メンドイことは溜めこむ主義というワケではないが、逃げてきたことは明白だった。
溜まりまくった卒論を処理すべく、今日も大学の図書館へ通う。他人よりスタート遅かったから、大学の机にしがみ付いて参考文献を今更必死扱いて漁っているのは俺くらいなもんで、他の奴に借りて行かれた分、本の数も少ない。
他の図書館から取り寄せてもらうことは可能だが、時間かかるし、そもそも請求の仕方からわかんねぇよ! って逆ギレしてやりたくなる。
卒論さえ、出来ていれば、今日も帝の傍に居てやることが可能だったというのに、なんという悲劇だ。
今は……つーか、あの事があってからは出来るだけ傍に居てたりたいし、俺が帝の傍に居たい。傷つけたくないし。可愛いあの子を護ってやりたい。帝はとても優しく良い子なのだ。幼い頃から傍に居たので、それは嫌というくらい明白なことだ。

自己犠牲を厭わないし、すぐに自分が悪いという。御綺麗事だと嘲笑う奴もいるだろう。犬が道端で死んでいたなら「可哀想」と声に出すだけで終わらせとけよ。
信号が青になるのを見計らって、お気に入りの服を真っ赤な血で汚そうとすんじゃねぇ。それ、さっき、今日の為に下ろしたって言った服じゃねぇか。意味ワカンネー。お前の考えていること。偽善者が! って。
昔の俺みたいによぉ。
だから、そうやって、自分が悲しまなくて良いことなのに、悲しんで、他人の痛みまで全部引き受けちまう奴だから、護ってやらないと。
俺以外と会わないのが、あの子を傷つけない最良な手段だと思うのだが、それは帝が望んでいないから、実行することはない。ならば、出来るだけ、傍に居てやりたい。触れ合って、セックスしてたい。

「あ――帰りてぇ」
「お前、んなこと言ってるとマジで卒業出来ないぜ」
「柴田ぁ……」

伏せた顔をあげると柴田がいた。俺の高校時代からの友達だ。就活の為、黒に染められていた髪が今では嘘のように金髪へ戻っている。耳についたピアスも同様に輝きを放っている。

「あ、俺はもう卒論出来たから」
「マジかよぉ。信じらんねぇ――」
「マジマジ。で、今から合コン。サークルの後輩引き連れてな」
「だから、学校にいんのかよ」
「そういうこと。窓からトラが見えたから、一応、挨拶と、ホラ、差し入れ」
「サンキュ、柴田」

けど、俺、帝の作ったもん以外あんま美味しいと思わねぇんだけど、と思いながら受けよると、ビニール袋の中に見慣れたランチボックスが入っていることに気付く。慎重に取り出すと中身はチョコレイトとパウンドケーキだった。

「帝から?」
「そ。渡しそびれたって言っていたから奪ってきた」
「二人で会うなよ。テメェ」
「別に二人っきりじゃないって。佐治も一緒、一緒。あ、黒目は違うから、お前一人仲間外れにしたとかじゃないからな」

佐治と黒目も高校時代の友達だ。ついでに、言うなら、佐治と柴田と俺は同じ大学で帝と黒目が同じ大学な。馬鹿だから付属大学に上がったくれぇだけど、あいつらは二人とも頭良いから外部の国立受けて、難無く合格した。

「あ、そ。けど……あ――、帰るわ、今日」
「え? そこは頑張れよ」
「差し入れとかカンドウすること不意打ちでされたら、やりたくなった」
「あらん、色情魔。ラッブラブだね――」
「羨ましいか? 地味女、いるといいな、合コンで」
「まーね」

我慢してたのに、歯止め効かねぇ。差し入れとか、可愛すぎるだろうが。俺と同い年の男がする行為とは思えない。いや、あの子は男ではなく、帝という個別の生き物なのかも知れない。
返却棚に本をブッこんで、自分の荷物だけ持って、図書館を出る。柴田に挨拶忘れたけど、いいだろ、別に。駐車場へ駆けるようにむかい、止めてあった、バイクに跨った。いきなり帰ってきたら焦りそうだな、帝って。焦った表情好きだから別にいいけど。









「帰ったぞ」

大声で扉を押すと、慌てた顔した帝が顔を出した。

「ト、トラ! どうしているの?」
「帝に会いたくなったから帰ってきた」
「ト、とらぁ」

いつものように蕩けるようなキスをする。帝は咎めたいのだろうが、言葉も出ず、咥内を軽く弄ってやると、腰を砕き、ヘロヘロになる。よろけて、落ちてしまったので、お姫様抱っこして、寝室まで運んでやる。帝は、微妙な顔つきで俺を見ていた。

「なんだ、帝、恥かしいのか?」

今更だ。

「は、恥かしくはない、けど、あの、卒論は、大丈夫なの、トラ」
「大丈夫だって、心配すんなよ!」
「そ、そっか! ごめん、疑って」
「別にいいって。あと、セックスしたら、夜に続きするから」
「う、うん!」

