「竜崎、死ぬのがこわいよ」
そう呟いた次の日から竜崎はいろんな死後の世界について話してくれるようになった。天国、輪廻転生、極楽浄土、宗教も文化も全ての壁を越えて、本当にたくさんの話をしてくれた。でもね竜崎、違うの。違うんだよ。死んだら終わりなんだよ。死んだら全部なくなっちゃうの。思考も記憶も感情も、全部消えちゃうの。だからね、竜崎。貴方の役に立ちたくてたくさん働いた思考も、貴方と過ごした記憶も、貴方をただ愛したこの愛すら全て消えてしまうのよ。そしてね、竜崎。いつか貴方の中からわたしへの愛が消えてしまう日が来るのが一番こわいの。死後の世界なんていらないわ。ただあなたに、死なないでくださいって、縋って欲しかっただけなのよ


あなたとずうっと


「竜崎、死ぬのがこわいよ」
そう小さく呟いた彼女に私は何も言うことが出来ませんでした。何と声を掛けたらよいかわからないなど、私には初めての経験でした。その日からたくさんの死後の世界を研究しました。あらゆる宗教、あらゆる歴史、あらゆる神話、あらゆる迷信、あらゆる文献。どれほど知識を増やしても答えにたどり着くことはできず、お伽話を毎日聞かせているようなものでした。彼女にも私にも信仰がないのでそれらは何の希望にもなりはしなかったのです。本当はずっと、わかっていました。死んだら全てが終わってしまうことを。確証はありません。ただの私の個人的推察です。それでも死んでなお報いを受け続けるのはあまりに惨すぎる。せめて死を持って解放としたい。しかし、同時にそれが何よりも辛いのです。彼女の温もりにもう触れることが出来なくなることも、彼女の愛に包まれて眠りにつくことが出来なくなることも。死なないでください、そう縋れたらどれほどよかっただろう。しかしそれは彼女にとって何よりも残酷な言葉になるでしょう。彼女を傷つけるくらいならば、いっそ私のこの懇願など知らないままでいい。私は今日もお伽話を彼女に聞かせます。生温い涙が頬を伝うのに気づかないフリをして。


生きるすべをおしえて


heso
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