宅配便で大きな鏡が運ばれてきた。茶色の包装紙に畳まれて、宅配便のお兄さんが届けてくれた。
トラが頼んだものだから、僕が受取人になって良いのかなぁって思いながらも判子を押した。
非力な僕の力では運べなくて、トラが帰宅したら、運んで貰おうと考え、玄関に立て掛けておいた。夕方には帰ってきてくれるから。僕はお掃除を先に済ましてしまおう。







「トラ、おかえりなさい」
「あ゛ーーただいま」
「お疲れ様、あ、あのね、鏡が届いたよ」
「やっとかよ。チッおっせぇなぁ」
「ご、ごめんなさい」
「お前に怒ったわけじゃねぇから、気にすんなよ」

トラはそう言って片手で鏡を掴んだ。相変わらず凄い力だし、片手で鏡を持つことを可能としているのは、大きな手のひらだ。
長くすらりとした腕についている、大きな手のひらは僕の頭を包み込んでしまうくらい大きい。
惚れ惚れしちゃう。二階へ運ぶ為に筋肉を働かせて上がっていく。背中だけ見ていてもカッコ良いと思える男の人は、地球上を探してもトラくらいしか存在しないかも知れない。セックス、今日もしてくれないかなぁ。
はしたない考えだけど。図々しいけど。思うだけは、自由だよ、ね。


「帝、腹が減った」
「は、はい。できてます」
「今日はなんだァ」
「秋刀魚におひたし、湯豆腐にきんぴらごぼう、松茸ご飯だよ」
「マツタケ!」
「松茸です。この前、松茸狩りに参加してきた時のだよ」
「楽しみだぜ! オコゲをくれ」
「うん、いっぱい、お焦げよそっておくね」


トラのお茶碗はどんぶり鉢サイズなの。山盛りにご飯を盛って、机の上へ置いていく。
他の料理も並べて、いただきまーす、と大声を出し、食べはじめる。

「あ、トラ、どうして鏡買ったの。もう鏡ならあるのに」
「それなぁ。俺って身長でっけぇ、だろう。だから、全身映るのが欲しくてなァ」
「なるほど、だからだね!」
「お゛ーー置く場所、まだ決まってねェから、とりあえずベッドの後ろに置いてっから」
「足の裏にあるってことだね」
「まーな」
「朝起きたら自分が見えちゃってちょっと恥ずかしいね」
「……かもなァ」


僕がそう告げると、トラは嬉しそうに破顔した。なにか企んでいる時の顔だ。昔から、悪戯を思いついた時は、こんな顔をしていた。無意識だろうけど。
両親とか先生にバレるたびに一緒に怒られたよね。懐かしいなぁ。


「帝」
「は、はい」
「メシ!」
「おかわりだね。ありがとう」

トラからお茶碗を受け取り、炊飯器へと迎う。いっぱい食べてくれて嬉しいなぁ。今日も八号炊いたご飯が空になってくれそうで、胸を撫でおろした。


「はい、トラ。たくさん、召し上がってね」
「お前、その言い方はエロい」
「え!?」
「召し上がって、とか、安心しろよ。今夜もキチンと食べてやるから」

トラはそう言って、山盛りによそわれた、ご飯をお箸で駆け込みだした。
平然な顔をして、恥ずかしい台詞をぽんぽん吐き出すので、僕の頬っぺたは紅潮してしまう。ご飯中なのに、お箸を置いて、両手で頬っぺたを包み込んだ。

「あ、トラ、僕、お風呂沸かしてくるね」
「おーー行ってこい」


恥ずかしさを隠すために、食卓から立ち上がり、お風呂へとむかった。










「ん――トラァ」


宣言通り、トラは僕を抱いてくれるみたいで、お風呂が済み、火照る身体を押さえていたら、キスが降ってきた。
舌を絡ませる。唾液が粘膜を生み出し、僕の舌とトラの舌がくっついたみたいになる。
トラにキスされると、神経から身動きが取れなくなっていく。
僕の身体はとろとろになるんだ。