参考文献なくて、出来ることなんてネットで漁るくれェしかないけど、別にいいわ。パソコンの前に座って弄くって適当な時間で寝れば。帝は妙な所で頑固だから(本当は俺の為になるから、言いたくないのに言ってくれていることは知っている)卒論、優先しがちだけどよぉ。
セックスしたくなったから、仕方なくね。嘘はついてねェし、許せよって勝手に胸の中で唱えながら、帝をベッドの上に降ろした。

「帝」
「ふぁ、トラ」

再びキス。
唇を合わせ、舌をにゅるりと隙間から忍ばせる。帝は舌を絡められるのが、得に弱いので、緩く絡め、咥内を犯していく。唾液を注ぎ込むと、ごくごく飲むので、少し引くが、涎を垂らし、恍惚とした表情は可愛いので、文句はない。
キスしながら、帝の身体をゆっくりとベッドへ沈める。
一緒に寝ることを前提として購入したキングサイズのベッドは俺たちの行為を簡単に受け止める。
服を丁寧に脱がす。破り捨ててやりてェけど、お洒落に気を使うこの子は、一つ一つの服を大事に使っているので、極力、破り捨てることはしないよう気をつける。ボタンに手をかけ、胸元から外していく。鎖骨が見えたので、思わずキスした。

「ん――」
「跡、つけたから」
「真っ赤だね。今度から、襟は詰めて着ないと」
「見せつけてやれよ、お前は俺のだって」

耳元で囁くと帝は真っ赤になり、顔を染めた。キスマークなんて、痣だらけになるくらい、つけているのに、愛い奴だ。
俺はそのまま、指を下げ、乳首に手を掛けた。熟れた果実のような乳首は、先ほどのキスで、少し勃っていた。爪先で遊んでやると、腰をくねらせ、誘うように俺を見る。

「なんだ? 乳首以外も触って欲しいのかよ」
「あ、あの」
「触って欲しかったら言ってみろよ。なァ」
「ち、乳首以外、じゃ、ないんだけど、反対側の乳首も弄って欲しい、なぁ、なんて、思います」

両手で乱れた襯衣を手繰り寄せ、もう片方が見えるようにしながら、顔は今にも泣きそうなくらい、震えている。真っ赤で、羞恥心が押し寄せているのだろう。ンなに、恥かしいなら、ヤラなかったらイイだけの話なのに。堪え切れず行ってしまうのが、この子の良い所だ。
期待に答えてやらなきゃ、可哀相だし、俺は喜んで帝の乳首に噛みつく。

「ひゃぁ!――あっトラぁ、そこ」
「自分から言ってきたくれぇだもんなァ」
「んっ――そこ、好きなの。乳首、好きなの」
「知ってるぜェ」

痛い位が気持ち良いのか、腰をくねらす。服を着た状態だから、わからないが、帝のペニスはもう勃起してるだろうよ。
指の腹で叩いてやると「んっ」と思わず瞳を閉じて、力んでいる。楽になれよと告げるとうに、乳首から、衣服の上を辿り、下腹部へと撫でていく。
予想通り勃起したペニスの膨らみに行きつき、ニヤリと顔を歪ますと帝は、はぅと顔を背けた。
背けた所で無駄だって。
触っちまってるし、お前が、乳首だけで完勃ちするってもうのは、何回もセックスしてたら隠せるものではない。

「勃起してんなよ」
「ご、ごめんなさい」

楽しいから、いうけど。

「なァ、帝、自分で脱いで見せろよ。お前の勃起したペニス」

弄っていた乳首からも手を離し、宣告する。帝にとっては、我慢汁が溢れぐちゃぐちゃになった下着を自分の手で降ろすコトも、それを俺に見られるコトも、堪え難いコトだろうけど。
この子は自分の快楽に弱いので、必ず俺の言うことを聞くだろう
じとっと俺の双眸を眺めた後、自身の脳内で小さな葛藤を繰り広げ、真っ赤に染まり、熱を帯びた眸を潤わせながら、ベッドから起き上がり、下着をずらす。
羞恥の為の、ゆっくりした動作が、コチラへ興奮を呼び起こす。早い所、貪りついて、俺の肉棒を帝の肉襞へ向かい、ブチ込んでやりたい。
喉が渇く。

「と、トラぁ。見て、ください」

痙攣を起こしながら、下着から小さな一物を見せる。鈴口から我慢汁が溢れていて、下着は予想通りぐちゃぐちゃだ。射精してないくせに、よくココまで体液が出るよなァ。

「見てる、見てる。なァ、帝、なんで、下着ぐちゃぐちゃなんだよ」
「そ、それは」
「言ってみろ」

言葉の雨に責められている最中でも帝は、勃起したペニスから汁を垂れ流すことを忘れない。ココまで俺にすべてを曝け出しておいて、今更、何が恥かしいんだ。
視点が止まらない帝は、指先が白くなるまで自分の下着を握り締めながら、口を開く。

