03□ 「ぁっ――ジル、そこは止めてくれ」 「気持ち良いから、駄目だよぉ、充葉」 放課後の図書室で、背後から犯された。最奥の棚と棚に隠れた場所とはいえ、静寂が漂う空間で犯されるのは、いつまで経っても慣れない。 正面に見える、アガサクリスティの本が僕に背徳間を与え、それさえもが快楽へと変わる。 後孔を長い爪先で弄られ、内壁にあるしこりを刻むように撫でられる。 「ん――ぁ、じ、る、もう」 「駄目だってぇん。もう、充葉はぁん煩いなぁ」 「ひっ! あ、ごめん」 「大丈夫、許してあげるからぁん。はい、じゃあ、充葉はぁん、充葉が好きな本に囲まれてぇ、オレになにをして欲しいのぉ」 「くっ――あ、じ、ジルに」 「オレにぃ」 前立腺を挟まれ、震わされる。脳内が痺れ、痙攣が止まらない。 口角から涎が垂れてきて、双眸に浮かんだ涙が、図書室の床に落下した。 「挿れて、欲しい」 「どうしてぇ」 「お前を、感じたいっから」 「お前、じゃないでしょう。オレの名前はなんて言うのぉ。しっかり、答えてよ」 まさか出来ない充葉じゃないよね、というようにジルは僕の陰茎を握った。亀頭の浦賀らを撫でられ、快楽を増す手伝いをされたかと思うと、尿道口に爪先を入り込ませる。いつものことだが、ジルの爪は凶器と言っても良い長さで、尿道口を奥まで傷つけられると、セックスの後、トイレに行った時、酷く痛む。 「ジルの、ペニスをっぁ僕にくれ」 「ふふ、良い子だねぇ。やれば出来るじゃない。その調子でオレを求めようねぇ、充葉ぁん」 「う、ひっあ! あぁぁぁん、ひゃぁぁぁあぐぁああ」 「ふう、きもちぃよぉ」 ジルの肉棒が僕の言葉を契機として入りこんでくる。長く太いそれは、僕の後孔を容赦なく犯す。 ぐるりと回転するように腰を動かされ、べちゃべちゃ、ぐちゃ、ぐちゅという、ローションが掻き回される音が鼓膜まで届き、羞恥を演出した。 亀頭が僕の前立腺まで届き、重点を定め、打ち放たれる。 「ひゃぁぁぁぁ、あぐ、ぁぁぁ、ジルぅぅぅ!」 「充葉ぁん、良いのぉ。放課後といってもん、誰かいるかも知れないのに、そんな大声出して」 「ひっぁ、だってぇん、忘れ、てった」 「間抜けだねぇ、充葉ぁん。オレは充葉の迂闊さがとても好きだから良いけどねぇ。充葉はとっても恥かしいね」 「くっ……ひゃぁ、っううっぁ、ふぁ」 「必死に堪えようとして可愛いねぇ」 教えられたことにより、僕は口許に手を当て、歯で指を噛みながら、上がりくる嬌声を抑えつけた。 本当に、ジルとセックスしていると、頭が阿呆になる。けれど、朦朧とした意識の中で、ジルの荒い息遣いが聞こえてきて、こいつも感じているとわかり、充実感が僕に差し出される。 「んっ――ぁ、ひゃぁ、も、ジル、限界っ――」 「オレがぁ、まだ限界じゃないから、もうちょっと頑張ろうねぇ」 射精寸前まで勃起し、腫れあがった陰茎をジルは掴む。会陰部から這うように上がってきて、全体を押し潰すように握られ僕は射精する権限を奪われた。 「ひゃぁ、う、ひぐあぁっも、あ、はなしてぇ」 「離さないよぉ、決まってるじゃないぃ」 「ひぁぁぁぁっ……くぅああ」 奥まで侵入していたジルの肉棒が入口、ぎりぎりまで引き抜かれ、再び勢いよく僕の中へと入っていった。肉壁を引き摺られ、電撃が走り、身体を痙攣させると、前立腺目掛けて、熱が鼓動を与えられ、頭の中が爆発しそうになる。 ずちゅ、じゅつ、ぶちゅ、ぐちゅちゅ 「行くよぉん、充葉ぁん、オレの精液、きちんと受け止めてねぇ」 「ひゃぁぁぁぁああぐ、あぁぁん、イくぅぅぅぅぅ!」 「くっ――あぁぁ、気持ち良いよぉん、充葉ぁん、ふあぁん、もっとぉ、オレのオレの精液を食べてよぉ」 「ひゃぁあぐ、あぁ、ジルの、ふぁん、僕の中にぃ、入ってくる、よ」 「ホントぉ? 良いよぉ、充葉ぁん。もっと、オレの、もう、ねぇ、充葉ぁ」 耳朶の後ろからジルの激しい喘ぎ声が聞こえてくる。僕がこの行為中、もっとも、意味を得る瞬間である。ジルは蕩けてしまいそうな声色で僕を壊していく。 握られていた、手のひらがはがれ、白濁が、図書室の床に飛び散る。掃除しなくちゃいけない面倒が待っているなんてこと、今は考えられなくて、ジルの吐息に溺れた。 「充葉ぁん」 僕の中に沢山、精液を吐きだしたジルはいやらしい笑い声を吐きだしながら僕を抱きしめる。 骨格にジルの身体が食い込んでいくようだ。 この頃、正式には、一度、ジルとの離別を僕が決意し、拍子抜けのように、あっさりジルの元へと舞い戻ってから、ジルは行為のあと、身動きが取れなくなった僕を、力強く抱きしめた。骨が軋み、毎回、折られてしまいそうになる。 「充葉ぁん、オレねぇ、気持ち良かったよぉ」 「そう、なら、良かったな」 「うん、ねぇ、充葉ぁん」 「なんだよ」 「充葉が女の子だったら、今頃、オレの子どもを孕んでくれているのかなぁ」 「これだけ、セックスしていれば、そうかも知れないね」 「ふふ、だとしたら、良かったのにねぇ。充葉は一生、オレと一緒に居られるよぉ」 「かもね」 「嬉しくないのぉん」 「嬉しい、よ、ジル」 「だったら、素直にそういいなよぉん」 言葉を吐きだしたあと、ジルは僕の指を掴んだ。行為中に嬌声を防ぐために噛んだ為、傷跡から血液が滲み出ていた。 ジルはそれをゆっくり口許に運ぶと、長い舌で舐めた。粘膜と舌が重なり合い、擦れる。 鈍い痛みを感じたが、僕の表情を見ながら、ジルは笑みを浮かべた。恍惚に浸る人間の表情で、もしかしたら行為中より気持ち良いといった顔をしているのかも知れない。 |