ちりんと、涼しげな声で風鈴が鳴く。生ぬるい風が頬をなぞった。じわじわとうるさい蝉の大合唱が裏山から聞こえて来る。すっかり真夏の陽射しに慣れてしまった肌は小麦色に焼けていた。タンクトップ一枚で縁側に腰掛けしゃくりしゃくりとよく冷えたスイカを頬張る。ほのかな甘さがたまらなく美味しい。ふわりとまた生ぬるい風が頬を霞め、ちりんと風鈴が鳴く。懐かしい香りがした。

「おかえり、政宗」
「おう、ただいま」

いつの間にか隣りで同じように縁側に腰掛け庭先のひまわりを見つめる政宗に声をかける。相変わらずの低い、政宗の声だった。


あなたのいないこの世界


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