、達してしまった充葉に対し、精液を舐めながらジルはため息をついた。


「もぉん、早すぎるよぉん」
「だってお前が」
「言い訳ぇ。まぁ、良いけどぉ。充葉にとって楽しい時間が増えただけだもんねぇ」


にっこりと笑いジルは、豪華なデザインの筈なのに安っぽく見える机に置かれた小瓶を手に取る。
薄い水色が着いた透明な液を手のひらに落とし人肌まで暖めると、充葉へ近寄った。

「何するの……」

不安そうな声色で尋ねる充葉へを余所にジルは傲慢な態度を貫き通す。
達したばかりの倦怠感が残る身体を揺らし、ジルに抵抗の意志を告げる。手錠ががらりと音をたてた。その様子をジルは愛しそうに眺める。


「大丈夫だからねぇん。充葉ぁん」
「そっひゃぁっ、うっあ」

充葉の窄まりに液体が塗られる。ローションかと充葉が内心で安堵吐き出したのも束の間。塗られた範囲から、熱が広がっていく。火照りという生暖かいものではない。火傷した時に味わう痛さと似ていて、痛烈な痒さが走る。

「ひゃぁっな、なに、ジル。か、痒い、くっあっ……!」

醜態を気にせず充葉は騒ぐ。目隠しされた感覚が余計、彼に恐怖を与えた。自分の身体がどうなっているのか確認するすべさえ持ち得ないのだ。


「ひゃっあっあぐ、あっふぁ、うくっ」

涎を垂らし、隠された視界に張りついた布に涙が染みていく。


「やっだぁ、ジルっぁっふぁ、ひゃぁっ、な、なに挿れてんだよ!」

充葉の後孔に挿入されたのは、小さなバイブであったが、視界を遮られた充葉にとってはジル以外に触れられているような、気持ち悪い感覚が付きまとう。好んで男とセックスしているわけではないのだ。ジル以外になど触られたくない。この部屋にいるのはジルと自分だけだと理解していたが、それでも充葉にとって畏怖であった。


「やだっ、やめって、ひゃあっあっ!」

バイブが前立腺を弄る。人間には不可能な、不規則な回転は一転集中し、前立腺を挟まれ揺らされながら、とてつもない回転を加えられたような快楽を充葉に与えた。


「ひゃっあっあぁん。も、止めて。ひぃっひゃぁっんぁ」


バイブは前立腺から撤退すると充葉の収縮を繰り返す襞を触る。媚薬を塗り込まれた秘部は痒みが緩和される至福を味わいながらも、性的興奮するポイントを的確に突いてくる。


「あっあっ、そこっひゃぁん、痒いのぁっ、やぁ、いや、止めないで、くれ、違う、んだ」


涙でぐちゃぐちゃになった顔を汚しながら充葉は叫ぶ。
ジルかどうかわからない人間に犯されるのも嫌だし自己を保てない淫蕩に陥るのはもっと嫌だった。
普段から強引で、そもそも強姦から始まった関係であるが、ジルでないかも知れないという恐怖を味わったのは初めてだった。


「やっ、もっ、いやだって言ってっひゃあっの、ひっにぃジルぅ、ひっあっじ、る……」


ぎゅうと握り締める。せめて、背中へ手を回させてくれたなら、幾分も楽になるだろう。


「ひっあっひゃあっ、やだっ、いやだ、ジル、ジル、ジル、もっ、止めて、ジル、じ、る」

喘ぎながら救いを求めるようにジルに懇願する。
名前を連呼し答えてくれるのを待つしか出来なかった。


「ひゃっぁ、ひっあ、ジル、ジルぁ、やめ、も」

媚薬を塗られた場所を刺激していなバイブが抜き出される。

「か、かゆい、よぉ、ひゃぁっ、くっあ、ジル」

掻かれなくなった途端、痒さを増す後孔の疼きに助けを求める。
すぽりと抜けた窄まりの隙間から、媚薬が漏れだす。


「ひっあ、ジルっ、どうして、止めるっんだ、よジルっあっ、ひゃぁ、どこ、だよ、ジル」

泣き喚くと頬っぺたに冷たい手のひらが触れる。鋭利な指先はジルのもので呼吸困難に陥っていた充葉の心拍数も落ち着きを取り戻した。


「もっ、くっぁ、やめろよ、こんな、ことっ」

涙を流しながら、喘ぐと充葉の後孔に肉棒が突き刺さった。
劈く衝動で悲鳴をあげる。


「ひゃああっあっひっああんっひっあっ!」

ジルで埋め尽くされる感覚に充葉は酔いしげる。何度も味わった温度だ。膣内の形は彼のためだけに書き換えられている。
ずちゅっと前後激しく動かされる。


「あっあっ、そこっひゃぁん、ぁん!」

尻椨をもたれ、上向きにされる。
奥へ押し込まれるように、喘ぐ。バイブなどと比べものにならない。


「ひっあっ、イくっイくよぉぉジルっ」


挿入されてから達するのがあまりにも早いと自覚していたが充葉は射精せざるおえなかった。
肉棒が充葉の前立腺を押し潰すように刺激し、精液を吐き出す。


「ひっあっ、やっだ。イってっる、からぁ、止まれ、よっ!」

助けを求めるがジルの腰は止まらない。
射精している敏感な身体にたたき込まれ強制的に充葉の身体は痙攣する。


「ぁっひゃっあジルぅぅぅ」


びくん、びくんとわずかな精液を吐き出す。
終わらない快楽の地獄から充葉は逃れるすべを知らなかった。













「ジル!」


行為が一段落し目隠しだけ外すことを許された充葉は怒鳴り付ける。
頬には涙の跡が残っており、痛ましさを垣間見せた。


「ごめんねぇ充葉ぁん。許してぇ」
「少しも悪いと思ってない言葉を吐き出すなよ」
「だってぇん。まぁ良いでしょぉん」
「良くない!」
「けどぉん、充葉がオレの名前ばっかり叫ぶのは良かったなぁ」


叫んでいないというのはさすがに無理があると理解していたので充葉は口を閉ざした。



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