なにもする事がないから暇だ。それも奈美がいないからだということはちゃんと分かっている。ふと校庭を見ると、群れている奴等を見つけた。 「で、どうする?奈美」 「なんでもいいよ」 「十代目はどこがいいですか?」 「俺んちなんかどうだ?ツナ」 沢田綱吉、獄寺隼人、山本武、と奈美が並んで歩いている。なんで、そんな奴等に君の笑顔を見せてるの。その笑顔も声も仕草も全ては僕の────…そこまで考えて我に返る。今、僕はなにを考えていた? 「…弱い証拠だよね」 群れてる奴等も、この意味の分からない感情も。全部、僕が壊してなかったものにすればいい。なくなってしまえばいい。始めから、なにもなかったと、そういうことにすればいい。 「お?雲雀だ!おーい!雲雀!」 山本武が窓の外を見る僕に気付いたみたいで、僕にわざわざ手を振ってきた。瞬間、沢田の顔は青くなり、獄寺はダイナマイトを出す。(後始末は誰がやると思っているんだあの男)奈美と言えばこっちを今にも泣きそうな顔で見ている。 「…雲雀さん」 奈美の口がゆっくりと動いた。とても遠いから聞こえるはずないのに、その口から出た言葉ははっきりと僕の耳に聞こえてような感じがした。 「奈美、」 名前を呼ぶと、今まで暗かった僕の視界がみるみるうちに光を受け入れて、明るくなっていくような心地いい感じになってく。目を細めて、窓の外の奈美の姿を見る。 「…奈美」 「つ、綱吉行こ!」 僕がもう一度名前を呼ぶと奈美は沢田の制服をひっぱって校門の方へと急ぎ足で歩く。 「……奈美、」 沢田と一緒に学校から出る奈美に呟いた。僕はこんなにも君を、!なのに、なんで君はわかってくれないんだ。その心の余白を埋める様に、僕は彼女の名前をしきりに呼ぶ。 08.このいとしさをこめて (奈美、奈美、奈美、奈美、奈美、奈美) (君を見ると悲しくて、胸が締め付けられる) 080228 星羅 090308 書き直し |