いやさ、正直体育祭とか必要なくね?うん。だって走んなくたって生きてけるもん。うん。体力なくても生きてけるもん。いいじゃん別に。

我が校体育祭名物。男女混合借り人競争。
わたしは己が引いた札を握り潰して絶賛現実逃避によりその場に立ち尽くしていた。
借り人を示す札に憎らしい程丁寧な字で書かれた文字は『彼氏』の2文字。クラスのテントの方からは何立ち止まってんだばか!いいから早く走れ!何引いたんだ早く言え!との叫び声があがっている。人の気も知らないで畜生マジむかつく。大体なんだこの札。彼氏がいない女子に対しての嫌がらせとしか思えない。

選択肢はふたつ。ひとつは正直に彼氏がいないと申し出、全校生徒の前で恥を晒すこと。
もうひとつは、ポケットの中の携帯の待ち受けである某シルバーなソウルコミックの死んだ魚のような目の男を審査員である先生方に突き出し「この人がわたしの彼氏ですけどなにか?」と言うこと。ヲタクでなにが悪い。2次元の方がイイ男なのはもはや常識だろ?もうさ、別に隠れヲタクな訳でもないしいいよね。だっていい加減わたしも疲れたよこの野郎。助けろパトラッシュ。

はあ、とひとつ大きく溜息を吐いてからゴールの方へ走り出す。見ればみんなまだ借り人を見つけられてないらしく右往左往している。ラッキー。ていうかさっきの札置いあった机で彼の有名な猿飛佐助氏がわたし同様札を握り締めて立ち尽くしてんだけど。彼もなんか理不尽な札を引いたのか。仲間だ。変な親近感が湧いて心の中でこっそり応援しといた。
さーてゴールは目前。携帯の準備せなーなんて短パンのポケットに手を突っ込んだ瞬間、その腕を誰かにぐいっと引っ張られ、そのままわたしの腕を引いた人物が白いゴールテープを切った。ちなみにわたしも引かれるがまま一緒にテープ切っちゃったんだけど、え、なんぞ?どゆことどゆこと、とわたしの腕を掴む輩を見上げれば、驚いたことにそれはさっきわたしの後方で立ち尽くしていたあの猿飛佐助だった。
状況が把握できないままわたしは猿飛に手を引かれて審査員の先生方の前に連れ出される。ざわざわとグラウンドが騒然とする。え、ちょ、なんでこんな注目浴びてんの無理無理無理無理。あまりの視線の多さに顔を青くするわたしにお構いなしに、猿飛は右手でもった札を審査員の先生方に大きく掲げた。
そして大きく息を吸い込むと、ひとこと。


「お、俺様の『好きなひと』です!」



…おおっとこれ何てリア充フラグ?





ナユタさんとついったで滾った結果
110916