「ぬーいーぬーいー」
「誰がぬいぬいだっつの」
くるくるとウェーブなのかパーマなのか知らないけどとりあえずくるくるしてる長い髪のポニテの後ろ姿を見つけ、彼のあだ名(命名わたし)を呼びながらぽてぽてと駆け寄る。眉間に皺を寄せながらくるりと彼が振り返れば、長い髪がふわりと揺れる。光の加減で、黒にも深みがかった青にも見えるその髪がキレイで、男にしておくのが勿体ないなって思った。
「ぬいぬいが女の子だったらよかったのに」
「テメェ…喧嘩売ってやがんのか?」
口元をひくひくと引きつらせながらぬいぬいはそのおっきな手でわたしの頭をぐわしと掴み、お前一体握力いくつあんだよってくらい見事なまでのアイアンクローをかます。いだだだだだ。
「ごめんなさい痛いですごめんなさい調子乗りましたごめんなさいごめんなさい三つ編みさせてくださあでででででッ!」
羅列するわたしの謝罪を聞いて段々緩んでいた手というか指の力が、三つ編みという単語だけで一気に限界値を突破する。あ、頭ぱーんする…。わたしの体からがくっと力が抜けたのを確認してから、驚くくらいあっさりぱっと手を放すぬいぬい。若干涙目になりながら頭を抱えて睨み付ければ、ニヤリと至極楽しそうな笑みを浮かべていやがった。くそう…イジメっ子め!
「…おら、一緒に帰んだろ?」
鞄を肩に担いで、また不敵で意地悪な笑みを浮かべるぬいぬい。けどその声音がわたし以外のひとには見せない優しさに溢れているから。
「…うん」
きっと赤く染まっているであろう頬を隠すようにこくりと頷いた。
ティラミスが食べたい。
パニエが欲しい。
あなたにすきと言われたい。
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