「おい、いるか」
からりと扉が開き、低い声が家の中に響く。はいはいと返事をしながら玄関に向かえば、開いた扉の向こうに、首にタオルを巻いた小十郎さんが立っていた。
「いつもすいません」
「いや、どうせウチだけじゃ食い切れねんだ」
大きな籠いっぱいに夏野菜を詰め込んで、それを玄関先におろしてくれる。いつものことながら本当に見事な出来だ。しゃがみこんで色鮮やかな野菜たちを手に取れば、居間から風鈴の音が響いた。
「…お帰りに、なってらっしゃるのか」
「…はい」
小十郎さんが遠くを見つめながらそう小さく呟いた。ちりん、もう一度風鈴が鳴く。
何もいわずに小十郎さんはその場で深く一礼をすると、身を翻して道の向こうに消えていった。その背中がいつもより小さく見えた。
「…元気そうだな」
廊下の柱に背中を預けて立っていた政宗がぽつりと呟く。
「…うん、小十郎さんも成実くんも、みんな元気だよ」
答える声が酷く震えていて。ぐすりと、政宗に気付かれないように小さく鼻を啜った。
朝日にいくどもないた