髪を伸ばすんだと言ってアイツは笑った。どうしても着たいと言ったドレスには長い方が似合うからって。そうして俺がやった指輪を嬉しそうに抱き締めて、伸びるまでもう少し待っててねって幸せそうに笑ったんだ。

黒い喪服に真っ白な百合の花。棺に横たわるウエディングドレス姿の彼女。すっかり伸びた髪は純白のドレスにとてもよく似合っていて。呼べばはにかみながら今にも目を開けそうなのに。触れた肌はどこまでも冷たくて、白くて。

「…ばーか、いつまで待たせる気だよ」

降り止まない雨はどこまでも冷たくて、灰色の空にのぼっていくアイツの白い煙が消えるのを、いつまでもずっと、眺めていた。



6月に死んだきみのはなし



title.虫食い
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