「乳首、弄られて、気持ち、よかった、か、ら」
「へぇ、んで、こんなに酷いこと、なるんだ」
「やぁ、トラぁ」
「嫌なのかよ? だったら、触らねェけど」

残念がるフリをして、帝のペニスから手を離す。
手のひらに付着した我慢汁をシーツで拭くと、立ち上がり「じゃあ、飯でも食べるか。時間も、良い感じだろう」とワザとらしく述べる。
勿論、ここで辞めるつもりなど、更々無い。俺が突っ込んでやりたくて始めた行為なので、当たり前と言えば、当たり前だ。
ただ、悦楽が欲しくてしょうがない、俺の可愛い子は状況を理解出来ていないらしく、焦燥とした顔つきで俺を見つめた。

「やぁ、ごめんなさい、トラ」
「ん、さっきはアア言ったのにか」
「嫌なんかじゃない、の。お願い、もう、トラのに、めちゃくちゃにして欲しいの」
「へぇ、そんなのかよ」
「う、うん」
「だったら、お前、俺の前でオナニーしてみろよ。突っ込んでやりたいけど、アナル柔らかくねェし」

帝は頭の良い子なので、俺の告げた言葉の意味を暫く時間を要したが理解することに成功したらしい。
俺は化粧台の横にある、黒い椅子に腰かけながら、脚を組み、帝を見つめる。
アナニーしろと命じているのだ。腰掛けたのは、帝から動くまで俺は何のアクションも起こさないという合図である。

「んっぁ」

喘ぎ声が聞こえる。
帝は頭を俺の方へ向け、憂いを帯びた眸をこちらに向ける。枕元の方に尻を突き出し、自身の指を丹念に舐めると、自分の指を襞へと触れさせた。
収縮を繰り返し、頑なに閉ざされた窄まりは、帝の軟い指を拒むが、強引にあの子は自分の中へ指を入れていく。アナニーはこの子にとって慣れた行為であるが俺が目の前にいる状態で行うのはあまり経験していないことだ。

「ふぁ、とら、見てるぅ?」
「ああ、見てるぜェ。ほら、口より先に指を動かせよ」
「は、はい」

焦るように二本目を侵入させる。
グチュグチュと淫靡な音が部屋に響き渡る。帝は俺の名前を呼びながら前立腺に触れたらしく、腰が飛び跳ねた。
くりくりと捏ね繰りまわし、嬌声をあげている。ペニスをまったく触らない所から、この子がオナニーのとき、まったくペニスを触らないということが判る。初めて、帝と性行為をした時、皮が完全に剥けきれてなかった。
当時の俺も皮を剥がしてやるくらいは、男性同士のセックスにおいて抵抗がなく、丹念に皮を剥がしてやった。
皮の中から出た熟れた果実は弄りがいがあり、敏感だった。今でも、亀頭の辺りを弄ってやると感じて、腰を飛び跳ね、俺を誘う。

「帝、気持ち良くなってばかりだと、広がらねェぞ。イれて欲しくねェなら別だけどよォ」 
「ひゃぐっ! あ、ふぁ、広げるっからぁ、ちょっと待っててぇ」
「待ってるから早くしなさい」
「んっ――はぁ、トラぁ」

襞を広げるようにして、二本の指で円を描く。ぶちゅっという液体が気泡を崩す音がして三本目が挿入された。
三本目を第一関節まで捩じ込むと、出し入れを開始した。
俺の耳には可愛いあの子の喘ぎ声と、淫らにさせている原因である粘膜の音が鼓膜に届き、随分、楽しめる見世物である。

「ぁっとら、もうっちょうだぃ、僕のま○こ、広くなったからぁ」

臨界点を突破したのか、帝は指を動かしながら声をあげる。勃起したペニスは涎を卑しく垂れ流し俺を誘惑する。
そんな誘われ方をしたら、傍観者を決め込むのは身体にわりぃ。
俺は黒い椅子から立ち上がり、軋むベッドの上にきて、帝の尻たぶを掴んだ。アナルに刺さった指を引き抜き、変わりに自分の聳え立った肉棒を帝の孔にぶっこんだ。

「うっあぁひゃぁ、ふぁぁぁぁん、とらぁぁ」
「帝! スゲェいいぜェ! お前のなかぁ!」
「ひっひゃぁぁぁっほ、ほんとっ」
「アア」

与えられた快楽に帝は酔った。白く飛び散る残光がこの子の中では起こっているに違いない。
強く腰を揺らすたびに、過ぎた快楽に言葉を出せないのか、ぱくぱくと開いた口腔。
顔を強引にこちらへ向ければ、白い歯の奥に引き攣る赤い舌が見え隠れする。我慢できずキスしてやった。
以前は、薄い粘膜越しに締め付けてくるものだったが、今の俺たちを遮るものはなにもない。
俺を魅了する締め付けを教えてくれる帝の内壁は、楔に馴染み、とても心地よい。
帝とセックスしているときが俺は一番、幸福というものを身体で貪っている気分になる。


「ひっ ぁっとらぁぁ!」

奥まで打ち込んだあと、早々と腰を引く。
ずるずると絡みつく粘膜を引きづりながら、また元の深さまで埋め戻す。嬌声を発し、白濁をよれよれのシーツの上へまき散らす、可愛い子の声を聞きながら俺は達した。

その日の夜は、卒論の続きなど書けなかったのはいうまでもねぇ話だ。











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