007




携帯が、勃起したペニスの上に置かれた状態で俺は椅子に座っていた。押し退けるか、セックスに持ち込むかのどちらかを選択したいが、残念ながら、叶わぬ願いだ。
何故なら、目の前に、友人である黒沼帝が腰掛けているからである。先に言っておくが、帝はまったく悪くない。悪いのは、友人が今から遊びに来ると告げず俺とセックスしようとした、紀一である。頭腐ってんだな。コイツ。
机で遮られているから、帝からは見えないが俺の下半身は靴下だけ履いた状態で椅子に腰掛けている。その上、コンドームに詰められた携帯が、開かれ、勃起したペニスにかぶされている。
今すぐにでも暴れだしたいが下手に抵抗して帝にバレるのはもっとごめんだ。




「あ、でね。今度、ネネちゃんがみんなで遊園地に行こうってさ」
「紀一さんは人が多いの苦手だから、平日がいいな」
「俺はっ――別にいつでも良い。バイト入ってない日だったら」
「健太のバイトは水曜日だけだよね」
「うるせっ。あんまり、入りたくねぇんだよ」
「働きたくない、だね健太」
「ちげっ……えよ」

反論し、怒鳴りつけてやろうと思ったが、紀一はポケットの中に潜ませた携帯電話を操り、俺のペニスに乗ってる携帯を震わせた。
ヴィィィィィン
ブーブーブ

「っ……――ん」

顎に手のひらを乗せるふりして、口元を閉ざし、耐える。
玩具ほど不規則な変化ではないが、ペニスに刺激を与え、射精感が募る。

「あれ、だれか携帯、鳴ってるよ」

僕かなぁといいながら呑気な帝は鞄を漁りだした。
音のことなんか、まったく危機感がなかった俺は紀一を睨みつける。
口角が釣り上がった余裕ある笑みは殴ってやりたくなる。つーか殴る。殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、今日こそ殴ってやる。俺をこんな恥ずかしい目に合わせやがって。


「………っ、……ひ」
「健太くん、どうしたの?」
「なんでもねぇ。気にっ、すんな」
「けど体調、悪そうだよ」
「平気だって」


亀頭を刺激していた携帯が、机を殴った瞬間、衝動でズリ落ちた。陰会部まで落ちて、精巣を揉むように動く。敏感過ぎるので揉まれ過ぎると痛くて、触られた相手に警戒心を抱くような場所だ。鈍い動きは俺をさらに責め立てた。
射精してぇ。
出してしまいたい。ブチュブチュと精液を飛ばしたい。紀一の手なんか借りる必要はねぇから。オナニーするから、もう出せたらなんだっていい。


「ごめんなさい。余計なお世話だったよね」
「ちげって、お前が、わるっいわけ、じゃねぇ」
「ありがとう。健太くんはそう言ってくれてやっぱり、すごく優しいね」

今すぐ立ち上がって頭下げながら状況を説明してやりてぇ。チンコびんびんだし、射精したいし、正直、帰ってほしいけど、お前が悪い訳じゃねぇから、なぁ!

「バイブ切れたね、紀一さん、てっきり健太のだと思ったのに」

会話へ割り込むように強引にねじ込んできやがって、紀一はへらへら笑いながら俺の太股を擦った。
勃起し、俺の我慢汁でべちゃべちゃのペニスに触れ、携帯電話を取り上げる。ようやく止める気になったのかと、小さく胸を撫で下ろしたのも束の間。
紀一の手が俺のペニスを直接、握ってきやがった。


「健太くんのだったの? 紀一」
「紀一さんの予想ではね」
「そっかぁ。何処にあるんだろう。あ、探すんだったら、僕から鳴らすよ」
「んーー帝が帰ってから探すから良いよ。ね、健太」
「くっ……お、お」


帝がやっぱり健太くん体調が悪いんじゃないかなぁって眼差しでこっちを見てる。ほんっとにごめん。次なんか奢るから許してくれ。


「そっかぁ。じゃあ僕はそろそろ帰ろうかな。遊園地、詳しいことがネネちゃんの中で決まったらまた連絡するね」
「えーー帝もう帰っちゃうの、紀一さん寂しいよ」
「うん、帰るね。紀一は健太くんがいれば寂しくないくせに嘘つかないで」
「わかったよ。じゃあね、帝」
「バイバイ紀一。健太くんもさようなら」

椅子から立ち上がり丁寧に座席を元の位置へと戻すと帝は玄関まで向かった。見送りしてやれれば良いんだけどな。こんな、状態だから。
パタンと扉が閉まる。俺は紀一の胸倉を掴んだ。


「紀一!!」
「楽しかったでしょ、健太。紀一さんはとっても楽しかったよ」
「てめぇな」
「殴っても良いけどあとで、ね」

紀一は俺の手首を握り一まとめにすると、下腹部へ手を伸ばした。
勃起し、今にもはち切れそうなペニスが紀一の乾燥した手のひらに包まれる。慣れた手つきで、精巣を揉み、延ばした人差し指で裏筋を撫でた。


「ひっ、あっぐ、やめろ」
「イきたいんでしょ。あんなに我慢してたもんね、健太」
「チクショウ、俺は暫く許さねぇからな」
「どうぞ勝手に。健太の横暴には紀一さんは慣れたよ。そんなところも大好きだもん、紀一さん」
「しらっねぇ、ひゃっぁぎ、あ」
「吐き出すと気持ち良いと思うよ」
「ひっあ、そこ、てめぇの力は借りないって言ってんだろうが!」
「初めて聞いたよ。まったく言っていないから安心してよ、健太」
「なにがっだぁ、ぁ、う、あっあっあっひゃイく、イくぅぅう!!」


紀一の手のひらで簡単に転がされた俺は射精してしまった。
射精後特有の気だるさが身体に残り、俯く。机の冷たさが火照った身体には有難い。台所汚くなったけど、こいつに掃除させれば良い。こいつの家だ。

「健太」

俺を抱き締めるように紀一が擦り寄ってきたので、精一杯の力を振り絞って殴ってやった。甘いハニーヴォイスが寧ろムカツク。

「痛い! 紀一さんになにするの! 酷いよ健太」

と紀一はほざいたが俺は気にすることなく、立ち上がり、寝室に置いてあるジャージを履く。殴られた紀一が痛みに震えているうちに俺は寝室の鍵を中からかけた。ガチャリという音に気付いたので焦ってきたのだろう。ドタバタという足音が聞こえる。

「健太ぁ、酷いよ! 紀一さんのは破裂寸前だよ!」
「ウッセェ! お前なんて、俺が知るかよ! 一人でオナニーでもしてろ!」

ドアが破壊されそうなほど強く叩かれるが、開けてなどやるものか。少しはそこで反省しろ。今すぐに!












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