I like, but not love | ナノ

グラスに入った赤ワインは揺れるたびに光を反射してキラキラと輝く。それを持つのはほかでもない自分なのだけれど、不思議とそういう感覚も忘れるくらい奇麗だ。なのに、なぜこんなことに。


「で、お前だれ」
「通りすがりの殺し屋です!」


俺は顔が強ばるのを、自分でも分かった。女は赤いドレスをひらひらとなびかせ、真っ直ぐにしたら腰までとどきそうなゆるく巻いてある黒髪もゆらゆらと揺らす。日本人特有の黒髪だ。いままでに脱色もしたことがないのだろう。深い、深い黒だ。


「あなたを殺しにきました!」


奇麗に化粧して、どこか気品のある令嬢にも見えるのに、グロスが塗ってある唇から出てくる言葉は全てのイメージを崩れさせた。さっきまではあんなに奇麗だった黒髪はただの黒髪になってしまった。ああ、こいつもそうか。


「んで、ここに来るという情報をキャッチしたので来てみました!」
「それはそれは、ごくろうさまです」


にっこり、と商売用の笑顔を見せると俺は足早に女から距離をとる。すると同じ速さで俺についてくる。殺し屋というのはただの肩書きではないらしい。隙がまったくないことに驚きつつも俺は人混みに紛れた。


「ボンゴレ、あなたが1番長生きする方法、教えて上げましょうか」


それでも、やはりついてくる女は俺の腕を握りながらにこ、と笑った。まわりにはたくさんの人、人、人。しかもその中には当然、マフィアやヒットマンもいるに違いない。第一、獄寺君とか山本とかの姿が見えない。この女が運がいいのか、それともこの女の実力なのかはわからない。


「私から逃げない事です」


黒髪が揺れる。そして、爆音が会場を支配した。そして悲鳴と怒号があちこちで聞こえ、足音が速くなる。入り口は満員電車のようにごったがえしているし、窓から出ようとしている人もいる。女の手は俺の腕を離さない。


「どういうこと、」
「簡単に言えばボディーガードです!」
「…」
「あ、でもあなたは私が殺しますのでご安心を!」


そう言うと彼女はいままでとは違う、不適な笑みを浮かべた。




2. Say the truth!





自分でもなにを書こうか迷ってます
結末しか考えてなかった…
090626 星羅