「帝、もう勃起してんなァ」
「だって、気持ち良くてぇ」
「イイゼ。俺だけを感じてろよ」
「う、うん」

癖のように頬を軽く撫でると、熱いキスが再び、落ちてくる。キスを繰り返ししていると、僕という人間はトラにキスされているだけで射精出来るなぁと、良く思う。
大きな手がシャツの隙間から忍び込んでくる。冷たい手はひんやりして、肌が震える。
お腹を優しく手のひらは這うと下腹部へ伸びていき、スラックスの上から、性器を揉む。
下着の上からでも形が浮き彫りになっている亀頭を触る。指の腹で押し潰されるような微々たる刺激を受け、腰がくねる。


「もう、でそうだろォ、帝」
「う゛うん、出ちゃいそう」
「相変わらずハヤェなぁ」
早漏なのは自分自身でも理解しているつもりだ。
けど、僕がこんなのに、なっちゃうのは、トラが原因なんだ。元々、淫乱な変態だけど、限界が早くなったのは、トラとセックスするようになってからだ。

「もうちょい我慢しろよ」
「う、うん!」
「良い子だ」

指先が、下着の隙間に割り込み、脱がされる。僕の性器は表わな姿を醸し出す。我慢汁で濡れてぐちゃぐちゃだ。透明な汁が照明にあたり、良く見える。


「ト、トラぁ、触ってぇ」

お願い、というように、性器を突き出すはしたない格好をする。
触ってくれないってこては、僕に何らかの反応をしろってことだもの。

「トラァ」
「分かった、分かったって。触ってやるから、ま、俺じゃねェけど」


え! と驚く僕を放置して、トラはベッドの下から、玩具を取り出した。小さな卵形をし、ピンクの塗装が施されてあるローターが出てきた。
見覚えがあるもので、僕の玩具箱から取ってきたものだと思う。オナニーを発見された時に見付かったんだ。お母さんにエロ本が見付かった時レベルの恥ずかしさだよぉ。

「使うのぉ、トラ」
「当たり前だろ。寧ろ、ここで使わなかったらダセーだろ」
「う、う、ひゃあっふぁぁぁっぁ!」
「ハハ、オモレェ」


いきなり、性器にローターを当てられた。振動が敏感な部分に触れ、翻弄される。

「ひゃぁぁぁん、ローターぁぁん、気持ち良いよぉ」
「相変わらず飛ぶの早いなぁ」
「だっだってぇぇぇ、ああっ、亀頭ぐちゃぐちゃしないでぇ、どうにかなっちゃうよぉぉう」

一ヶ所に当て続けるのではなく、裏筋を転がすように刺激を与えられる。
会陰部から上がってきて、尿道口を弄る。射精感が沸き上がり、脳内は馬鹿になっちゃう。

「イくぅぅぅ!! トラぁぁぁん!!」
「イけよ、オラッ」
「ふぁぁぁぁん、イく、イってるよぉ。玩具で、こんなに感じちゃったよぉ」
「見てりゃわかるぜェ。帝、精液、俺の腹まで飛ばしてんじゃねぇぞ」
「ごめんなさぁぁぁい。ひっ、あ、止めてぇぇ」

達したばかりで敏感だというのに、性器に当てられた玩具は止まらない。
どうしてぇ。
もう、僕のお○んこに、トラのおちんちん、ハメハメして欲しいのにぃ。


「なぁ、帝。丁度良いから、見とけよ。なぁ」
「ひゃっ、うっうっあぁん、ひ、な、なにがぁ」
「お前がどれだけ、インランかを、だよ」
「んっんっん、ふぁぁん、やぁ、見たくないよぉ」
「それは、無理な話じゃねェ?」


指差された方向を見ると、今日、宅配便で届いた、鏡が立て掛けてあった。
そこで、僕はようやくトラがご飯時に悪戯を思いついた子どものような表情で笑った訳を知った。トラが思いついた悪戯っていうのは、このことだったんだ。なんで気付かなかったんだろう。僕って本当に間抜けだよぉ。

