瞳に映るものは唯一貴方だけで漂う波は貴方の腕できっとたしかにわたしは貴方に包まれていたの。ごぷりと吐き出した泡がきらきらと光を散乱させて空へと還っていく。ねえわたし幸せよ、とても幸せよ。どうか彼に伝えてね。全身を包む海水はまるで羊水のようにわたしの肺を満たし開いた瞳に映る青と蒼と碧。ああ、幸せだ。深く昏く沈んでいく。最後の酸素が口から滑り抜け、重い水が肺に沈殿する。わたし、知らなかったの。世界がこんなにも青くてきらきら輝いて美しいことを。ずっと貴方の隣にいたのに、気付かなかったの。でも今ならわかるわ。

(きれいね、元親、きれいね)

彼が最期に刻んだこの美しい世界を、わたしも最期に刻み込むわ。わたしよりずっと背が高くて、みえる風景も全然違ったあの頃だけど。今だけは、貴方とおなじ、はじまりを、鼓動を、息吹を、この世界で息をしたのよ。


水母の吐息は泡のように


title.へそ