I like, but not love | ナノ

「食べたー!おなかいっぱいですよ、ボンゴレ!」
「だから、ボンゴレはやめろって!」
「あーすみません、綱吉さん」
「沢田でいいんだけど…」
「えーでも綱吉さんの方が言いやすいですし」


それにつなよしっていう言葉の響きが素敵です、なんて言われてしまえばなにも言えなくなってしまう。綱吉さん、だってさ。だれも俺の事をそう呼ばないからなんだか不思議な感じだ。親しい呼び名だけど、そこには確かに境界線がある。


「じゃあ行きましょう!あと少しですよ」
「…また飛ぶのか?」
「いいえ、今度は歩きです。さすがにここまで来ると敵がいるかもしれないので」
「へえ、そんな事まで考えてるのか」
「腐ってもマフィアです!」


えへへ、と笑う彼女を見て、とてもじゃなけどこれから俺を殺す相手には見えなかった。からんからん、と鳴る店のドアを名残惜しく見ると、彼女は歩き始めた。普通の、女の子だ。さて、どうしよう。さすがに殺されるのは困る。


「綱吉さんって、21歳でボスなんですよね?」
「ああ、うんそうだけど」
「そうですかー…うん、尊敬しますね!」
「いや、マフィアのボスを尊敬しても…」
「いいえ、すごいですよ、21歳で命に関わる仕事のトップにいるんですから」


なんでこう、女っていうのは褒めるような言い方で俺を褒めるのか。マフィアなんてこの世界にあっちゃならないんだ。でも、ボンゴレの力を利用しないとできない事もあって、なんだかものすごく虚しい。


「俺の話はいいよ」
「しっ」
「え」
「いますね、そこの店の裏に。…走りますよ」


だれが、とかなにが、とかは聞かない。多分、相手のファミリーなんだろう。わざわざお出迎えだなんて気が利く。ボスの顔が見たいものだ。3、2、1、と彼女がカウントダウンをして零になると走り始めた。


「このまままっすぐです!」
「っ、もうばれているんだったら飛んだ方が速い!」
「…そうですね!飛びましょう!」「じゃあ行くぞ」


なんでまたわたしは抱えられてるんですかー!と彼女の声が聞こえた。舌、噛むぞと言いたかったけど目の前には無数の白い騎士たち。見た事がない服を着ている。あたりまえだけどお迎えではないようだ。あたりを見回せば無数の死ぬ気の炎が見える。腕のなかにいる女が怒鳴った。白い服を着るやつらの後ろにはひとりだけ、黒い服を着ている奴がいる。奴が、黒幕か。


「なっ、なんですか!?話が違います!」
「あれー?ボク、そんな事言ったけ?」
「ボンゴレを連れてくればボスは返して頂けると…!」
「ああ、あの人?ごめんねえ?殺しちゃった」
「なっ、!」


俺の腕から抜け出すと彼女はその男に向かって飛んで行く。その姿は一緒にいて、初めて見た表情だった。…泣いていた。悲しみからくるのか、それとも憎しみからくるのか。見てる俺にはわからない。頭に血がのぼっているのか、彼女は黒い奴をめがけて飛んで行く。


「おい、!」
「ボスを、返せぇええ!」
「だーからァ、殺しちゃったって言ったじゃん」
「じゃあなぜボンゴレを!」
「え?決まってるじゃん、殺すためさ」
「なにを、言ってるんですか!」
「ああ、だいじょーぶだよ?君も殺してあげるから」


そういうと目の前が真っ暗。2人が話してる間に俺には無数の敵が襲いかかる。倒しても倒しても、まるで無限地獄の様だ。何人、いるのか、まったくわからない。遠くの方で女の声が聞こえる。


「あれぇー?やっぱりボンゴレはすごいね、もう倒しちゃったの?」
「そいつを、殺すつもりか」
「んー、だって利用しただけだもん、殺すよ?」
「おまえ、名前は」
「えー、そういうときは自分の名前から言うんでしょ?」
「…ボンゴレファミリー十代目の沢田綱吉」


うんうん、知ってるよーお、と言いながらけらけらと笑う黒。服は真っ黒なのに肌は白く、髪の毛も銀色。見た事のない顔だ。このごろ勢力をつけはじめたというのは本当なのだろう。


「ボクは白蘭」
「…っ、ボンゴレは黙っててください!」
「うわー、強気だねえ…うん嫌いじゃないよ」
「あんたなんかに言われても嬉しくないです!」
「手厳しいなァ」


奴が、笑った。




6.I can't breath well






まさかの白蘭^^私が一番驚いている
090804 星羅