わたしの彼氏を紹介します。
名前は仁王雅治くん。歳は17歳。身長は179センチ、体重は65キロ。立海大付属高校に通う、高校2年生。部活はテニス部で全国区の凄腕プレイヤーです。色白でスっと通った目鼻立ち。口元のほくろが彼のセクシーさをさらに際立たせている、所謂イケメンです。そんな彼はモテます。すごくモテます。告白も頻繁にされます。彼の傍にいて初めて本物のラブレターを目にしました。街を歩けば逆ナンされ、お店に入れば女性店員さんからメアドの書いてあるレシートを渡されます。わたしが彼の彼女になってからもそれは変わりません。ただでさえ不安なのに、ふたりきりになっても彼はツンツンしてばかり。付き合って1ヶ月になるけど、いまだに好きだと言ってもらったことはありません。彼は本当にわたしのことが好きなんでしょうか。

「におくん、あのね…」
「今しゃべりとーない」

休み時間、隣りに座るにおくんに話掛ければ、退屈そうにそう返されてしまいます。「そ、そっか…」押し黙っちゃうわたしは意気地ナシ。だって嫌われたくないんだもん。におくんの周りはいつもオンナノコでいっぱい。わたしが彼女なのも関係ナシに、におくんはよくオンナノコと楽しそうにお話してる。今だってそう。わたしとのおしゃべりは断ったくせに前の席のオンナノコとにこにこ笑顔でおしゃべりして。わたしのことなんてどうでもいいみたい。でもね、そんな態度とってるくせに告白はにおくんからだったんだよ。あのときは嬉しくて嬉しくて、でもわたしなんかがにおくんの隣りに立っていいのかわかんなくて。でも、におくんがわたしじゃなきゃダメなんだって言ってくれて。そうしてお付き合いが始まったの。わたしはにおくんのこと、ちゃんと好きなのに、におくんは違ったのかな。もう飽きちゃったのかな。嫌々で、付き合ってるのかな。そう思うと苦しくて悲しくて。スカートの裾をぎゅっと握って、目尻に浮かんだ涙をぐいと拭いました。チャイムが鳴って次の授業の先生がだるそうに教室に入ってきます。適当に挨拶を済ませて机の横にかかっている鞄から下敷きを取り出そうと伸ばした左手にわたしより少し高い体温が触れました。(え、)伸びてきた腕を辿ればにおくんが前を向いたままそっとわたしの左手の小指と自分の右手の人差し指を絡めました。わたしたちの席は窓際の一番後とその隣りで。みんなからは見えない角度でにおくんが手をつないで来たのです。じわじわと赤く熟れる頬と、上がる体温。まだ「好き」とは言ってもらえてないけれど、ようやくデレてくれた彼に、わたしの心臓は爆発してしまいそうでした。



110920 Puppy love/Perfume
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