「げーんー」
「なんだ」
「あーつーいー」
「心頭滅却していろ」
「むーりー」

大体なんだっていうんだ。5月の下旬がこんなに暑いなんて聞いていない。去年はこんな暑くなかったはずだ。まだ梅雨も控えてるから夏服や扇風機を押し入れから出すのはちょっと憚られるというのにここ最近の異様な暑さはなんなんだ全くけしからん。弦の部屋の弦のベッドの上に寝転んでスイカバーをぺろぺろ。スイカバーって正義だよね。ガリガリくんもすきだけどわたしはスイカバー派だよ。ベッドの上でものを食べるなと怒られたけど生返事しかしないわたしに弦は諦めて机に向かってなんかしてる。課題なんてあったっけ、覚えてないや。大体こんなに暑いのに汗ひとつかいてない弦って一体何者な訳。もしかして本当に心頭滅却極めてんの?あれって坊主にしなくても極められるものだっけ?あれ?部活中はあんなに暑苦しい顔で絞れるくらい汗かいてるくせにさ。なんだよ涼しい顔は柳くんの十八番じゃないか弦の著作権侵害やろー。なんかムカつくからくっついてやる。半分になったスイカバーをくわえながら机に向かっている弦の背中にべったりくっついてやった。

「あっつ!弦あっつ!」
「…やかましい」

くっついてみたらわたし以上に熱い体温にびっくりした。確かに万年熱血な弦だけどこの熱さは平熱にしちゃいけないレベルなんじゃないの?よく知らないけど。背伸びをしたままくっついているわたしを無理矢理払うでもなく作業を再開する弦。なんだ、アルバム整理してたんだ。

「うわっ懐かしー弦がわたしよりちっちゃーい」
「すぐに抜かしたからな」
「本当だよねー、生意気にもわたしになんの許可もなく勝手に追い抜くんだから馬鹿弦!」

本当に昔はこーんなちっちゃかったのにさーと呟くわたしに何年前の話だと弦の突っ込みが入る。くふふと堪えきれなかった笑いを溢せば、弦も頬を弛める。スイカバーの最後の一口を弦の口に突っ込んで微笑む。

「誕生日おめでと、弦。悪いんだけど誕生日プレゼントはわたしでいい?」
「もう何回もらってるか数えてみるか?」
「嫌なの?」
「たわけ」

そんな風にじゃれ合って、毎年恒例二家族合同のお誕生日会までしあわせを分け合う。来年も再来年もその先もずっとずっと、わたしのこともらってね。




たどりつく愛しさ/bamsen
120521 はぴばげんいちろ!
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