空は青く青く晴れ渡っていて、厳しい寒さのせいで空気がとても澄んでいて冷たい。ぽろりぽろりと目の縁から零れ落ちた涙は頬を伝って顎先から自分の手の甲へと吸い込まれていく。ずっと傍にいた。一番近くにいた。彼の御目付け役よりもずっとずっと前から。あの子が知らない、あいつが右目に眼帯をしてる理由だとか、好き嫌いが意外と激しかったりすることだとか、実はお化け屋敷が苦手なこととか、抱き枕がないと眠れないこととか。全部全部知ってるのに。私しか知らないことたくさん。他のひとには言えないかっこ悪いところとか癖とか全部。茶色味がかった黒髪も、鋭い瞳の色も、触れた体温の心地よさも。私だけが知ってる政宗の右隣りの温かさ。全部、私の宝物だったのに。するりとこの手を抜けていった彼の笑顔はどこまでも幸せそうで、その隣りに私がいないことがどうしようもなく悲しかった。


あの娘と彼のしらないところで泣いたわたしの心臓と世界を密葬


110105 title.bamsen