「見たくなぃよぉ、僕なんてぇ」
「ダメだ、見なさい」

トラは僕の身体を持ち上げて、鏡の前まで連れていく。燦々と輝く蛍光灯の下で、僕の勃起した性器はよく目立った。

「ひゃうっあぁん、ううっふぁん、やだぁぁぁ」
「見なさい。良い子だろう、帝はよォ」
「ふっぁっ、やぁ」


鏡の前で僕は顔を真っ赤に染め、よだれを垂らしていた。なんて、醜い姿なんだろうか。見たくない、見たくないよぉ!
ピンクのローターは再び、性器に当てられ、どぴゅ、どぴゅと精液を飛ばす。

「オイ、鏡に精液当たってんじゃねェか。せっかく、今日、買ったばかりなのによぉ!」
「ひっ、ぁ、ふぁぁん、ごめんなさいぃ」
「明日、拭いておけよ」
「拭く、拭くからぁ。もう、止めて。鏡、ダメだよぉ」
「ナニ言ってんだ。今からが、ホンバンだろうが」


意表を突かれる言葉を吐き出された後、トラは僕の後孔に手を伸ばす。
潤滑油として僕の精液を使っているみたい。
男らしく、誰よりも美しい指先が僕の中に入ってくる。

「トラ、トラぁ、欲しい、ひっ、け、どぉ、やだぁ、ここじゃ。電気、消してよぉ」
「灯りがなきゃ、お前のインランな姿が見えねェだろう」


指が動かされる度に粘膜が熱を持つ。浅い部分にある窪みに爪先を引っ掛かれ、身体が跳ねる。


「ひゃわぁぁぁん」

二本目をいつの間にか侵入させられ、二本の指は自由自在に僕の中を蹂躙する。長い指は深い所まで届き、仰け反りかえる。


「オラ、きちんと見とけよ」
「ひぃぃん、やぁっふぁぁぁん」
「もう、挿れるぞ」
「ふぁ、ひゃっひゃっぁあん、きてぇ」
「見てろよ、ちゃんと自分の姿を!」


勃起し、はち切れそうな性器が聳えたっている。
ローターを投げ捨てられ、腰をがっちりとした両手で捕まれ、僕は宙に浮く。


「ひゃぁぁぁぁぁん、ぁっぷ、ううっぁ、入ってくるぅ。トラのが僕のお○んこに入ってくるよぉ」
「チッ、気持ち良いぜ、帝。なぁ、しっかり見てるか」

腰を激しくスライドさせながら、トラは僕の顎をつかんだ。
目線を鏡へ向けるためだ。

「見なさい。帝は、俺のペニス挿れられて、こんなに、なってんだぞ」
「ぁぁん、ひぃ、やぁだぁぁ、僕、なんて淫乱なのぉ。トラがぁ、いっぱいだよぉ」
「射精、止まらねぇぜ、なぁ、帝」
「かがみぃ、鏡汚してぇん、ひやぁあっ、ごめんなさぁいい」


どぴゅ、どぴゅと飛び散る精液が鏡を汚す。もう、やだ、よぉ。気持ちよくてぇ。トラのでいっぱいだよぉ。
内壁を引き摺るように、上下運動が繰り返され、僕はその度に射精した。
前立腺をえぐるように、責め立てられると、頭の中でフラッシュが起こる。
けれど、あるのは確かな幸せだけだ。


「帝、出すからしっかり受け止めろよ」
「うううっ、ひゃぁっ、わかっ、た、よぉ」
「クッ」
「ひゃぁぁぁぁぁん、ぁっぷ、ううっぁ、入ってくるぅぅぅ」


トラの精液が僕の中を満たしていく。
結合部から精液が溢れ出してくる様子が鏡で確認される。
熱が僕の中で暴れるようだ。



「ん……帝、どうする、まだ欲しいか?」


すっきりした顔つきのトラが僕に問い掛ける。
鏡を横目で見ながら付着した精液に真っ赤になったが、頬を染めながら、首をおろした。