痛い、いたい、イタイ。…痛くない。確かに直撃したはずの攻撃は痛くなかった。なにがおこったのかわからなくてとりあえず敵を見ると、白蘭は少しびっくりしたような顔をしていた。なんだ? 「ふーん、随分と綱吉くんのこと好きなんだね」 「は?」 「君のちょっと下、見てみなよ」 「…っ!」 下、と言われて素直に下を見るとそこには黒い髪の毛が見えた。ここんとこ数時間、一緒にいた奴の頭だ。いや、こいつはさっきまであっちにいたはずだ、と思いつつも実際に俺の前にいるのだから、すぐに頭は回転する。やつは、庇ったのか。声が聞こえない。温かい。流れてる。動かない。息を、していない? 「おい、おい!起きろ、起きろよ!…っ、俺を、殺すんじゃねぇのかよ!」 「あー、ボクねあまりラブシーンは好きじゃないんだよね」 「…っ、おまえ」 「…うーん、ひとりは消せたし、今日は帰ろうかな…マシマロが食べたい」 「おまえ!」 「ボンゴレ、またどこかで」 白蘭は帰った、というより消えた。それより女だ。息はまだあるらしく、胸が上下している。声をかけても反応はない。とりあえず横にしなくては、と下へ降りる。道路にコートをしいて彼女を寝かせる。頬を何度か軽く叩くと、小さな声で、うっと漏らした。生きてる。 「おい、目を覚ませ!」 「っ、はっ、う…ぼ、んごれ」 「喋るな!」 「も、っだめでしょ、う…わたし、は」 「…、ボンゴレまで運ぶ!」 「いい、んでっす…っはぁ、はっ」 どくどく、と流れている赤い、それ。もうどこから出てきてるのかさえもわからない。どうすればいい、どうする。このままじゃ、本当に、!考えたくない。昨日会ったばかりの人が死ぬだなんてやめてほしい。 「っ、つなよ、しさんを…殺せなかった、なっあ…」 「…やめろよ、こんなときに!」 「ん、っあ…はっ、わったし、綱吉さ、んのこと案外、すきで、すよっ、…」 「なに言って、」 「つ、なよし…さんは?」 「…好きだけど」 「…わかってない、なぁっ、そこっは、あいしてるって言うとこで、すよ…」 「愛してないからしょうがないだろ」 「ひっど、」 そんなこと言ってるけど、お前、泣いてるよ。言おうと思ったけどやめた。なんだか、俺も世界が歪んできた。なんだか、話しにくい。息がうまく出来ない。俺が死ぬ訳じゃないのに頭の中はぐるぐると昨日からの記憶がよみがえってくる。 「死ぬな、…っ、死ぬな!」 「さい、ごくらいっ…奇麗なすがたで、死にたか、た」 「なにを、」 「わた、し…あなたのっこと、すき、ですよ」 どうでもいいことを言い残して、奴は目を閉じた。 8.It was a short tale 090804 星羅 |